goo blog サービス終了のお知らせ 

そして、君は変わった

2014年05月29日 23時16分19秒 | Weblog
だから、君は

 もう、

 あきらめようかと思った。

 君はそれまで自分の事を、greatな奴だと思っていた。

 だから、greatにふさわしくないものは

 見向きもしなかったし、

 レベルの低いものに手を出すなんて、自分のgreatが許さなかった。

 
 栄光への道も、一発逆転への道も、単純なものは嫌だった。

 だから、

 打てば安打になるような投球に対しても、わざと見送ったりして、

 ボールカウントを(人生を)悪くした。

 劇的で、ドラマのような展開を望んだから、

 普通の人が歩もうともしない、いばらの道を行くのが好きだった。

 でも、

 悲劇的なことばかりで、普通の人とは見劣りする自分の姿があった。

 現実は、ドラマのようにいかなかった。

 そのたびに、君はくじけそうになった。

 色々なものに立ち向かい、

 普通の人とは違う人生を送っているのに、なぜか手に入らないものが

 あった。

 もう面倒くさいから、適当にやるか

 と思い、君は自嘲気味に、

 甲子園球場のど真ん中にある得点掲示板を見た。

 3回の裏、君のチームは、

 1-9とリードされていた。

 「甲子園にコールド負けってあったっけ?」

 なんて事を心の中で呟いて、吹き出しそうになった。

 そんな君に打順が回ったのは、

 2死1,2塁の時だった。

 前の打者が死球で歩くのを、緊張感なく見送り、打席に向かった。

 視線の先に、ふと、アルプススタンドが見えた。

 8点差という、大きな壁の前の

 小さなチャンスに、アルプスは期待していた。

 こんなに得点差があるのに、ブラスバンドは変わらぬ音量。

 メガホンをたたき、声援を送ってくれる人もいた。

 こんなにも、ぶざまな僕らを、応援してくれる人たちがいるのか‥。

 君は、
 
 あきらめたけど、もう一度、

 頑張ろうと思った。

 そして、

 君は変わった。

 頭によぎったのは劇的。

 1915年に始まった夏の甲子園で、

 8点差を逆転したチームはない。

 「じゃ~ん!」

 頭の中でドラマを組み立てたら、思わず笑みがこぼれた。

 君は打席に立って、大きく吠えた。

 史上初の8点差の逆転劇。

 しかも、8点差をつけられたチームが

 この後、逆に8点をリードする

 greatなドラマ、

 ここから。

 *第79回大会 市立船橋高校×文徳高校より。人物の生い立ち、心理描写などは虚構。
 (最終的に、試合は17-10で市立船橋高校が勝利。)

 

 

 

 

 

 


 



 

運命は君を選んだ

2014年05月22日 00時30分16秒 | Weblog
君の努力が

 ちっとも実を結ばずに、

 くやし涙を浮かべていた日々が

 ようやく終わるような、

 過去を取り戻せるような、

 色々な予感は、ただの気のせいで終わろうとしていた。

 君が放った打球、

 左翼手のもとへ。

 レフトライナー。

 0-7から一気に追い上げた8回の裏の攻撃が、ここで終わる。

 だから

 君は願った。

 お願い!

 この想い、

 とどけ。

 甲子園は不思議なところだ。

 絶体絶命のピンチのそばには

 起死回生のチャンスがあったりする。

 この日、

 運命は君を選んだ。

 捕球に入った左翼手、

 突然

 転倒。

 打球は誰もいない左翼へ転がって行った。

 1塁走者が還り、同点。

 君の想いが、

 届いた。

 後続は倒れたが、

 7-7で迎えた9回の裏、

 君のチームはサヨナラ安打で勝利。

 8回1死まで、7点リードされていた試合をひっくり返した。

 さぁ、

 なかなかたどり着けなくて、くやし涙を浮かべている

 あなた。

 起死回生のチャンス、

 これから。

 *第75回大会 徳島商業高校×久慈商業高校より。心理描写などは脚色。
 
 (前日のつづき)

 

 

 

 

 

 


 

お願い!この想い、とどけ

2014年05月21日 01時34分29秒 | Weblog
 君が放った打球、

 左翼手のもとへ。

 レフトライナー。

 「この回のアウト、

 3つのうち、

 2つも僕が喫するのか。」

 ‥‥‥。

 だから

 君は願った。

 お願い!

 この想い、

 とどけ。


 憧れの

 甲子園の舞台に立ったのはいいけれど、

 一方的な展開だった。

 1回の表にいきなり3点を取られ、

 続く回も失点。

 君は、「1イニングに1点ずつ返せば同点になるよ」とチームを鼓舞したが、

 7回を終わった時点で、7点差をつけられた。

 迎えた8回の裏。

 1番からの好打順。

 君はバッターボックスに入った。

 絶対に出塁して、安打でつなぐしか方法はない。

 君は心を決めてバットを振った。

 しかし、

 遊撃手へのゴロに倒れた。

 続く打者、鋭い当たりを放ち

 中堅手の頭上を越える二塁打。

 対打機関にわずかな動揺があったのか、3人目の打者への投球に捕手が後逸。

 1死3塁となった。

 そして、

 左前安打が出て、君のチームはようやく

 1点を返した。

 その徳島商業高校打線は、ここから

 勢いをさらに増し、

 後続が連続安打。

 4-7とした。

 1死のまま、走者は1塁と2塁。

 7人目の打者は

 遊撃手へのゴロとなった。

 1塁走者が2塁でアウトにとられ、

 送球が1塁へ。

 懸命に走った打者はセーフだった。

 機会はまだ、ついえなかった。

 2死、1塁、3塁となり、代打が送られた。

 その代打は期待に応え、右前安打。

 5-7となった。

 そして、

 この回、

 君に2度目の打席が回った。

 走者が2人いる。

 1塁走者が生還すれば

 同点。

 君が倒れれば、

 8回の裏の攻撃が終わる。

 強い緊張に、

 思わず倒れそうになった。

 でも、

 心を鼓舞するため、君は何回も素振りをして

 バッターボックスに入った。

 投手は投手板に足をつけ準備動作。

 その後

 投げたのは、

 外角高め。

 君が放った打球、

 左翼手のもとへ。

 レフトライナー。

 「この回のアウト、

 3つのうち、

 2つも僕が喫するのか。」

 ‥‥‥。

 だから

 君は願った。

 お願い!

 この想い、

 とどけ。

 *第75回大会 徳島商業高校×久慈商業高校より。心理描写などは脚色。

 (夜も遅いので次回に続きます。)