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残り100秒

2020-02-21 13:52:15 | 日記
今年の「終末時計」の針が史上最短の100秒前に進んだ。昨年よりも世界の終わりに20秒接近している。核拡散や気候変動対策への遅れ、そしてサイバー空間における偽情報の広がりが大きな要因だという。これは極めて深刻な事態である。と同時に最大級の警告を発した原子力科学者会報に敬意を表したい。しかも今回は、分単位ではなく秒単位を強調したアナウンスになっている。私たち人類は極めて危険な地点に立っていることを改めて認識すべきだ。

核拡散については、相変わらずというか、世界を動かす指導者の多くが、核戦争さえも想定した軍事的威嚇としての利用価値に囚われ続けており、実に情け無い限りである。せめてほんの少しでも軍縮の方向へ歩み寄れることを期待したいところだが、残念ながらそうはならなかった。米朝首脳会談もパフォーマンスだけの稚拙な印象を受けることこの上ない。しかしながら唯一の被爆国であり、東日本大震災において原発事故も経験してしまった日本が、核問題について何ら積極的なアプローチを国際政治の舞台において果たせていない現状は痛恨の極みである。本来ならば今以上に、軍備を抜きにした平和外交で国際社会に貢献できるはずなのに。

気候変動対策への遅れは、人類全体が科学者の見解にもっと真剣に耳を傾けるべきである。現に世界各地で頻発する台風や豪雨、竜巻、山火事、洪水といった天災による甚大な被害は、地球の気候変動による影響と無縁だとは到底思えない。実際、地球上の温度が上がれば、寒冷地の氷は溶けて海水面が陸地面積を減らしていくのは当然だ。これによって、生息地を奪われる種も増えて生態系が脅かされていく。
不可解なのはこうした人災による世界の異変に対し、政治家の多くが示し合わせたように楽観的なことである。これは首を傾げざるを得ない事態だ。彼らは自国民に対し、敵への恐怖と不信を煽り、核兵器も含めた軍拡を図りながら、その一方、気候変動には心配御無用といった空威張りである。
グレタ・トゥーンベリさんを筆頭に若者が環境活動に積極的になってきているのは、その危機意識が本物だからだ。日本各地においても高齢の被災者の殆どが「長い人生の中で、こんな目にあったのは初めてだ」と悲嘆の声をあげる。つまり今や、地球上の何処かで暮らす限り、大きな天災とは無縁な人生など有り得ない状況になってきているのだ。このまま為政者たちが問題先送りを続ける限り、青少年の未来は災害だらけの苦難に満ちた生涯になってしまう可能性さえある。

サイバー空間における偽情報の広がりも、危険かつ憂慮すべき事態だが、現代社会に山積した多難な問題の解決を可能にする突破口は、意外にもサイバー空間にあるのではないかとも思われる。それゆえに、これは諸刃の剣である。 インターネットの登場で、人間は物理的制約から解放され、全ての知識を使えるようになった。たとえば、すぐに知りたいことがあったら、図書館に出向く必要はなく、ネット検索で事足りるわけだ。
民主主義は機会の不平等が是正された社会でこそ正常に機能する。歴史的に権力者の多くは情報を独占しようとしてきたが、ネット社会において情報は洪水のように溢れており、専制的な独裁国家がいかに情報操作を巧みに行おうとも、その強固な支配の網の目から、結局は滴り落ち漏れていく。だから、私たちは海洋金庫の鍵のように貴重で希少な選択の自由を意識させる膨大な情報の存在を忘れてはならない。
残念なのは、偽情報に振り回されて踊らされてしまう人々だ。こうした人々は入手した情報が、虚偽だとは夢にも思ってはいない。本来ならばネット社会において、選択肢を吟味し知恵を絞ることで、幻滅を知り幻想からは覚められるはずなのに。私たちが注意しなければならないのはここである。核拡散や気候変動対策の遅れを、余計なお世話だと嘲笑う国家指導者がいたら、私たちは冷静に信頼性の高い報道や良質な分析を探して、思慮深く行動すべきなのだ。詐欺師は人を騙しておいて、騙される方が悪いと説教さえするものだが、こんな馬鹿な話はない。騙す方が悪いに決まっている。

それにしても残り100秒は厳しい数字だ。私たちは民主主義やその社会の意味と意義を今一度真剣に考えて、政府や地方自治体に対しては、汚職や腐敗と無縁ではないか、常に厳重なチェックをすべきである。税を納めている以上、官が民に仕える姿こそが、健全で民主的な社会だからだ。












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