会長さんは忙しい

オールスター休みの一日、津田投手の本、したちゃんのお友達に貸しているので、というわけではないのですが、
「勝者も敗者もなく2004年日本プロ野球選手会の103日間」という本を読んでみました。

プロ野球選手会については、はたまた、昨年のストライキについてはいろんなご意見あると思います。

この本、「選手会著」となっていますが、別に選手個々人が項目を担当して執筆したわけではないので、どこまでが真実に肉薄しているのかは「？」です。でも、ひとつの読み物として読んでみると、「ああ、そんな風に思ってたのか」「へえ、こんなことを言ってる」という裏話に、心をくすぐられてしまうのです。野球が好き、野球という仕事をしている日本でごくわずかしかいない種類の男たちに心惹かれるものとしては、いたしかたないミーハーな反応です。

野球しか能がない（かに見えた）男たちが、とにもかくにも「一枚岩」になってストライキをしてしまったという、おりがみにとっては「痛快極まりない出来事」。（その結果はさておき）

　この本の中のタイガースの選手会長、今岡誠さんに関する記述に注目したいと思います。




・・・選手会が署名行動を始めたころの一こま

　阪神選手会が、甲子園球場の敷地内で、署名活動を開始したのは、7月28日の試合前だった。・・・略・・・・
　今岡は、合併報道からの経過を見て、激動の中でプレイを続ける、近鉄、オリックスの両選手の精神力に感嘆していた。
　同時に、もし万一この事態が阪神で起きていたら、・・・略・・・
　仮に、選手が試合をしようとしても、ファンやマスコミが言うだろう。
「お前らなんで試合ができんねん」
　反対運動も署名やデモといった生ぬるいことでは済まないだろう。
　それが阪神というチームを取り巻く空気だった。
　今岡は、人気球団に籍を置く選手として、そして選手会長としての振る舞い、常に心がけていることがあった。
　それは、「知らないなら喋るな」である。
　会議に出て、自分の目でみて、肌で感じて、全てを把握して喋るのはいい。
　が、何も知らないのに、マスコミの前で喋ってしまうことは、この阪神というチームの選手としては慎むべき行動だった。
　「阪神はいいよなぁ、注目されて」
　が、今日、大絶賛されても、明日は辞めろといわれる。
　二つ大絶賛されたら、八つはコテンパンにされる。
　それが選手の感じる阪神マスコミだった。
　そして、意図しない、何気ない一言が、大きな活字となって波紋を呼んでしまう。
・・・略・・・
　各チームの経営事情の差は関係なしに、この問題は、現役選手すべてにとって、自分たちの問題であることは、阪神選手会でも確認された。


そして、この後、予告なしの甲子園での２０分間の署名行動につながっていくわけです・・。


また、

・・・・・・・・2004年9月17日のある一こま。
「こうやって、みんなでカツ丼食ったりしたの、いつかきっと思い出すんだろうなぁ」
箸を動かしながらつぶやく古田の一言に、今岡誠は、妙な感銘を覚えた。
　選手会長一年目。
　この問題が起きてから、自分より年上の選手の多いチーム、メディアから常に注目される特別なチームの選手会長として、自分なりに精一杯やってきたつもりだった。
　そして、今日。この数時間後にどんな結論が待っているかはわからないが、野球に関わる人間として一生忘れることのできない歴史的な場所に自分はいるのだと自覚した。
　そして自分のすべきことは、すべての選手やファンに恥ずかしくない悔いのない選択をすることだと肝に銘じた。


この少しあと、各地のチームメイトへ、「ストライキ」の指令が飛ぶのです。





何を考えているのかよくわからないといわれ、うちのおっとには「宇宙人」とまで言われている今岡誠選手。その正体は、修羅場をくぐりぬけてきた紛れもない「会長」なのだなあ、と感じました。


今、守備も打撃も好調とはいえないようです・・・





「会長、がんばれ。痛かったり辛かったりしたときにはペンちゃんが癒してあげるね。」
今のおりがみはそんな気分です。


なお、この「勝者も敗者もなく」の中の選手たちは、どの子もこの子も余りにもかっこよすぎますので、用法容量をご自分で加減しつつお読みになると良いと思われます。