蔵書目録

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喜歌劇 「天国と地獄」 帝国劇場 (1914.10)

2020年05月20日 | 帝国劇場 総合、和、洋
    

 大正三年十月女優劇

      オツフエンバハ作 小林愛雄譯 ローシー指導
 第一 喜歌劇 天国と地獄 四場
      並木宗輔原作
      岡本綺堂脚色
 第二 時代劇 石橋山 二幕
      太郎冠者作
 第三 増補改訂 喜劇 唖旅行 四幕 五場
     Soda San in London   
 
 第一

  第一幕 テエバ附近牧場の場
       天国の場
  第二場 地獄鬼の邸内の場
       地獄の午餐会の場

 一 牧人     (アリステウス)(後にプルトー) 石井林郎
 一 音楽院長   (オルフォイス)         松山芳野里
 一 音楽院長の妻 (エウリデイーチェ)       原のぶ子
 一 輿論                        春日桂
 一 主の神    (ジユピター)           清水金太郎
 一 主の神の妻  (ユノ)              湯川照子
 一 地獄の鬼の下僕(ジョンスティック)       南部邦彦
 一 神の使    (メルクリー)           高田春雄
 一 眼の神    (モルフォース)         柏木敏
 一 戦の神    (マーチ)             岸田辰彌
 一 獵の女神   (デイヤナ)           天野喜久代
 一 愛の女神   (ヴエヌス)           花岡百合子
 一 愛の使    (クピツド)            澤モリノ
 一 智慧の神   (ミネルバ)           中山歌子
 一 地の神    (チベーレ)            石神たかね
 一 永遠青春の女神(ヘーベ)           河合磯代
 一 海の神    (ネプチューン)         小島洋々
 一 日の神    (アポロ)             菅雪郎
 其他諸々の神
    帝国劇場管絃楽部員

    オツフエンバハ作曲 小林愛雄譯 ローシー指導
第一 喜歌劇 天國と地獄 四場

 『テエベ附近牧場の場』

  音楽院長オルフォイスの妻は歌ひ乍 なが らその恋人なる牧人の前に花束を作り居る所へ音楽院長オルフォイス出て来り大に立腹して忽 たちま ち夫婦喧嘩となり、とど双方承知の上離縁といふことになり、音楽院長は退場すると、その妻の恋人の牧人(実は地獄の鬼)現はれ、音楽院長の妻と野を歩く折しも、音楽院長の仕掛けた蛇のためにその妻は足をかまれる。この時舞台は暗くなりて牧人は鬼の正体を現はし、音楽院長の妻を地獄へ伴つて退場、此に音楽院長出て来り妻の不在を喜び、早く己 おの が情人にこの事を知らせんとする所へ、輿論現はれ、天国へ行き主の神に妻を帰してもらへと命令する、院長は詮方なくその命令に従ひ両人共に飛行機に乗つて天国へ急ぐ件 くだり にて幕。

 『天国の場』

  諸神一同眠れる所へ鐘鳴り皆目を覚ませば、獵の女神出て来るに、主の神は獵の女神の不品行を責める。所へ神の使現はれ地獄の鬼の来訪を告げる。主の神は、弟の地獄の鬼が、地上より音楽院長の妻を奪ひ去りし事を責める折しも、諸神は天国の食物の悪しきに立腹して騒乱を起し攻め寄せると、鬼はこれを煽動する。此に主の神は一同の前に鬼の罪悪を告げれば、二三の神及鬼達交 かは るゞ主の神の悪徳を笑ふ。所へ輿論は音楽院長をつれて出て来り地獄へ行つてその妻の取戻しを請求する。主の神これを許可し諸神と共に地獄行と決定すれば諸神は乱舞して喜ぶ件 くだん にて幕。

 『地獄の鬼の邸内の場』

  元の音楽院長の妻は地獄の退屈を忍び兼ねてゐる所へ、鬼の家僕登場して口説けども応ぜず、所へ主人の鬼の帰館となり、音楽院長の妻は逃げ隠れる、主の神入り来り名刺を置いて退場したる後へ、音楽院長の妻出でゝ主の神が救ひに来りしを喜ぶ折から、主の神は一羽の蝉に化けて現はれ、音楽院長の妻は嬉しげにこれに戯れる、とゞ蝉は主の神なる由 よし を告げ二人にて逃れ出る、鬼は蝉の在処 ありか を家僕に問へど要領を得ず、鬼は怒つて家僕を土の下へと踏み落す、家僕は歌ひ乍ら奈落へと沈んで行く件にて幕。

 『地獄の午餐会の場』 

  諸神及酒の巫女の姿をしたる音楽院長の妻等は盃を揚げて酒を飲む。主の神は音楽院長の妻を伴ひ逃げ出さんとする時、輿論と音楽院長と現はれて妻を返せといふ。主の神は院長に向ひ「返すけれども條件がある、おまへは先に立つて決して妻を振返つてはならぬ、もし振り返れば妻を失ふぞ」といひ、音楽院長の行くを見済 す ます後 うしろ より足にて蹴れば思はず院長は振り返る、とその妻は主の神にとられて仕舞ひ、一同やんやと踊り狂ふ見えにて幕。

  秋の劇壇を彩 いろど る 
  帝劇一流の花形
 女優劇の権威 オーソリテー
  =他では眞似られぬ獨特の長所=
    帝劇作者主任 二宮文学士談〔下はその一部〕

 第一 喜歌劇 天國と地獄 

 といふ洋劇で、クレミウが作にかゝるオツヘンバツハ曲を小林君が譯され、帝劇専属の洋劇部員によつて演ぜられるもので、斯界の名手たる譯淸水金太郎君が声楽の天才家原信子嬢と中心に立つて、部員一同と総出で演ずるから、舞台面の変化が自由に作用されて、テエベ附近の牧場も天国たるオリムプス山上も、地獄の鬼の邸内も、地獄の午餐會も、すべて斯もあらうかと想像せられ得るだけに仕立てられて居る、そこへ名手が独特の妙技を振つて、作の全体を活躍させる邊 あたり は、他に真似も出来ない點であらう、

 なお、上の写真の一番右は、絵葉書のもので、下の説明がある。

 帝國劇塲(大正三年十月興行)喜歌劇(天国と地獄)地獄のご午餐會の場


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