味わい一筆

季節感ある暮らしをいっしょに楽しみましょう

すき焼き用の食台

2014-02-04 18:36:06 | 日記

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丸く穴のあいた食台は、どこかの部屋で何らかの形で使われてきたが、長いこと本来の目的では使用されていなかった。元々はすき焼き用の食台で、生前亡父が手持ちの木材で家具職人さんに作っていただいたものだ。

木枯らしの吹く夕方には、よく母が七輪に火を熾し、鉄鍋をカンカンに焼いて用意していた。牛脂の焼ける匂いがすると、どこからとなく皆集まり、円卓を囲んだ。家族が多かったので、私達が食卓に着く頃はもう肉の姿はなく、牛肉のだしで野菜を食べていたが、それはそれで楽しかった。湯気の向こうには、笑顔で砂糖と醤油を継ぎ足す母の姿がいつもあった。

毎年すき焼きの季節になると、この食台の復活を考えていたが、なかなか実現できないでいた。近頃はお茶の炭点前の影響で、部屋での火熾しもそう抵抗がなくなったので、七輪の出番も考えていた。

そんな折、刑務作業製品の特売場で偶然丸い穴に合う適当な高さの木の台を見つけた。嬉しくて、思わず手を合わせて購入した。脚の面に「椅子(宮崎)2型」と記された表示があった。

大事に持ち帰り合わせてみると、座板に電気鍋がちょうど良く収まり昔の懐かしい景色が蘇った。早く使いたくて、買い物や準備の時間惜しみ、牛肉と葱だけの葱すき焼きでさっそく感触を味わった。お陰様で数十年ぶりに、先人が残してくれた円卓の温かさを感じることができた。

いつの世も、人は人に支えられ勇気づけられて生きていくのだと新たに思った。 (^v^)