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気ままに生活してるシニアの残日録

秀山祭九月大歌舞伎から「一力茶屋の場」、「藤戸」を観る

2023年02月04日 | 歌舞伎

先月のNHKの「古典芸能への招待」は昨年9月の歌舞伎座公演、秀山祭大歌舞伎(二世中村吉右衛門一周忌追善)の中から「仮名手本忠臣蔵、祇園一力茶屋の場」と「藤戸」が放映された。

「仮名手本忠臣蔵」は赤穂浪士の討入りの物語を歌舞伎にしたもので、一力茶屋の場は第7段目の演目である。人気の演目である。配役は以下の通り。

大星由良之助
寺岡平右衛門
赤垣源蔵
富森助右衛門
大星力弥
矢間重太郎
鷺坂伴内
斧九太夫
遊女おかる
   仁左衛門
   海老蔵
   橋之助
   鷹之資
   千之助
   吉之丞
   松之助
   橘三郎
   雀右衛門

討入りを決意している由良之助は気づかれないために祇園の一力茶屋で毎日酒を飲んで配下の侍や高師直の侍たちが来てもとぼけて相手にしない、そこに息子の力弥が討入りの密書を持ってくる、これを読んでいるところを足軽の平右衛門の妻で茶屋の遊女になったおかると床下に隠れていた高師直方の斧九太夫に見られてしまうこと(ここが一つの見せ場、写真参照)から口封じのためおかるを身請けの上殺そうとするが・・・

仁左衛門の由良之助は、キッとして本性を現すところはかっこよく決まるが、酒に溺れて身内さえ騙すところの演技はどうも彼のイメージにはあわないのと思うが、そのギャップが良いとも言えるのかもしれない。どうも知性豊かな教養人のイメージが邪魔をしているのか。孫の千之助と一緒の舞台に立てるなんて幸せだろう。昨年は体調を崩して舞台を降板していた時期もあったが元気に復帰してくれて良かった。3月には菊五郎が休場するが両大御所とも高齢なので体調と相談しながらいつまでも元気な姿を見せてほしいものだ。

ところでこの演目の舞台となっている祇園一力茶屋であるが現在でも京都南座の近くの花見小路にある。但し、店の名前は「一力亭」で一見さんお断りなので一般人は利用できないが祇園観光に行ったときにはあの界隈をそぞろ歩きして茶屋のムードだけでも味わう(写真は京都旅行で花見小路の入口、一力亭の斜め前から撮ったもの)。この近辺は「私道での写真禁止」の札が立っているが、花見小路は公道であり、趣旨がわかりづらい。どうも祇園の芸妓や舞子を追い回して写真を撮る人が多いのを禁止する趣旨らしいので一力亭自体を撮るのはかまわないと勝手に解釈している。

 

「藤戸」は2代目中村吉右衛門が松貫四のペンネームで構成を手がけ、絶えず繰り返される戦争に対しての深い思いがテーマとして描かれた舞踊劇である。

配役は以下の通り。

母藤波/藤戸の悪龍
浜の男磯七
浜の女おしほ
浜の童和吉
郎党黒田源太
郎党小林三郎
郎党和比八郎
郎党長井景忠
佐々木三郎兵衛盛綱
   菊之助
   種之助
   
   丑之助
   吉兵衛
   吉之丞
   坂東亀蔵
   彦三郎
   又五郎

前半では、源平合戦の後、領主として備前国藤戸に着任した佐々木盛綱の前に藤波という女性が現れる。そして1年前の藤戸の合戦で敵陣へ馬で渡る浅瀬を教えてくれた漁夫を無情にもその場で殺した盛綱に藤波が「我が子を返せ」と涙ながらに訴える。

後半は悪龍と化した息子の怨霊が現れ、大立ち回りを演ずる。母藤波と藤戸の悪龍の二役を演じたのは2代目吉右衛門の娘婿である尾上菊之助。一人で男役と女役を演じる珍しいケース。孫の丑之助も出演する。

 私は菊之助(45)を贔屓にしている。立ち振る舞いが上品で気品がある。それ故、今回みたいに女役も立ちも役両方務まる。人柄も良いのだろう、テレビなどにも良く呼ばれている。八代目菊五郎を襲名するのも遠くはないであろう。頑張ってほしい。