11月8日付けで,司法試験予備試験の最終結果が発表されています。今年の合格者は219名とのこと。
合格された皆さんには,おめでとうございますと言いたいところですが,予備試験は旧司法試験とも遜色ないと思われる,三段階で行われる大容量の難関試験であるにもかかわらず,予備試験に合格しただけでは何の資格も付与されず,来年行われる司法試験の本試験に合格することで,ようやく「法曹の卵」と認められることになります。そういうわけなので,黒猫からは敢えて祝辞の言葉は述べません。来年の本試験に向けて頑張って下さい。
挨拶はこのくらいにして,予備試験に関する主なデータを前年比で整理してみましょう。数字は左側が昨年(平成23年)のもの,右側が今年(平成24年)のものです。
<基礎データ>
出願者数 8,971人 → 9,118人
受験者数 6,477人 → 7,183人
合格者数 116人 → 219人
合格者数については,少なすぎるとの批判を受けて素直に合格者数を増やすか,それとも法科大学院側に配慮して申し訳程度に増やすかのどちらかだと思っていたのですが,今回は2倍近くに増えているので,素直に増やしていると評価してよいでしょう。
<合格者数の内訳>
19歳以下 0人 → 1人
20~24歳 40人 → 86人
25~29歳 8人 → 39人
30~34歳 33人 → 30人
35~39歳 16人 → 26人
40~44歳 7人 → 15人
45~49歳 7人 → 12人
50~54歳 1人 → 6人
55~59歳 4人 → 1人
60~64歳 0人 → 2人
65~69歳 0人 → 1人
<合格者の職種>
大学生 40人 → 69人
無職 32人 → 41人
公務員 13人 → 18人
会社員 12人 → 15人
法科大学院生 8人 → 61人
法律事務所事務員 4人 → 4人
自営業 3人 → 4人
塾教師 2人 → 0人
その他 1人 → 6人
大学生は相変わらず多いですが,今回の試験では法科大学院生の合格者が激増しており,年齢層で見ても,一般的な法科大学院生の年齢層と思われる25~29歳が急増しています。
法科大学院生は,予備試験を受験しなくても法科大学院を卒業すれば司法試験を受験できるため,本来予備試験を受験する意味はないはずなのですが,司法試験の受験対策としては,在学中から予備試験を受験して実力試しをするのが有効であると言われており,上記の数字は法科大学院生の勉強法として,在学中から予備試験を受験するというパターンが定着へと向かっていることを示しています。また,法科大学院の授業がいかに学生から信頼されていないか,ということを示す証拠でもありますね。
問題はここからです。116人いた昨年の合格者のうち,今年の司法試験(本試験)に出願したのは95人,受験したのは85人。
司法試験の短答式試験では,85人の受験者のうち途中退席者1人を除くほぼ全員が合格,最終合格者も58人,合格率は法科大学院の最上位校である一橋大学をも大きく凌ぐという結果となっていますが,今年の予備試験合格者に関しては,やはり数が増えている分,司法試験の合格率も下がると考えざるを得ないでしょう。
仮に今年の予備試験合格者が,来年の本試験で50%くらいしか合格できなかった場合,合格率が一橋大学と概ね同程度ということになりますから,合格者数をさらに引き上げるべきか,それとも現状維持で良いかは意見が分かれてくるでしょう。
そうなると,最悪の場合予備試験の合格者数が今年と同程度で頭打ちになり,人気が上がらないため受験者数も伸び悩む,しかもその内訳は現役の法科大学院生が多く,法曹志望者の裾野を広げる役割はとても期待できない,といった結果にもなりかねません。
法科大学院の志望者は激減しており,いまや法科大学院の受験に必要な適性試験の受験者数より予備試験の受験者数が多いという状態が発生している上に,その予備試験受験者数すら1万人に満たず,旧試験時代には少ないときでも年間3万人くらいの受験者がいたことを考えれば,法曹志望者の激減が深刻な問題となっていることは明らかでしょう。
志望者数の減少に伴う質の低下を懸念する法曹関係者にとって,一縷の希望となっているのがこの予備試験ですが,その予備試験が合格者数200人台止まりということになってしまっては,将来的には弁護士だけでなく裁判官や検察官も,大幅な質の低下は避けられないことになります。
