社民党 国立市議会議員 藤田たかひろのブログ

6月議会は、6月6日からです。

『いつか、きっと』 (つづき)  第72回選手権大会 丸亀高校-平安高校より

2016年09月28日 23時56分12秒 | Weblog
そして、

空振りの三振。

何も君が喫したのではない。

君が投げた渾身の直球に、

打者のバットは空を切った。

0-0で迎えた9回の裏、サヨナラ負けのピンチは回避された。

そして、ピンチの後には、チャンスがあるもの。

延長11回の表、

2死ながらも、走者は二、三塁、

バッターボックスに3番打者。

その彼がはじき返した打球は、だれもいない左中間に飛んだ。

いよいよ均衡やぶれるかと、皆が思った瞬間、

右翼手、打球に向かってダイビングキャッチ。

白球は、そのグラブに収まった。

劇的な得点かと思いきや、劇的な右飛に変わり、

またもや無得点。

しかし、

君のチームは

もう、くじけなかった。

攻める14回の表、2死無走者でも、

6番打者は安打で出塁すると心に決めた。

バットを短く持って、シャープなスイングを心掛け‥。

そして、投げられたのはカーブ。

打者はきっちりたたいて振りぬくと、

打球は右中間へ。

外野手2人の間に見事に落ちた。

打者は進塁を試みる。

中堅手は進塁を阻もうと試みる。

中堅手、回り込んで打球をつかむとすぐさま返球。

打者走者は全力で二塁を目指している。

その塁上に継球、届いて。

打者走者はスライディング。

触球と触塁を競う展開に、

塁審、セーフの宣告。

打者走者がわずかに勝って二塁打となった。

2死無走者から、突然、得点の機会。

もう、迷いはなかった。

続く打者もバットを短く持って構えると、

外角高めの投球を振りぬいた。

打球はラッキーゾーンにはね返り、

クッションボールの処理の間に

二塁走者が生還。打者走者は三塁まで達して、

1点勝ち越し。

この試合、

両軍通じて、初めて

得点表示板に点数が記録された。

でも、人生こんなものだから

あと1点ほしい所で、後続が倒れた。

そして、守るその裏、

2死無走者から、

相手に同点のピンチを作られた。

君のチームが2死無走者から、6番打者が

安打で出て1点取ったように、

相手チームも2死無走者から、6番打者が安打で出塁。

マウンド上の君は、

ここまできたら、引こうにも引けないと

意を決した。

     (つづく)

