
みなさま、
京都大学の岡真理です。
先日は、シリア人医師バハー・キーラーニーさんの講演会「シリアのいま」、超ショートノーティスにもかかわらず、お越しくださったみなさま、どうもありがとうございました。
(これについては、追って、報告と感想を流せれば…と思っております)
さて、今日は、シンポジウムのご案内です。
2008年に中東現代文学研究会を立ち上げ、かれこれ8年余り、活動を続けています。
その中東現代文学研究会の主催で、3月19日(土)、京都大学を会場に、シンポジウム「現代世界――欧州・中東――を《文学》から考える」を開催いたします。
プログラム http://www.h.kyoto-u.ac.jp/topics/2016/02/319.php
フライヤー http://www.h.kyoto-u.ac.jp/jinkan/topics/20160319.pdf
昨年2015年は、パリのシャルリー・エブド襲撃事件で始まり、夏には、中東から欧州に押し寄せる難民たち――その大半がシリア内戦による難民たちです――の問題が連日、マスメディアで報じられ、そして11月には、パリで同時襲撃事件が起こりました。
シリア内戦では、この5年間に、すでに25万人が殺され、人口2400万のうち半数が国内外で難民となっています。
このような事態を前に、私たち、文学研究者にできることがなにか、あるでしょうか。
現在、中東や欧州で現在進行形で生起している出来事自体を著した長編小説はまだ書かれてません(それが書かれるとしたら、まだまだ先のことになるでしょう)。
しかし、短編小説であれば、包囲下の街で書かれ、ネットで発信されています。
また、すでに書かれた作品を通して、現在、起きている出来事の背景や、これらの苦難を今、生きている者たちがどのような人々であり、どのような思いで生きてきたのかを知ることができます。
一言で言えば、私たちは文学を通して、「人間としての」彼らに出会うことができる。
現代世界でいま、起きている出来事を、《文学》を通して、《人間の》経験として考えることができるのです。
人間として出会うこと――
人間性を踏みにじり、人間を間化する出来事を生きている者たちであるからこそ、今、その彼らに、私たちが「人間として出会うこと」が何にも増して必要であり、そして、それゆえに、現代世界で生起していることを私たちが理解する上で、政治学的、社会学的な分析と同じくらい――あるいは、もしかしたら、それ以上に――、私たちは文学を必要としているのではないかと思量いたします。
そのような思いで、今回のシンポジウムを企画いたしました。
クルディスタン、シリア、ドイツ、フランス…、今、問題の舞台となっているこれら地域に焦点を当て、クルド文学、アラブ文学、ドイツ文学、フランス文学の翻訳・研究に携わる5名が、それぞれに、具体的な文学作品をとりあげて、それらを通して、マスメディアの報道等では触れ得なかった新たな視点からこれらの問題について語ります。問題を、ニュースや情報として消費するのではなく、人間の問題として受け止めるために――。
今こそ文学を。
みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げております。
以下、シンポジウムの詳細です
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シンポジウム
「現代世界 ― 欧州・中東 ― を 《文学》 から考える」
http://www.h.kyoto-u.ac.jp/topics/2016/02/319.php
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日時:2016年 3 月19 日(土曜日)13:30 -17:30 (13:30開場)
会場:京都大学(吉田南キャンパス)人間・環境学研究科棟地下講義室
会場マップ http://www.h.kyoto-u.ac.jp/access/
※案内表示などはとくに立てませんので、キャンパスマップで建物の位置をじゅうぶんご確認の上、ご来場ください。
※ただし、地図には反映されていませんが、グランドの南側に新しい建物ができました。会場は、その新しい建物の南側の建物です。
※正門および西南門の入り口にもキャンパスマップがあります。
参加費 無料(申し込み不要)
プログラム
※講演タイトルの下は、講演でとりあげる作家・作品名です。
Ⅰ.総論 13:30‐14:00
岡 真理(京都大学、アラブ文学) 「文学、この迂遠なるもの」
Ⅱ.各論(1)―中東編 14:00‐15:00
1.トルコのクルド人
磯部加代子(トルコ語クルド文学翻訳家)
「囚われの故郷で ―忘却の民の叫びと沈黙 」
ブルハン・ソンメズ『イスタンブル、イスタンブル』
2.シリア ― 民衆蜂起と内戦
森 晋太郎(アラビア語通訳・翻訳者、東京外国語大学)
「牢獄の壁の落書 ― 包囲下の街で」
ムスタファー・ムーサー「なんていい人たち」『虐殺の花瓶』など
Ⅲ.各論(2)―欧州編 15:15-16:15
3.ドイツの中東移民
鈴木克己(東京慈恵会医科大学、ドイツ文学)
「もうひとつの冬物語 ―望郷、追われし者の心の疼き」
ラフィク・シャミ『ゾフィア、すべての出来事のはじまり』
4.フランスのマグレブ系移民
石川清子(静岡文化芸術大学、フランス文学)
「〈憎しみ〉や〈服従〉から遠く離れて―はざま、亀裂としての〈郊外〉を読む」
レイラ・セバール『ファティマ、辻公園のアルジェリア女たち』、ヤミナ・ベンギギ『移民の記憶』
Ⅳ.パネルディスカッション 16:15‐17:30
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主 催:中東現代文学研究会 / 人間・環境学研究科 学際教育研究部
科学研究費基盤研究(C)「中東現代文学における「ワタン(祖国)」表象とその分析」
問合せ: PJ21kyoto@gmail.com
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以上