蔵書目録

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時代劇 「西行と靜」 帝国劇場 (1920.9)

2020年06月21日 | 帝国劇場 総合、和、洋
     

 大正九年九月狂言  女優劇

     文學博士佐々木信綱〔佐佐木信綱〕閲
     竹柏會同人平山晋吉作 (婦人畫報所載)
 第一 時代劇 西行と靜 三幕 
     アンナ・スラヴィーナ
     太郎冠者       合作
 第二 コメディー 薔薇の答 二幕
     邦村完二作
 第三 史劇 明暗錄 一幕
 
 第一 
  序幕 
     八幡社法樂舞の場
     雪の下歸還の場

 一 靜御前     浪子
 一 源賴朝     彦三郎
 一 御臺政子の前  菊江
 一 大姫君     小春
 一 梶原景時    彌左衞門
 一 梶原景茂    錦吾
 一 畠山重忠    介十郎
 一 和田義盛    守藏
 一 江間泰時    彌好
 一 川越重賴    田三郎
 一 千葉常秀    彌助
 一 八田重藤    彌五郎
 一 藤判官代邦通  三津之助
 一 安達淸經    鶴之丞
 一 工藤祐經    門之助
 一 磯の禅師    房子
 一 侍女撫子    薫
 一 同 女郎花   日出子
 一 同 彌生    ふく子
 一 侍       大和平
 一 同       紅笑
 一 西行法師    勘彌     

 一 濵人男     喜藏
 一 同       守彌
 一 同       喜美藏
 一 同       喜の字
 一 同 女     貞子
 一 同       千代子
 一 同       明子
 一 同       久子
 一 女房      錦絲
 一 同       靜子
 一 同       花枝
 一 同       豊子
 一 同       きん子
 一 同       照子
 一 巫子      松江
 一 同       竹子
 一 仕丁      鶴助
 一 同       喜美藏
 一 同       松藏
 一 侍       佳根松
 一 同       玉次
 一 同       鶴治
 一 小姓      喜美丸

    長唄音樂師社中

 長唄       杵屋六左衞門
 小鼓       田中傳左衞門     

   笛       望月太喜藏
   長唄      中村兵藏
   小鼓      梅屋市左衞門
   長唄      中村六三郎
   三味線     杵屋六郎
   三味線     杵屋六一郎
   長唄 喜八改メ 中村瓢二
   ふえ      望月太喜四郎
   三絃      杵屋彌三郎
   つゞみ     田中傳次
   三絃      杵屋六次郎
   同       杵屋六吉
   同       杵屋六郎次
   うた      中村六七郎
   たいこ     柏扇吉
   つゞみ     住田長五郎
   三み      杵屋六之丞
   同       杵屋千吉
   同       岡安喜三郎

 部長 杵屋寒玉 

     文學博士佐々木信綱〔佐佐木信綱〕閲
     竹柏會同人平山晋吉作 (婦人畫報所載)
 第一 時代劇 西行と靜 三幕

 『序幕、八幡社法樂舞 はふらくまひ の場』 舞臺一面八幡宮一の鳥居松並木の道具幕茲に濵の男女多勢立掛り、義經の嬖妾靜が、今日神前にて法樂舞を舞ふと云ふ筋を謂ひ、道具幕を切つて落すと、本舞臺は假に造りし神樂殿、茲に囃子の役として、畠山は笛、工藤は鼓、梶原は銅拍子を持ち座を構へ、靜は畫面の拵 こしら へに立 たも ち。上の方には賴朝、御臺所政子、息女大姫等住居 すまゐ 、下の方には、和田、川越、北條其他の諸大名綺羅星の如く居並び、見物して居る見得。直に唄になり、舞は進みて『吉野山峰の白雪踏わけて、入 いり にし人の跡ぞ戀しき』『賤 しづ やしづ、賤の苧環 おだまき 繰返し昔を今になすよしもがな』の所に到れば、賴朝憤然として靜が振舞を咎め成敗せんとしたるも、畠山が諫めと御臺所政子の取做 とりなし とに依り漸 やうや くに心解け、成敗を思ひ留 とゞま り、改めて靜を呼出し、土佐坊昌俊が堀川の館を襲ひし當時の事、又吉野山にて義經と別れし仔細を尋ぬれば、靜は義經の決して兄に二心なき事、義經との仲の變りなき事を述ぶれば、賴朝の不興も直り、狩衣を與へて纏頭 はなむけ となす、更に靜は賴朝に向ひ、義經が御勘気の赦免を願へば、賴朝は其儀は猶考ふべしと答へ、靜を犒 ねぎら ひ、座を立つ、靜は本意なき思入此仕組宜しく幕
 『同、雪の下の歸館の場』 ツナギにて幕開くと靜の母磯の禅師、侍女に靜と義經との間に生れたる子を抱かせ出來 いできた り、お不興受けしと云ふ靜の身の無事を聽きて安心し和子に宮詣 みやまいり させんと奥へ入る、西行法師行脚の姿に出來り、社頭の花を眺め居る處へ賴朝出來り、西行を其昔北面の武士佐藤兵衞憲淸にて、文武の道を極むと聞き、夜と共に語り明さんと、西行を誘 いざな ひ歸り行く、以前の景茂酒に醉ひ出來り、靜の歸りを待受け、赤子の命を枷 かせ に我戀を叶へんとすれど靜聽かず、烈しく景茂を恥 はづか しむれば、景茂は怨みを含みて立歸り、禅師も出て、靜の將來 ゆくすへ を案じる、此模樣宜しく幕。