法科大学院の修了を司法試験の受験資格とする現行の馬鹿げた制度を早急に廃止できればそれに越したことはありませんが,仮にそれ自体の廃止が実現しない場合にも,試験の簡素化など予備試験の人気を高める施策を早急に講じなければ,将来的には法曹界の人材が枯渇してしまうことになりかねません。
しかし,今の大手マスコミは上記のような危機的状況を伝えず,むしろ逆の視点から予備試験の結果を報道しています。
<参 考>
存在の意義揺らぐ法科大学院(11月9日付けNHKNEWSWEB)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121109/k10013362881000.html
NHKの上記記事は,悪い伝え方の典型例というべきものですが,同記事では予備試験に大学生や法科大学院生の合格者が多いことを指摘した上で,以下のように報じています。
『このまま、大学生や法科大学院の学生が司法試験受験の近道として予備試験を目指す傾向が強まれば、本来のルートである法科大学院の存在意義が揺らぐことになります。
定員割れが続き、来年春に別の法科大学院と統合することになった大宮法科大学院の久保利英明教授は、「法科大学院の理念は間違っておらず、司法試験の内容を見直すなどして、法科大学院の卒業生が合格できる仕組み作りを急ぐべきだ」と話しています。』
その他,読売新聞や朝日新聞も,大学生や法科大学院生の合格者数が多い実態を現行制度の趣旨に反するなどと批判的に報じており,またネット上では直接配信されているかどうか確認できなかったものの,朝日新聞では「予備試験の受験に大学卒業の条件や年齢制限を設けるべきだ」という法科大学院協会事務局長のコメントを記事に載せているそうです。
予備試験の受験資格制限は司法試験法の改正が必要であるところ,法科大学院を守るために受験制限を設けるというのは憲法上の問題があるほか,自民党・民主党を問わず法科大学院に対し批判的な見方をする人が増えた今の国会議員がそのような法律案を簡単に通すとは思えないので,実際にはまず実現しないと思われますが,大手マスコミがこぞって上記のような報道をすることで,法科大学院を修了せずに法曹を目指すことは悪いことだ,将来規制されるかもしれないといった風潮を起こそうとすることで,特に予備試験の受験を考えている大学生の多くが受験をためらってしまうことが予想されます。
現にいる法曹志望者の多くも,できれば法科大学院には行きたくないと考えているので,予備試験制度に不安があるとなれば,彼らはもはや法科大学院に進学するのではなく,法曹への道をあきらめて他の進路に行ってしまう可能性が高いでしょう。法科大学院協会やこれに同調するマスコミは,もはや破綻の明らかな法科大学院制度を守ろうとするあまり,ただでさえ減少の一途を辿っている法曹志望者をさらに減少させようとしているのです。
弁護士,裁判官,検察官といった法曹は,言うまでもなく三権の一翼を担う重要な人材であり,それを枯渇させようとする法科大学院関係者は,もはや「国賊」と言っても過言ではありません。これに荷担する大手マスコミも同様です。
原発事故などをきっかけに,今どきの日本人は「マスコミは嘘をつく」ことを誰もが学んでおり,小学生でさえマスコミの報道は1割くらいが嘘だと認識しているというのが不幸中の幸いですが,これから予備試験を受験しようとする人は,くれぐれもマスコミの嘘に惑わされないようにして欲しいですね。
合格された皆さんには,おめでとうございますと言いたいところですが,予備試験は旧司法試験とも遜色ないと思われる,三段階で行われる大容量の難関試験であるにもかかわらず,予備試験に合格しただけでは何の資格も付与されず,来年行われる司法試験の本試験に合格することで,ようやく「法曹の卵」と認められることになります。そういうわけなので,黒猫からは敢えて祝辞の言葉は述べません。来年の本試験に向けて頑張って下さい。
挨拶はこのくらいにして,予備試験に関する主なデータを前年比で整理してみましょう。数字は左側が昨年(平成23年)のもの,右側が今年(平成24年)のものです。
<基礎データ>
出願者数 8,971人 → 9,118人
受験者数 6,477人 → 7,183人
合格者数 116人 → 219人
合格者数については,少なすぎるとの批判を受けて素直に合格者数を増やすか,それとも法科大学院側に配慮して申し訳程度に増やすかのどちらかだと思っていたのですが,今回は2倍近くに増えているので,素直に増やしていると評価してよいでしょう。
<合格者数の内訳>
19歳以下 0人 → 1人
