音楽を作ることが技術であり才能であり、特別なものであることはもう終わりかもしれない。著作権だなんだ、オリジナルだなんだ、という議論すらもう成り立たないのだろうか。少なくとも、映像で使うようなフリー素材的なライブラリ音楽のビジネスは終わりの始まりだろうと思う。そして、想像される未来において、人の心を揺さぶるような音楽すらもコンピューターが作るようになり、人間の役割は終わるのだろう。死滅してゆく職業のリストに「作曲家」が書き加えられたのだろうか。
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score music interactiveのホームページより
Xhailが投じる作曲者の価値に対する疑問
今回の記事のタイトルは少し主語が大きい。
音楽業界は死なないと思う。というのは「生演奏」が駆逐されるわけではないからだ。自動演奏なんてどんなショボイ電子ピアノにもついてるが、誰もそんなものは聴かない。やはり生の人の生の演奏が聴きたいわけで、ライヴ演奏や鍛え上げられた生歌の価値はもしかしたら永遠に失われないだろう。
今回、死ぬかもしれない職業は「作曲家」だ。
とにかくこのビデオをご覧いただきたい。
Xhail Preview (Vimeo)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/65/f02aa32356e79942c5733ba82496a56e.jpg)
驚愕でしたわ、これ見たとき。瞬時に、「ああ、『あの業界』と『このビジネス』は終わった」と思った。フリー音源作ってるところとか、そして大して良い音楽作ってない作曲家とか。やばくないですか?これ???
ループ音源ベースのACIDが初めて出てきたときも、おわーと思ったけどあれを「自動でやってくれる」サービスなんだなあと。ループ音源の弱点だったメロディも克服できるんだろーなー。
僕はすぐに「やった!これで映像につけるBGMは無限だ!」と思いましたよ。その次に思ったのは「次しぬのはオレだ」ということ。。。orz
Xhailのシステム
このシステムは「音楽業界」にはやばい代物だが、実はミュージシャンにとっては福音かもしれない。なぜかというとこの作曲されるもとになる音は登録したミュージシャンが作るものなのだ。
少し説明すると
ユーザー側の視点
- キーワードを入れるとリアルタイムで音楽を生成
- ユーザーの住む地域に沿った好みの傾向の音楽や楽器が使用される
- 生成された音楽のアレンジはユーザーが自由にできる(ギターの音が嫌いだから消すとか違うものに変えるようにそのパーツだけリアレンジを指示するとか)
- 作曲するにあたってテンポと和音の2つのルールが守られる。
- 出来上がった曲が気に入ればユーザーは購入。
- いったん購入すると同じ曲は絶対に二度と生成されないので、オリジナリティは守られる。
登録演奏者の視点
- 予めXhailが指定したムードやジャンルに合わせたMIDIがブループリントとして提供される。
- 演奏者はそのブループリント(青写真)をもとに演奏を録音しサイトにアップロードする
- その演奏がユーザーに利用されてフィーが支払われると、利益は演奏者と5:5で分配される。
- 一度ライセンスされた同じアレンジが二度と生成されることはないが、演奏者の音源は登録されたら何度でも使われる可能性がある。
いやはや。。すごい。
音楽業界の反応
当然ながら音楽業界の反発は予想されていたので、開発当初の2年前からどういうリアクションがあるか注意を払っていたそうだ。そしてゲーム業界大手、テレビ、映画業界大手から賛同を得て、開発にあたって出資を受けている。パートナーは今は明かせないが、近い将来発表されるだろうと。また開発にはXBOXの初号機に携わっていた人が参加しているとのこと。
ということでいつかのNapsterのように業界によって潰されるってこともなさそう。
抜け道がありそうな...
僕が思ったのは、以下の2点
- 自動で生成された音楽を、完コピして自分で全楽器を演奏して録音するという抜け道があるのではないか?
- 登録演奏者が演奏したフレーズやリフがパクリだったらどうするのか?
