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反田恭平で「チャイコフスキーピアノ協奏曲2番」を聴く(読響プレミア)

2023年02月07日 | クラシック音楽

録画しておいたTV番組から反田恭平の弾く「チャイコフスキーピアノ協奏曲2番」(読響、指揮セバスティアン・ヴァイグレ)を見た。反田恭平は28歳、2021年ショパン国際コンクール第2位入賞で一躍有名になったのはご存じの通り。

番組のインタビューで、今回のチャイコフスキーの2番の選曲は反田恭平が行った、理由は「学生時代に調べたらカッコイイ曲だと言う第一印象が強く、いつか弾いてみたいと思っていた、決め手となったのはコンマスの長原幸太から彼もこの曲が大好きで、今度はこの曲弾かないと言われて、これやるしかないと思った。1番より8倍難しい、1楽章はカデンツァ(ソリストパート)があるが数十小節にわたって書かれている大カデンツァで楽譜にピアニッシモのpがpppppと書かれていて技巧的にも表現の幅的にも難しい。2楽章はコンマスとチェロの遠藤真理さんと3人のトリオになっているので見所、3楽章はcon fuoco(火のように)、集大成なので聴き応えがある、などと述べていた。また、ヴァイグレとの共演は2回目、オケを充分鳴らすひとで二人でアイコンタクトも多く意思疎通が良かったとも述べた。

反田の演奏を見ていると確かにこの曲は難しいと思った。コンサート会場で見ているよりもテレビで見た方がピアノを弾くときの難しい指使いや演奏者の表情などがよくわかって良い面があるが今回はまさにそれがハッキリわかった。

ところで反田はコンクールで2位に入賞できたが、その裏では数多くのプロにさえなれないピアニストがいて、それらの人たちは幼少の時から猛烈な練習をして、一つのミスタッチも許されないプレッシャーと闘い、先生や親の指示が絶対で他人と付き合うことも少なく、ひたすら練習をさせられる生活をしている、とにかく猛練習しないといけないという強迫観念があり、それ故自分を自分が痛めつるほど練習してやっと精神の安定が得られる、もともとスポーツ選手や演奏家は、トレーニングや練習という名目で自分自身を痛めつけるのが習慣になっている種族だ・・・というようなことを同じピアニストでありエッセイストでミステリー小説マニアの青柳いづみこ氏が「六本指のゴルトベルグ」(中公文庫)という本に書いている(同書8.強迫性障害)。そうかもしれない。青柳氏の同書でも言及しているが、ミヒャエル・ハネケ監督、イサベル・ユペール主演の2001年のフランス映画「ピアニスト」はそのようなピアニストの狂気を描いているが、結末に救いがないのだ(この映画は現在、AmazonPrimeでもNetflixでも見れないようです)。芸術という名の世界も本当に大変だなといつも思うのである。