20~24歳 40人 → 86人
25~29歳 8人 → 39人
30~34歳 33人 → 30人
35~39歳 16人 → 26人
40~44歳 7人 → 15人
45~49歳 7人 → 12人
50~54歳 1人 → 6人
55~59歳 4人 → 1人
60~64歳 0人 → 2人
65~69歳 0人 → 1人
<合格者の職種>
大学生 40人 → 69人
無職 32人 → 41人
公務員 13人 → 18人
会社員 12人 → 15人
法科大学院生 8人 → 61人
法律事務所事務員 4人 → 4人
自営業 3人 → 4人
塾教師 2人 → 0人
その他 1人 → 6人
大学生は相変わらず多いですが,今回の試験では法科大学院生の合格者が激増しており,年齢層で見ても,一般的な法科大学院生の年齢層と思われる25~29歳が急増しています。
法科大学院生は,予備試験を受験しなくても法科大学院を卒業すれば司法試験を受験できるため,本来予備試験を受験する意味はないはずなのですが,司法試験の受験対策としては,在学中から予備試験を受験して実力試しをするのが有効であると言われており,上記の数字は法科大学院生の勉強法として,在学中から予備試験を受験するというパターンが定着へと向かっていることを示しています。また,法科大学院の授業がいかに学生から信頼されていないか,ということを示す証拠でもありますね。
問題はここからです。116人いた昨年の合格者のうち,今年の司法試験(本試験)に出願したのは95人,受験したのは85人。
司法試験の短答式試験では,85人の受験者のうち途中退席者1人を除くほぼ全員が合格,最終合格者も58人,合格率は法科大学院の最上位校である一橋大学をも大きく凌ぐという結果となっていますが,今年の予備試験合格者に関しては,やはり数が増えている分,司法試験の合格率も下がると考えざるを得ないでしょう。
仮に今年の予備試験合格者が,来年の本試験で50%くらいしか合格できなかった場合,合格率が一橋大学と概ね同程度ということになりますから,合格者数をさらに引き上げるべきか,それとも現状維持で良いかは意見が分かれてくるでしょう。
そうなると,最悪の場合予備試験の合格者数が今年と同程度で頭打ちになり,人気が上がらないため受験者数も伸び悩む,しかもその内訳は現役の法科大学院生が多く,法曹志望者の裾野を広げる役割はとても期待できない,といった結果にもなりかねません。
法科大学院の志望者は激減しており,いまや法科大学院の受験に必要な適性試験の受験者数より予備試験の受験者数が多いという状態が発生している上に,その予備試験受験者数すら1万人に満たず,旧試験時代には少ないときでも年間3万人くらいの受験者がいたことを考えれば,法曹志望者の激減が深刻な問題となっていることは明らかでしょう。
志望者数の減少に伴う質の低下を懸念する法曹関係者にとって,一縷の希望となっているのがこの予備試験ですが,その予備試験が合格者数200人台止まりということになってしまっては,将来的には弁護士だけでなく裁判官や検察官も,大幅な質の低下は避けられないことになります。
法科大学院の修了を司法試験の受験資格とする現行の馬鹿げた制度を早急に廃止できればそれに越したことはありませんが,仮にそれ自体の廃止が実現しない場合にも,試験の簡素化など予備試験の人気を高める施策を早急に講じなければ,将来的には法曹界の人材が枯渇してしまうことになりかねません。
しかし,今の大手マスコミは上記のような危機的状況を伝えず,むしろ逆の視点から予備試験の結果を報道しています。
<参 考>
存在の意義揺らぐ法科大学院(11月9日付けNHKNEWSWEB)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121109/k10013362881000.html
NHKの上記記事は,悪い伝え方の典型例というべきものですが,同記事では予備試験に大学生や法科大学院生の合格者が多いことを指摘した上で,以下のように報じています。
『このまま、大学生や法科大学院の学生が司法試験受験の近道として予備試験を目指す傾向が強まれば、本来のルートである法科大学院の存在意義が揺らぐことになります。
定員割れが続き、来年春に別の法科大学院と統合することになった大宮法科大学院の久保利英明教授は、「法科大学院の理念は間違っておらず、司法試験の内容を見直すなどして、法科大学院の卒業生が合格できる仕組み作りを急ぐべきだ」と話しています。』
