何かの記念に小さな苗木を植えることが好きだ。植樹の様子がいい思い出となり、その時の気持ちが蘇る。この春も、桃とモクレンの花が一緒に咲き元気をもらった。
桃は長女が生まれた年、近くで開催されていた植木市に出掛け、おしめを干す手を止め急いで植えた。そのため隅っこに少し遠慮がちに毎年咲く。その様が私たちの生き方に似てまた面白い。そう表だって主張しないが、しっかりと一隅を照らしている。桃の木を見上げる度にそれでいいと思っている。
続いてモクレンは、長女が小学校に入学した年に植えた。亡き母がモクレンのつぼみが膨らんできたらそろそろ入学進級の時期だと新札と風呂敷を用意していた。その頃、教科書は新学年前に本屋で求めていた。発売日には、兄弟それぞれ新札と真新しい風呂敷を手に駆けて出掛けた。モクレンの花が咲くと真新しい教科書を開いた感動が今も指先に走る。
その長女も今年嫁ぐことに。ふさわしい記念樹を見つけ庭の端っこに植えるつもりだ。