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キング・クリムゾンの来日公演 ♪ 2018年

2018-12-28 16:35:17 | 日記
12月9日の日曜日に大阪グランキューブでキング・クリムゾンの最新ライブを観た。私が愛聴している昨年のシカゴ公演を収録したライブ盤に勝るとも劣らない名演である。しかもロバート・フリップとトニー・レヴィンとメル・コリンズはもう古希を越えているのだが、老いを全く感じさせない演奏で、2015年の来日時よりも研ぎ澄まされた表現をしていた。まるで音楽の神が楽器を奏でる3人に降臨しているかのようである。そんな空前絶後の超越した音楽空間に3時間ほど身を置けた幸運に感謝したい。

この日のセットリストでは前回聴いた曲もかなり多かったのだが、どの曲もアレンジが変化したり、パワーアップしており興味深く楽しめた。メンバー構成が7人から8人に増えたこともプラスに作用した要因だろう。曲によってはロバート・フリップもキーボードを弾くケースがあり、70年代のスタジオアルバムにおけるメロトロンの冷気を含んだオーケストラのような独特な音色がより重層的に密度を深めて空間を漂う。そしてトリプルドラムもビル・リーフリンより重く硬い音を叩き出すジェレミー・ステイシーの存在感が大きく、ステージ前面から津波のように巨大なビートが迫ってくる。大地を揺るがすようなその勢いは凄まじく、コンサート1曲目の「太陽と戦慄1」から最大級の効果を発揮していた。正直、高齢のバンドということもあって、私は2015年の来日公演がキング・クリムゾンの歴史を集約したような最高で最強のライブと認識していたのだが、現実にそれを超える光景を目の当たりにして驚嘆させられてしまった次第だ。

そして今回とても嬉しかったのは、このブログでも紹介した「アイランズ」が聴けたことである。コリンズのサックスもステイシーのピアノもシカゴ公演に匹敵するパフォーマンスだった。この曲は2部構成の1部の終幕で演奏されたのだが、素晴らしかったのはエネルギッシュで動的な「太陽と戦慄4」の直後に隙間なく静的な「アイランズ」にすっと入ったことだ。こうした動から静への展開は、「リザード組曲」や「クリムゾンキングの宮殿」といった曲の中でも感じることができたのだが、神業のような絶妙さという点では、キース・ジャレットのピアノソロコンサートでの体験以来で、嵐のような激しさのあとに小鳥の囀りを耳にする、そのような音の変化が心に染み入る瞬間だった。

今回のキング・クリムゾンの日本縦断のスケジュールは平日が多く、私は複数回行く予定だったのだが、この大阪公演初日のみになってしまい、今更ながら後悔している。セットリストを確認すると大阪公演2日目は初日とかなり趣きを異にしており、初日が初期作品のレパートリー中心だったのに対して2日目は名作「レッド」のアルバムを中心に組まれていたからだ。この為、大阪公演の2日間を鑑賞できた人が実に羨ましい限りである。ネット上でも現実にライブ体験をした人達の感想は絶賛の声ばかりだが、それが事実であり真実なのだから恐れ入る。

人間、年をとると弱気になりがちなものだか、少子高齢化の人口減社会を迎えている日本にとって、キング・クリムゾンの今年の来日公演は大きな活力付与になったことだろう。観客の年齢層は総じて高かったが若者の姿もちらほらと見かけた。感動を与えてくれる素晴らしい音楽を受け取った人々には最高のグリマスプレゼントになったはずだ。メンバー8人と彼等を支え続けているスタッフの方々にこの場をかりて心から感謝と敬意を表します。

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