ちょうど1年と一か月前、腸ねん転で近くの県立病院に入院した。その時の体験談です。
奇跡を生む病院
カーテンで仕切られた隣のベッドの患者は、ベッドに横たわったままで殆ど言葉を発しなかった。看護師が大声で話しかけても、耳が遠すぎるのか、活舌が麻痺しているのか、「阿(あ)とか「吽(うん)」とか言うだけだった。
夜の9時に、見回りの看護師さんが来て、「タナベさ~ん、お星さまがいっぱい出ていますよ。お山とお空がとっても美しいわ。」と言ったが、田辺さんは、「うん」とも「すん」とも応えなかった。
病室の東窓からは、袴岳(はかまだけ)と斑尾山(まだらおやま)が手の届きそうな所に見えていた。
翌朝6時に、看護師さんが、窓のカーテンをサッと開けて、「今日は快晴ですよ、タナベさん」と言うと、奇跡がおきた。
田辺さんがしっかりした声で応じたのだ。
「ああ、お山とお空がとっても美しい。」
看護師、「今日は17日よ、関山の火祭りだわ。」
田辺さん、「わしが演舞を舞った日も、奉納相撲を取った日も、お空は
今日のように美しかったなあ。」
妙高山