 第72回選手権大会 丸亀高校-平安高校より。人物の生い立ち、心理描写などは虚構。


『いつか、きっと』 第72回選手権大会 丸亀高校-平安高校より。

2016年09月26日 21時50分32秒 | Weblog
「いつか、きっと」。

 その言葉が君を支えていた。

 たとえ今はだめでも、いつかは大きな機会を手に入れて、夢が叶うような、

 今までの苦労も、努力もすべて報われるような、

 劇的な結末があると

 君は信じた。

 だから、どんなにつらい練習も頑張ったし、

 そろそろ、まじめにやるのをやめようかと何度

 思っても、君は踏みとどまった。

 ここでやめたら、すべてが水の泡になる。

 そして、ここまできたら、引こうにも引けないと

 君は意を決した。

 でも、人生こんなもんだから、意を決しても転機は訪れなかったし、

 自分の未来が開ける訳でもなかった。

 練習帰りの夜道、君はふと空を見上げた。

 星が、いくつも光って見えた。

 「あれは希望の数だ。」

 君は心の中で、わざとそんな風に思ってみた。

 夜空の星に手が届く訳ないように、希望も簡単には叶わない。

 だから、

 「いつか、きっと」。

 その言葉が君を支えていた。

 この試合、「きっと」の数はそこそこあったけど、

 肝心な「いつか」が全くなかった。

 塁上に走者は出るものの、あと一歩及ばず、

 すべての「きっと」は不可能に変わった。

 ピンチの後に、チャンスは来ると言うが、

 そのチャンスをものにできるとは限らない。

 それどころか、ものにできないチャンスの後には

 でっかいピンチが待ち受けていた。

 「いい加減にしろよな」

 と、くやしい場面もたくさんあった。

 でも、発想を転換したら

 大したことなかった。

 所詮、いつもの自分と変わらないのだ。

 変わらない自分は嫌だけど、

 君は、いつも通り訪れるピンチに直面し、

 それを乗り越えるだけ。

 つまり、

 所詮、いつもの自分と変わらないのだ。

 そうやって、いつも頑張ったから、

 いま、

 君は、甲子園のマウンドに立っている。

 まじめに頑張っている君に、

 劇的なハッピーエンドはまだない半面、

 ただの終わりもなかった。

 味方が得点を挙げない分、君は辛抱強く投げた。

 この日、

 ピンチは、守る1回の裏から早速。

 いきなり1死二、三塁とされたのだ。

 しかし、無失点で切り抜けた。

 ピンチのお返しとばかりに、2回の表、

 君のチームは安打と相手の失策で出塁し、

 2死一、二塁、

 得点圏に走者を進めた。

 しかし、

 後続は

 空振りの三振。

 君の人生を描いたような、

 ピンチの後のチャンスに

 空振りの三振だった。
 
 結局、

 ものにできないチャンスの後には

 でっかいピンチが待ち受けていた。

 守る4回の裏、先頭打者に三塁打を打たれて、

 無死

 三塁。

 だれがどうみても大ピンチだった。

 でも、

 発想を転換したら

 大したことなかった。

 君は、いつも通り訪れるピンチに直面し、

 それを乗り越えるだけ。

 だから君は、後続を打ち取り、

 この回も無失点で切り抜けた。

 「いつか、きっと」。

 その言葉が、君を支えていた。

 でも、

 この試合、「きっと」の数はそこそこあったけど、

 肝心な「いつか」が全くなかった。

 塁上に走者は出るものの、あと一歩及ばず、

 すべての「きっと」は不可能に変わった。

 それでも、得点0-0で迎えた、攻める8回の表、走者は三塁に進んだ。

 あと一歩で、均衡を破る事ができる。

 回は終盤。

 君は、今までの苦労や、努力がすべて報われるような

 絵に描いた展開を期待した。

 大人は、努力は裏切らないとか、あきらめなければ夢は叶うとか言うが、

 それが本当かどうか試されるような瞬間だった。

 打者、球数(ボールカウント)に余裕があるため、相手を動揺させようと画策。

 投手が投球動作に入った瞬間、バットをねかせ走軽打(スクイズ)の構えを見せた。

 ところが、投手、堂々と変化球を投げる。

 見せかけであることを読んで全く動じない。

 打者、内角低めに投じられた変化球をギリギリまで目で追いバントのしぐさ。

 悪球と分かると、バットを引いてカウントを稼いだ。

 ところが、

 それを見ていた三塁走者は、バントをするもんだと塁を飛び出している。

 捕手、見逃さず三塁へ牽制球。

 走者、頭から滑り込んで帰塁するも間に合わず

 牽制死。

 相手を動揺させようと画策したら、味方が引っかかって

 チャンスがつぶれた。

 そして、

 ものにできないチャンスの後には

 でっかいピンチが待ち受けていた。

 守る9回の裏、

 三番、四番打者を打ち取り、2死無走者としたのに、

 後続二人に連続安打を浴びて、

 一転、

 サヨナラ負けの事態を、

 迎えた。

 まるで、君の人生を描いたようなもの。

 要所をしめながらも、

 あと一歩のところで力及ばず

 ピンチが現れ、君の未来に立ちふさがるようなもの。

「いい加減にしろよな」

 でも、

 まじめに頑張っている君に、

 劇的なハッピーエンドはまだない半面、

 ただの終わりもなかった。

 
              (つづく)

 第72回選手権大会 丸亀高校-平安高校より。人物の生い立ち、心理描写などは虚構。