ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

忘れてはいけないこと 忘れられない言葉(下)

2016-06-10 05:30:07 | 病状
 “喉元過ぎれば 熱さ忘れる” どんな辛い体験でも過ぎてしまえば忘れるもの。これがあるから、過去にどんな辛い体験があっても、いつまでも引き摺ることなく前向きに生きられるのかもしれません。が、アルコール依存症者にとってこの言葉は、命取りとなる再飲酒の誘惑に用心せよとの戒めでもあるのです。
 生まれて初めて断酒に取り組んで、そのまま長く続けられたという大酒飲みはいないはずです。もしいるのなら、その人はアルコール依存症ではなかったのでしょう。大酒飲みなら誰しも、ブラックアウトでとんでもない不始末をしでかしたとか、肝臓をやられたとか、警察沙汰か健康問題で一度は禁酒を決意し、実際に試みたことがあるはずです。大抵はせいぜい1週間程度、何とか禁酒を持ち堪えた後、もう大丈夫だろう(?)と再飲酒してしまったのではないでしょうか。そして、禁酒以前よりもお酒の量が遥かに増えてしまった経験の持ち主でもあると思います。

 アルコール依存症になった人たちは、まさにそんな経験を何回もした人々です。断酒歴の長い人でも一回目の酒断ちで成功した人はいません。何回かの断酒 ―― 再飲酒(SLIP)を繰り返して、やっと継続断酒に辿り着けたという人たちです。

 断酒歴の長い人は、何を心掛け、どのように用心してきたのでしょうか? 彼らに共通しているのは、挫けそうになる気持ちをしっかり支えてくれた大切なものを持っていることです。大切なものとは、“忘れてはいけないこと 忘れられない言葉” のことです。

 酒に溺れた挙句の家庭内不和 ⇒ 別居・離婚・家庭崩壊 ⇒ 一人暮らしで身体的・精神的にボロボロの状態 ⇒ 仕事も財産も失う。大方のアルコール依存症者が共通して辿った道筋です。このような状況での “忘れられない言葉” が酒害体験で何気なく語られる場合があります。彼らの記憶に残り、体験談で語られた “忘れられない言葉” を挙げてみます。

「死ぬのはいいが、離婚してからにしてくれ!」
再飲酒からすぐに連続飲酒状態となり、夫に「飛び降りて死にたい」と口走ったときに言われた言葉だそうです。この言葉で我に返ったと語っていました。

「オトン、これが最後だ!もう二度とないよ!」
ホームレスにまで身をやつした挙句、息子の手配でどうにか精神科病院で3ヵ月間の入院加療後、退院時に息子から告げられた言葉だそうです。その後、一度も会えないでいるそうです。

 お分かりのように、これらはいずれも家族に見放されたとき、“忘れられない言葉” として心に突き刺さったものです。これらの言葉がキッカケで、本気で断酒に取り組むことになったと語っていました。

 見放されたときの言葉の一方で、自分は信用されていると実感できたときの誉め言葉を “忘れられない言葉” としている事例もあります。心の底から断酒を続けようと決意を固めるに至った嬉しい言葉だったようです。

「父さん、普通に戻れてよかったね!」
専門クリニックに毎日通院し、酒を断ってから半年余り経て、久しぶりに再会できた愛娘からかけられた嬉しい言葉だったそうです。顔つきや話しぶりから娘さんに分ってもらえたのでしょう。こんな場面でこんな言葉をかけてもらえたら、誰でも嬉しいハズです。

「抗酒剤? もう止めていいですよ!」
専門クリニックに毎日通院していたとき、主治医から言われた言葉だそうです。抗酒剤の服用期間は普通1年のハズですが、1年半も断酒が続いているにもかかわらず、なお止めてよいと言ってもらえない状況で、主治医に恐る恐るお伺いを立てたときの返事だったそうです。「自分は信用されている」と心に沁みたと語っていました。

 以上のように、家族から見放されたときのキツーい言葉か、あるいは自分は信用されていると思えた言葉が “忘れられない言葉” になったようです。心の底から「酒を止めるんだ」という固い覚悟がなければ断酒を続けることは出来ません。“忘れてはいけない” 過酷な酒害体験があってこその “忘れられない言葉” です。

 アルコール依存症で断酒歴の長い人々でも、ついゝゝ普段は忘れがちのようです。自助会参加がしばらく途切れると、気の緩みに気付くと言います。定期的な自助会参加によって “忘れてはいけないこと” や “忘れられない言葉” を呼び起しては、酒席などの飲酒環境を避(よ)けるよう、常に用心を怠っていない人々なのだと思っています。そうすることで、危うい場面を何度も何度も乗り越えて来ている人々なのです。

「AAのミーティングに出たお蔭で酒が止まっている。」
「(AAの)仲間の顔や話を思い返すことで酒を思い止まることができた。」
自助会AAの体験談でよく聞かれるメンバーの正直な言葉です。傍から見れば、AA持ち上げのヨイショとも思え、その場のウケを狙ったと受け取られかねない言葉です。意地悪な部外者なら、「本当かなぁ?」と鼻白む場面なのかもしれません。

 2年間AAに通い続けた今の私には、掛け値なしで胸の内を正直に語った言葉だと思えます。かつては話し手がどんな出来事を酒害としているのか、話のエピソードの方に関心があったのですが、最近はどんな気持ちで話しているのか、生き方や考え方の方に関心が向き始めています。だからでしょうか、話し手が何気なく漏らした言葉が耳に残るようになったのだと思います。このように体験談が聞ける場は、“忘れてはいけないこと 忘れられない言葉” を気付かせてもらえる貴重な場になっています。


 その気になりさえすれば、怒りも、不安も、悩みも、グチも、ボヤキさえも吐き出し放題できるのがAAのミーティング。・・・あくまでも話し手が、腹をくくって掛ればの話です。こうなれたら、しめたものです。鬱憤晴らしで平常心を取り戻せること請け合いです。



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コメント (4)
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