その他,読売新聞や朝日新聞も,大学生や法科大学院生の合格者数が多い実態を現行制度の趣旨に反するなどと批判的に報じており,またネット上では直接配信されているかどうか確認できなかったものの,朝日新聞では「予備試験の受験に大学卒業の条件や年齢制限を設けるべきだ」という法科大学院協会事務局長のコメントを記事に載せているそうです。
予備試験の受験資格制限は司法試験法の改正が必要であるところ,法科大学院を守るために受験制限を設けるというのは憲法上の問題があるほか,自民党・民主党を問わず法科大学院に対し批判的な見方をする人が増えた今の国会議員がそのような法律案を簡単に通すとは思えないので,実際にはまず実現しないと思われますが,大手マスコミがこぞって上記のような報道をすることで,法科大学院を修了せずに法曹を目指すことは悪いことだ,将来規制されるかもしれないといった風潮を起こそうとすることで,特に予備試験の受験を考えている大学生の多くが受験をためらってしまうことが予想されます。
現にいる法曹志望者の多くも,できれば法科大学院には行きたくないと考えているので,予備試験制度に不安があるとなれば,彼らはもはや法科大学院に進学するのではなく,法曹への道をあきらめて他の進路に行ってしまう可能性が高いでしょう。法科大学院協会やこれに同調するマスコミは,もはや破綻の明らかな法科大学院制度を守ろうとするあまり,ただでさえ減少の一途を辿っている法曹志望者をさらに減少させようとしているのです。
弁護士,裁判官,検察官といった法曹は,言うまでもなく三権の一翼を担う重要な人材であり,それを枯渇させようとする法科大学院関係者は,もはや「国賊」と言っても過言ではありません。これに荷担する大手マスコミも同様です。
原発事故などをきっかけに,今どきの日本人は「マスコミは嘘をつく」ことを誰もが学んでおり,小学生でさえマスコミの報道は1割くらいが嘘だと認識しているというのが不幸中の幸いですが,これから予備試験を受験しようとする人は,くれぐれもマスコミの嘘に惑わされないようにして欲しいですね。
http://nuclearpowermafia.blogspot.jp/
黒猫さん、理性的で優秀な方だと思いますが、直感的なところで、図を用いていただけるとより分かりやすいようなところがある気がします。
判決文を読んでみましても、これには図はありませんが、裁判は、理性と直観とが混じった判断のような気がします。
私は、優秀な方々が予備試験に合格されるというのはよいことと思います。法科大学院は、それはそっちの方向で、その理念を全うするように、各教員の皆さまに自覚してほしいと思っています。
ただ、そうはいえ、弁護士だからといって、「法解釈適用能力があるか」といいますと、なかなか難しいところもあるような気がします。
法解釈適用は、裁判所の専権事項ということですが、そうはいえ、弁護士の方々は、裁判所での最終判断に向かって自らご主張されるところがあるべきものではないかと思います。
私は、次のWEBページで、Excelファイル上で判決文を纏めたようなものを作成して販売していますが、それを作成する過程で、裁判所では、ステップバイステップの思考を誤魔化されることがほとんどないような気がしています。
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/210172/title/%E9%87%8D%E8%A6%81%E5%88%A4%E4%BE%8B%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%EF%BD%9E%E6%B0%91%E6%B3%95I%E7%B7%8F%E5%89%87%E3%83%BB
判決文に他の判例が引用されていることがありますが、その引用判例をたどっていきますと、そこには、例えば、当該判決文における法解釈に係る理由が記述されていることが確認されます。
国家は、どのような職業であれ、個人の職業選択の自由を制限するようなことはしてはいけませんし、既存の弁護士の方々も、必要以上に上方からのしかかって新規参入を妨げてはなりません。
私は、基本的な方向として、現状、弁護士業務をされている方、並々の試験を課すべきだと思っています。
それで、本当にその職業が好きな方々が、その仕事をし続ければいいんだと思います。
私に対する評価自体があるようですが、あまり根拠があるようには感じません。