ということ。
1.はぜったいやるよね。オレならやっちゃう。煮詰まった時このサイトに行ってちょっとキーワード入れて作曲させて、いいのが出来たらiPhoneに録音してスタジオ持ってってちょいちょいアレンジして録音して、作曲オレ、にしちゃうの。
2.に関してはある程度はじくアルゴリズムがあるのかどうか。だって登録演奏者にしたら最もお手軽なのは「Stairway to Heaven」のイントロアルペジオを弾いて登録するっていうのだと思う。。そのへんはどうなってるのかな?
人間しかできないことってなんだ?
さてさて。
このサービスは始まったばかり(始まろうとしている)
なので、どう転ぶか全く分からないが、少なくとも僕は危機感を持つ。やばいぞと。先日ディズニーの自動編集の記事を書いたが、「人間ができてロボットやコンピューターができないこと」ってほぼほぼ全部なくなるもんだと思っておいたほうがいいのだろうか。
自分は撮影や編集は、ずーっと人がやっていくものだろうと思っていたんですけど、ホントに人間だけが出来る事は無くなっていくのかなあ。
そのうち、コンピューターが1/fまで考えて表現出来るようになったら、何が本当の映像なのかも分からなくなったりして。
短絡ですけど、食いっぱぐれないように、ゼネラリストを目指しておこう。なんて思いました。
どもです!
僕、本文には書きませんでしたが、キーワードにJ-POPって入れたら、ヒットソング書けるんじゃないかと思いましたww で、適当にせつないとか見失ったり会いたいとか歌詞いれてwww
いや、編集はまだしもさすがに撮影は難しいと思いますが、仰る通り「表現って何だ?」というところまで突き詰められてくる気がします。
もちろん、独創的な天才たちは残っていくでしょうけど、それ以外の凡百の「クリエイターたち」は駆逐されてしまうだろうことを覚悟しとかないとですね。。
ちなみにフリー音源素材を提供しているポータルサイトのフォーラムでは、「オレたちはもう終わった??」というスレッドが立って、作曲者たちのコメントで大賑わいです。
「美味しさ」「品質」を突詰めると,自滅するパターンもあるんですよね。美味しさを求めて精製しすぎた食品が身体には毒になるみたいな。
映像もそうなんですが、機材の進歩と価格下落がすさまじくて、もうなんというか「プロ機材」と「アマ機材」という差はないなーという感覚ですね。その意味で、機材やソフトでの差別化は難しく、今は「本物であること」以外差別化ができないという気がしてきてます。
色んなことがあまりに自動化が進んで、人間しかできないことってなんだろう???ということをあらゆる仕事に就いている人が考えないといけない時代と言いますか。。
品質を突き詰めることは、僕の仕事では難しく、「時間通りに求められる品質の映像を適正価格で作る」ということ、、ですかね。美味しさを求めすぎることは自分にとってもクライアントさんにとっても毒にしかならない場合はすごく感じます。なにごともバランスというか、、、
いずれにしても、本文で書いたように音楽業界が死滅するってことはないでしょうが、底辺部分は一掃されてしまうくらいの脅威はあると思います。。僕は映像では底辺部分なので凄く脅威です。。
慧眼だと思います。( )は僕が最近悩んでいる部分を追加しましたが(笑)。僕も「隙間産業」なんで今の流れだと消去される立場なのです。ただ、実力的にはとっくに消されてるはずの僕がなんとか持ちこたえてる理由もあるかもしれないと、まわりの音楽家たちを見ながら考えています。ちょっと抽象的ですいません。良いお仕事を。
普段どうしても自分のベストのアウトプットを出せないことがフラストレーションになってしまうことが多いですが、結局はやはり生き残るには「学んで学んで」良い仕事をやり続けるしかないかなーという結論ですかね。
品質と速さや価格とのバランスや、信頼できる仕事ぶり、安くなったツールから最大限の結果を出すなど、続けていくための要素は昔も今も実は変わらないのかもしれません。。