美意識を磨く 文田聖二の『アート思考』

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基本デッサン 視点 イメージングスキル

2012年03月08日 22時00分24秒 | 日記
デッサンやアーティストのことを文章だけ(画像なし)でイメージしてみて下さい。

1、 エゴン・シ―レのドローイング。
それまでの「下絵、習作」としての意味から、それだけの表現として完結した世界を持つ「自立するドローイング」となっています。
例えばレオナルド・ダ・ヴィンチなど聖母をテーマとした絵画作品のために手や顔の表情の何枚もの習作(エチュード)を残しています。
つまりシーレのドローイング作品は、絵画への準備的な制約からそれを解放して、作品として独立しうるものになっています。

2、 現代の作家であるロバート・ロンゴのドローイング。
トランポリンを使い、モデルが空中で静止した瞬間を捉えたポーズを描いたものがあります。

3、 ワイズ・バッシュ。
この人は銅版画での表現などドローイング作家と言えるアーティストで、オーケストラの演奏者など動きのあるものをモチーフとしています。僕はクロッキー制作の参考にしました。
ちなみにスケッチとクロッキーの違いは、短時間にその特徴を捉え描くことは同じですが、人物や動物など‘動き’のあるものを描く場合は「クロッキー」、眼に写ったかたちやアイデアなどを鉛筆やペンなどでごく簡単に記録する絵を「スケッチ」と呼びます。
クロッキーはデッサン力の基礎(手と頭の連動)といった絵画の訓練的な意味合いが強く、スケッチは制作のための記録や他者に作品のイメージや計画を伝えるため(エスキース、アイデアスケッチなどとして)用いられることがある。
なので、数時間で描くデッサンをまず初歩段階として制作をしていますが、実はこのクロッキー力やスケッチ力を意識して短分間制作を繰り返し訓練していくと実践的に使えます。

4、 フランシスコ・ベーコンの油彩ドローイング。
ロックグループ”ローリング・ストーンズ”のミック・ジャガーらメンバーを描いたものがあります。

油絵や水彩作品やイブ・クライン「炎の絵画」のように火で銅版に焼き付けた痕跡などもドローイング作品として紹介されています。
5、 イブ・クライン「炎の絵画」。
現代になるともはや画材や表現の枠はなくなってきています。では、本来デッサンでいわれていたエスキース、下絵、習作(エチュード)とはどういったものか。

6、 彫刻家ヘンリー・ムーワのクロッキーやアイデアスケッチ。
アーティスとは作品制作するために取材としてクロッキーやスケッチを大量に描きます。その後、完成イメージとしてエスキースや下絵を具体的に描いていきます。
これらをまとめて「デッサン(計画、設計図の意味があります)」といいます。
さらに人物画では手や顔などのディテール(部分)を具体的に描いていった絵を「習作(エチュード)」といいます。

7、 これがミケランジェロの習作。
ミケランジェロはホモセクシャルだったので、女性像の作品でも男性モデルのデッサンをもとに制作していたと聞いています。そのためミケランジェロの女神をテーマにした作品は筋肉質でたくましく感じられます。ロダン(女好き)の制作する柔らかでしなやかな女性像と比較すると面白い発見があります。

8、 ロダンの彫刻作品とデッサン。
デッサンをみてもその作家の視点がみえてきます。
女性を肉感的にとらえ、とてもやわらかくしなやかに表現しています。ホモのミケランジェロとは女性に対する感じかたがだいぶ違ったことが分かります。