 二幕目
    營中和歌物語の場
    同 塀外の場

 一 源賴朝     彦三郎
 一 梶原景時    彌左衞門
 一 梶原景茂    錦吾
 一 近臣      佳根松
 一 同       喜の字
 一 同       鶴次
 一 同       玉次
 一 御臺所政子の前 菊江
 一 大姫君     小春
 一 侍女      錦絲
 一 同       靜子
 一 侍       鶴助
 一 畠山重忠    介十郎
 一 工藤祐經    門之助
 一 女の童     君子
 一 西行法師    勘彌
 一 漁師荒作    柳藏
 一 女房おなぎ   ふく子
 一 一子磯松    三津兒

 『二幕目、營中和歌物語の場』 幕開くと、茲に近臣六人住ゐ居て、西行が君の御前にて、武道の古實を物語り、又今日は御臺所大姫君の御所望にて、和歌物語をすると云ふ筋を謂ふ、廊下より梶原景時、子息景茂出來り、賴朝に謁見して、判官殿に心を寄する者なきに非ざれば猶豫なく、義經の子を失ふ可く、後に悔 くひ を遺す事勿れと、殊に景茂は靜への意恨を含みて讒言すれば、政子、大姫を連れて出來り、靜が八幡宮に於ける法樂の舞は、和子の無事をも祈りし事と、靜の心を汲み、共に助命を希 こひねが ふ、折柄 をりから 重忠の西行を伴ひ、出仕せしとの報 しらせ に、賴朝直ちに召出し、法師が弓矢の物語は、永く我等の龜鑑 かゞみ となす可きものありと誉め、御臺及び息女等の爲に、和歌の談 はなし を求め、先づ前日靜が御前にて歌ひし歌の、即興より出でしものなるかと尋ぬれば、西行はそれぞ、伊勢物語、古今集にある古歌を聊か改めて歌ひしものと、併 あは せて其意をも述べ、凡て歌は物の哀れを思ふ人の、まことの心より生れ出づるものにて、如何に詞 ことば を巧に、詠みたりとて、人として價 あたへ なき人、卑しき人の言の葉は、みなつくり物、其人は詞の歌人と、歌道の奥義を明 あか し、暗に梶原親子を諷すれば、親子は怒りをなして、西行を罵り、荒法師文覺上人の西行を怖れしと云ふ、重忠の物語に尻込して口を噤 つぐ む、西行は暇を願ひ、賴朝は紙臺に載せたる銀猫 ぎんべう を取つて西行に與へ、其勞を犒 ねぎら ひ、西行は一同に會釋して出行く、跡に梶原親子は堀の館へ遣 づか はせし安達淸經 きよつね の歸りの遲き事を謂ひ、景茂自ら立越え、子を受取り立歸らんと立懸れば、政子制し、夫 それ には靜と仲善き、工藤の室磯屋こそよからんと云ひ、改め其事を夫祐經 すけつね に命ず、此模樣宜しく道具廻りて、
『同 おなじく 、塀外の場』となり、茲に漁師荒作醉 よひ どれにて立掛り、女房おなぎ、素肌に子供を背負ひて泣き居る、荒作は女房に金の無心を謂ひ、此上はおなぎを女郎に賣り、餓鬼等は海へ捨てゝしまうと、女房を窘 いぢ めて無理難題を謂ふ、折柄 をりから 西行通り懸 かゝ りて此體 このてい を見、脊なる磯松の泣けるを見て、好い物を取らする、夕 ゆふべ の酒の代 しろ にせよと、父に遣 や れと、以前の銀の猫を與ふれば、是にて荒作の怒 いかり も直り、餘りの事に醉も醒め、夫婦の仲も直り、禮を述べて歸り行けば、西行後 あと を見送り、述懐の白 せりふ 宜しく幕。

