危険をはらんだ『グーグル問題』

2009-10-10 21:24:11 | 日記
少し堅い話になる。

「グーグル問題」
つまりグーグルが権利者の許可なしに、書籍の本文を電子的にコピーしてデータベース化し、インターネットで見ることができる。
という事業だ。
これに対して米国作家組合や出版社が、著作権侵害を理由に訴訟を起こした。
その結果、
“グーグルから対価をもらって容認する”
といった和解案が示された。

この和解案に日本の権利者(日本の場合はほとんどが著者)も反対(和解案からの離脱)するかどうかが迫られている。
反対の意思表示をグーグルにしなければ、グーグルの事業に賛同し、コピーを容認したとみなされるのだ。

日本でもグーグルは慶応大学図書館と提携し、すでに日本の書籍の電子化が進められている。
大学図書館がこのような事業に協力するというのは実に理解に苦しむ。

この「グーグル問題」は、著作権上の問題と、様々な利害(著者・出版社・公共)とが絡み合っている。
弊社も弱小ながら出版社であるがために、判断に苦しんでいたのだが、
9月末、『流通対策協議会(小零細出版社が集まった団体。弊社は会員ではない)』の提唱する和解案からの離脱に賛同し、署名した。
長い目で見て、グーグルのやり方は、著者のためにも、出版社のためにも、公共のためにもならないと判断したからだ。

大資本のグーグルという一企業による有無を言わせぬ一方的な行為は、許し難い行為だ。
インターネットやITの世界は、多くの新規ビジネスを生んできた。
そしてそこは様々な立場の人が自由に意見の発表できる場でもある。
しかし、ビジネスに関して言えば、先行投資をして一足先に市場を独占し、製品を標準化した者が勝つ。
後は必要のないと思えるアップグレードにも、利用者は代金を支払わざるを得ないという構図を生む。
こうした支配の構図は、少数者の意見を尊重するという方向に反するだろう。

青は渡って良し、赤は止まれという信号機が、ある日突然何者かによって、
逆にもなりかねない。
このインターネットやITの世界に潜んでいるモノのことを、承知しておかなければいけないと思う。

コメント
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