9、 ジャコメッティ。
彼は彫刻作品だけではなく絵画作品も多数描いています。そもそも画家、彫刻科、版画家と分けるのは日本特有で、海外ではジャンル関係なしに表現の幅をひろげ活躍しているアーティストが少なくありません。
先ほど空中で静止した瞬間のドローイング作品を紹介したロバート・ロンゴもドローイングから立体、インスタレーション、映画まで制作したりしています(ビートたけしが出演したキアヌ・リーブス主演「JM」)。
ジャコメッティに話を戻しますと表現が細長いデフォルメが特徴で、どんどん作品が晩年になればなるほど細長くなっていきました。油彩作品では構造や空間性を意識していることがわかります。                                
また余談ですが「油彩」とか[油絵]とか、芸大では「油画専攻」なんていったりします。「油絵」といういい方はどこか「絵描き」や「画家さん」をイメージしませんか?
欧米から入ってきた技法を「洋画」と呼んでいた芸大でも「日本画」に対して日本の「油画」という意味があるようです。
なので「油彩」という言い方は、そのジャンルや職業を示すのではなく、その画材や技法を用いるといった意味で使うことが多いです。
たとえば版画を主に制作している作家が「先日の水彩スケッチを今回は油彩でやってみた。」といった感じで使います。         
世界のアーティストは、その扱っている画材や技法でジャンルを分けるのではなく、テーマや目的によって表現手段(メディア)を多用しています。
大学では彫刻を専攻し、卒業後は写真作品を発表している人がいますが、絵画(平面)畑出身の作家とは違った視点でファインダーを覗いていることが分かります。

10、 次はアンドリュー・ワイエス。
この人は息子のジェイムズ・ワイエス、父親のNC.ワイエスと親子3代続く絵描きバカ一家です。
アンドリューが最も有名で、その作品も繊細で達者です。91歳の今もメイン州で絵を描いているようです。絵描きバカです。この人の油絵もそのためのエスキースや下絵となる水彩スケッチもドローイング作品として展覧会が行われ、自立した作品として売買されています。                

11、 島田章三のドローイング。
初期の作品は写実的にものを捉えていたのが、視点がはっきりとし始め、デフォルメした表現になっていきます。最終的には島田章三の画風が生まれてきます。
人物表現の展開だけではなく、構図や空間設定も枚数を重ねるごとに研究され、総合的にひとつの画風として構築されていきます。

12、 安井曽太郎(東京美術学校 教授)のドローイング作品。
日本では浅井忠に師事し、同時期の海老原龍三郎らと関西で洋画を学んでいた。
その後、フランスに渡りアカデミー・ジュリアンで学ぶ(以前の作は焼き捨てたとのことで、彼の初期作品はほとんど現存していない)。
フランス滞在の7年間の間にイギリス、イタリア、スペインなどへも旅行している。
フランスでの作品と渡欧前のデッサンとでは大きく異なった点があります。
木綿問屋の坊ちゃんの曽太郎は家の使用人らをモデルに素描していたようですが、渡欧後とそれ以前と明らかな変化が分かります。
関西の洋画研究所で学んでいた時期と渡欧して、何を学び吸収したのか少し想像してみてください。    写実と描写を意識した素描から、空間性や人体への視点、表現テーマが生まれ、人体の躍動感や空間の臨場感がダイナミックに描かれたデッサンになっています。
また、対象物を見たまま写し取っていた初期作品と比較すると見上げた視線の動きを考えた構成になっています。                                     
これら作家の作品展開をみるとドローイングの上達は、単に技術的なスキルアップだけではなく、対象物の捉え方や環境の変化、自分の視点(テーマ)も大きく影響してくることが分かります。
対象物の捉え方、見方や描き方、制作のテーマは様々で、作家のキャラクターや生き方、表現手段などの数だけ「画風」があるといってもいいでしょう。           

13、その他、 ロートレック、キタイ、岩崎ちひろ、ヤンセン、ジム・ダイン、島田ショウゾウ、フランシス・ベーコン、マッタ、ゲルハルト・リヒター、ワイズ・バッシュ、小磯良平、エゴン・シ―レ、ロバート・ロンゴ、大友克洋、モンキーパンチ、デビュッフェ、タピエス、シグマ・ボルグ、シド・ミード。

14、 シド・ミードのスケッチはパースペクティブ技法が多用されています。
現在のパースの原型をまとめたのはレオナルド・ダ・ヴィンチ。
それ以前のパース技法を使った絵画を比較してみるとダ・ヴィンチの偉業のすごさがよくわかります。

近いうちに色んなデッサンを”画像”を使って紹介します。

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