 大詰
     堀屋形靜居間の場
 同返し 由井ヶ濵の場 

 一 侍女撫子    日出子
 一 同 女郎花   薫
 一 同 葉末    花枝
 一 工藤の室磯屋  美禰子
 一 堀の室夕顔   勝代
 一 侍女      明子
 一 同       光代
 一 磯の禅師    房子
 一 侍       松藏
 一 靜御前     浪子
 一 堀の娘龍田   延子
 一 堀親家     松助
 一 梶原景茂    錦吾
 一 家人      彌助
 一 船人      喜藏
 一 同       喜美藏
 一 西行法師    勘彌
    浄瑠璃   竹本重壽太夫
    同     竹本伊壽太夫
    三味線   鶴澤市造
    同     鶴澤才三郎

 『大詰 おほづめ 、堀屋形靜居間の場』 幕開くと、茲に侍女撫子 なでしこ 、女郎花 おみなへし 住ゐ居て、靜御前が和子 わこ の爲に苦勞し、心の休まる暇なき事を語り居ると、工藤の室磯屋、堀野の室夕顔と共に出來り、神に利生 りしやう を願ひし法樂舞も、其甲斐なく、梶原輩 など の讒口 ざんこう に依り、君の怒 いかり の烈 はげ しき事を嘆く、磯の禅師出來り、磯屋が来意を尋ね、靜も亦屛風を除きて對面すれば、磯屋は、夫祐經 すけつね 等が諫 いさめ をも用ひず、猶豫 よ 致さず成敗せよとの嚴命なりと語り、靜は此和子一人助けたりとて、大事の起る筈なきを謂ひ、此儘になし置き呉れよと賴む、安達淸經 きよつね が先程より返事を待居るとの報に、夕顔、磯屋は内に入り、後床 あとゆか の浄瑠璃になり、娘龍田 たつた 出來り、今一應和子の命乞せんと、淸經、磯屋の御所へ伺候せし事を告げて、親子を慰め、禅師は滿願の祈を上げんと鶴ケ岡へと赴く、後に龍田 靜より子を抱取 いだきと り、打囃し、堀親家 ほりちかいへ も亦一間の内より出來り、心にはさは思はずも、助命の沙汰のある事を語り、龍田を促し、奥へ入り、靜一人後に殘り、和子を抱き其薄倖 ふしあはせ を嘆く處へ梶原景茂家來引連れ入來り、即刻沈めにかけよとの嚴命なりと、先程の意趣返しに、遣らじと爭ふ靜を突退 つきの け、和子奪ひて立去れば、靜は気も狂亂し、跡を慕ひて去り行けば、引違へて禅師立歸り、和子の奪はれし事を聽き、又其後を追へば、堀親子は気の毒げに、是を見送る此模樣宜しく幕。
 『同返し、由井ヶ濵の場』 ツナギにて幕開くと、舞臺は由井ヶ濵浪打際、向ふは相模灘の書割 かきわり 、船人二人立掛り居て船の用意の整ひし事を語り、梶原の姿を認めて又船へと戻る、景茂馬上に赤兒を抱き、家來引連れ出來り、直 すぐ に船へと向ふ、間もなく靜髪振亂し、景茂の後を追ふて出來り和子を返してと呼 よば はれど、岸を噛む浪に隔 へだ てられて近寄れず、空しく身を悶えて悲しめば、禅師も亦走り出でゝ孫の命を危 あやぶ む内、景茂遂に赤兒を刺殺 さしころ したる體 てい に、靜は其場に泣倒れ、又立上り決心し、入水して果てんとする時、以前の西行出 い でゝ夫 それ を留め、哀別離苦の理を解き、辱世 じよくせ を去つて、無爲の家に住めと勸むれば、靜も始 はじめ て其悟 さと しに服したるも、尚和子の事を忘れ兼ね、夕日落ち行く海の上を望みて、空しく其影を追ひ、放心の體にてウットリとなれば禅師は抱止め歔欷 すゝりな き、西行は海に向ひ囘向 えかう をなす、此仕組にて幕。

 なお、上の写真の一番右は、絵葉書のもので、下の説明がある。

 帝國劇塲九月興行(西行と靜)


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