ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

立ち話

2018-06-05 06:12:50 | 病状
 道のゴミ拾いを3年も続けていると、さすがに顔見知りが多くなりました。先週の日曜日、ゴミ拾いコースの道で出会った人もその一人です。私より少し年上の、70歳過ぎと本人は言っていました。今回は、そのときの立ち話を再現してみました。(誰がしゃべったのか記していませんが、内容から容易に察しが付くと思います。)
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「日曜日もやるっていうのはスゴいですね?! 全くのボランティアですよね?」

「そうです。持病のためもあって、・・・まぁ、実益と趣味とを兼ねてなんですが、趣味というよりもう病気ですね。一日でもこれをやらないと覿面に体調が良くないんですよ。なさけないことですが、これが仕事なら日当5千円でもやらないでしょうね(笑)。」

「体調に良い? 持病って何ですか?」

「糖尿病です。こうやって身体を動かしていれば血糖値の上昇を抑えておけるんで・・・。糖尿病薬も1日1回の1種類だけで済んでいます。ただ単に歩くだけのウォーキングに比べてもゴミ拾いの方がずっと効くんですよ。」

「私も、高脂血症と高血圧が持病なので薬が手放せない状態なんです。高脂血症の方は、病院を変えたときに一度薬を止めてみたんですが、やっぱり悪化しましてね。医者からは、薬を止めたデータがないから一生服用し続けなさい、と念を押されています。それ以来、ずっと続けているんですよ。」
(顔がくすんで見えるのは、どうやら病気のせいと思われました。)

「なるほど! 私も以前は高血圧もあって、高血圧だけでも3種類の薬を飲んでいました。最近は、全部が全部データ頼みの医者ですからね。医者が引き合いに出すデータというのは、何千人か何万人かの患者に薬を使った大規模臨床試験のデータのことで、実は製薬メーカーが主導して集めたものなんです。製薬メーカーって、薬を使ったらこんなに良くなるというものには何十億もの資金を出すのに、止めても問題ないというデータにはびた一文出さないんですよ。・・・こんなふうに医者に言ってみたら、すんなり薬の数を減らしてくれましたがね。」

「そりゃ尤だ! そんなに金がかかるんなら、中止したデータなどわざわざ採らないでしょう。・・・ということは、以前はもっと薬が多かったんですか?」

「以前は私も、高血圧、糖尿病、高脂血症と生活習慣病を3つも抱えていました。その挙げ句、狭心症にも2回なりましてね。そんな状態でしたから、全部合わせて9種類15錠もの薬を飲んでいました。それが酒を断ったら半年もしないうちに、糖尿病以外は全部正常範囲内に戻ったんです。もちろん、糖尿病も軽くなりました。そうそう、血圧がアルコールで高くなるのは有名な話なんですよ。」

「ほぉ、高血圧と高脂血症が・・・?! 酒を断って? しかも半年で?」

「お恥ずかしい話ですが、実は私、酷いアル中だったんです。酒を断って4年半経ちます。」

「どう見てもそうは見えませんね。とても健康そうに見えますよ。それはそうと、そもそもアル中って、どんなふうだったらアル中と決まるんですか? 私も酒が好きな方なんで・・・。」

「先ず、飲み始めたら止まらなくなることですね。この一杯で止めようと決めても止められない、そしてずるずる飲み続けているうちに寝てしまう。アル中って、酒乱型の人よりもこういう寝型の人の方が圧倒的に多いんです。」

「そんな人、酒飲みなら珍しくないですよね? その辺にゴロゴロいますよ。」

「その通りです。そのうち離脱症状と言われる禁断症状が出て来たらアウトです。朝から、というよりも昼近くになると、掌にジットリ汗をかいて手が滑るぐらいになるとか、手が震えて字が書けなくなるとか、・・・昼近くというのはアルコールが身体から抜ける頃合いなんです。こんな離脱症状が出て来たらアル中で決まりです。本人が最初に自覚するアル中の症状ってこんなものです。」

「実は私、今飲んで来たばっかりなんですよ。酒は百薬の長と言われてますよね? そんなことを言い訳に毎日飲んでいるんですが、幸いまだそんな症状はないですし、このところ歳のせいか飲む量もめっきり少なくなりました。今、こうして話を聞いていたら、酒を断つなど劇的に生活習慣を変えないといけないなぁ! 要はそういうことですよね?」

「製薬メーカーに勤務していたから言えることですが、毒でなければ決して薬にはなりません。酒が百薬の長だとしたら、酒は毒の中の毒ということですよ。酒を止めたら薬ナシでいけるかもしれませんよ!」

「ところでゴミ拾い、一日何時間ぐらいやってるんですか?」

「長くて6時間ぐらい、まぁ大体2時間以上はやっています。もちろん、休憩を挟んでの話です。」

「身体に良さそうだから今度、私もやってみようかな」
彼はそう言って、その場を離れていきました。お愛想とは言え、こう言ってもらえるのは嬉しいものです。

「助かります。是非、そうしてください、楽しみにしていますよ。」

         *   *   *   *   *
 一言でアル中を説明するのは難しい、つくづくこう思い知らされました。果たしてこんな立ち話で、アル中という病気が理解してもらえたのか甚だ心許ない気持ちです。

 それよりも感慨ひとしおだったのは記憶力がここまで戻ったことです。断酒してから1年ほどは、たった今聞いた話でも左から右に抜けていく状態でした。だからその当時は、こんなふうに会話を再現することなど至難の業、夢のような話だったのです。



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