今日は国際関係アナリスト・北野幸伯さんのメルマガからお伝えします。
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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
28年モスクワに住み、一時帰国する頻度は、平均年1回でした。
そのたび思うのは、「日本は、実に不思議な国だ」「日本人は不思議な民だ」ということです。
なぜそう思うのか、一言で説明するのは難しい。しかし、あえて説明を試みれば、日本人は、
「和を崩さないために、自己主張を、極めて自然に抑えることができる」
ということでしょうか。
皆さんの中にも、外国に行き、「みんな自己主張をバンバンするので驚いた!」という方がいるのではないでしょうか?
モスクワでもそうです。
みんなが「人生は戦いだ」と認識しているので、何かあれば「自分の正当性」を証明するために必死で戦います。
ところが、日本人であれば、どっちが悪いかはともかく、「円満解決」を目指すことが多いようです。結果、ケンカも訴訟も少ない。(あることはありますが。)
私は、「この日本の特殊性の正体は、何なのだろう?」「どこからきたのだろう?」と考えていました。
▼円の思想とは?
最近、明治学院大学・武光誠教授の新刊
●日本人なら知っておきたい日本 武光誠 (詳細は→ https://amzn.to/2ot51nr )
を読みました。
実に興味深い本でした。
武光教授は、日本の大昔からの特徴を、こんな風に解説しておられます。
●精霊崇拝からつくられた「円の思想」
縄文人は円形を好んだ。そのために縄文土器の文様には、円を基調としたものが多い。
円形を好む縄文人の発想を、「円環状世界観」と呼ぶ考古学者もいる。
かれらの円環状思考とは、このような考えを示すものである。
「自然界には区切りがなく、自然界ではすべてのものが互いに深くつながって存在している」
春にフキノトウ、ワラビなどの山菜が採れ、秋には柿、栗などの果実やさまざまな茸きのこが得られる。しかし春が終わると、山菜が滅んでしまうわけではない。
秋の終わりに果実が落ちて茸が見られなくなるが、悲しむことはない。
夏が終われば秋の山野の恵みが、冬が終われば春の食物が現れる。
縄文人は、人間とは、このような終わりのない自然界の恵みによって生かされている存在なのだと考えた。
だから縄文人は、円形の広場をつくり、そこは自然をつかさどる神々を祭る場とした。
<私は、このような集落を営む縄文人の思想を「円の思想」と呼んでいる。>
「円の思想」
私は、この言葉、はじめて聞きました。もう少し具体的にいうと、なんなのでしょうか?
<それは精霊崇拝をふまえた、次の三点の教えから成るものである。
1、自然を大切にする。
2、人間を大切にする。
3、明るい気持ちをもって人生を楽しむ。
縄文人は、この三点を心掛ければ、自然界を動かす精霊つまり神々の恵みを受けられると考えていた。>
この三つ、なんだか今の日本にも通じる気がします。
たとえば、
・自然を大切にする
外国人が日本に来て驚くのは、緑の多さですね。
東京から実家の長野に帰る電車から見える景色は、80%ぐらい緑の山と森林です。
・人を大切にする
妻と娘が、日本のお店で服を買った。
すると、紙袋の上にビニール袋をかぶせてくれた。
妻が、「これは?」と聞くと店員さんは、「雨が降りそうなので」と答えた。
妻は、感動して泣きそうになったそうです。
・明るい気持ちをもって人生を楽しむ。
日本人は、どこにいっても笑顔ですね。もちろん、全員がそうとはいいません。
それでも、全体的にみると、ポジティブなエネルギーが満ちています。
▼円の思想と神道
さて、「円の思想」は、その後「神道」に進化していったそうです。
<大和朝廷のもとで、「円の思想」は神道へと発展する。
極めて古い時代に生まれたこの神道的発想は、今でも日本人の思考の底に受け継がれていると考えてよい。
日本人は近年まで、自然の豊かな山や原野、海、川などには神様が住むと考え、そこの自然を荒らさないように努めてきた。
自然は、人間の力で克服するものではなく、あるがままの自然を受け入れてその恵みをもらうのが良いとされてきたのだ。>
<一方が正しくて、もう一方が誤りだとする考え方は、日本にはなじまなかった。
そのため知識人の多くは江戸時代の終わり頃まで、
「私と違う立場をとる者も、退けずに上手に交流していこう」とする発想をとった。
私と違う立場の人間にも何か良い部分があるとして、相手を尊重したのだ。
このような形で自然と人間を大切にしてきた日本人は、
「つまらない争い事はどちらのためにもならない」と考える。>
嗚呼。
ここに、私の長年の疑問への答えがありました。
事件が起こった。
外国では即座に争いがはじまり、どちらが善なのか証明するために全力を尽くさなければならない。
ところが日本では、なぜか両方、「どうもすみませんでした」と詫びている。
そして、双方、円満解決を目指して話し合いが開始される。
▼円の思想が、世界を救う?
こういうすばらしい国で育った日本人が外国に出る。
当然だまされることになるでしょう。
だから、「グローバル化の時代。日本人もしっかり自己主張しましょう」となる。
ホントにそうだと思います。
一方で、「人生は戦いだ」という外国の価値観と、「両者の主張の違いはともかく、仲よくやっていきましょう」という日本の価値観。
「どっちが幸せか?」といえば、絶対日本の価値観の方がしあわせだと思います。
たとえば今、世界には「自己主張の強いリーダー」が目立っています。
筆頭は、トランプさんでしょう。その次は、プーチンさんでしょう。
習近平は、「孫子教徒」なのでもっと巧みですが、それでも「中国の夢」「南シナ海は、大昔から全部中国のもの」などといっています。
世界では、争いが絶えず、心配、不安、恐怖などが満ちている。
もし、世界に日本の「円の思想」がひろまれば、どうなるでしょうか?
キリスト教とイスラム教の争いは、なくなるでしょう。
キリスト教とユダヤ教の争いは、なくなるでしょう。
ユダヤ教とイスラム教の争いは、なくなるでしょう。
他国の領土を奪おうとする試みは、なくなるでしょう。
私は、いつも思います。
「あまりに善良な日本人が、世界の過酷なルールを知ることは不可欠だ」と。
その一方で、「日本が世界化するのではなく、世界が日本化すれば、平和が訪れるのに・・・・」と。
皆さんは、どう思われますか?
どんな世界を孫たちに残したいですか?
私は「円の思想」がひろがった世界を残したいと思います。
「円の思想」
メルマガでは、詳述できませんでした。
詳しく知りたい方は、こちらをご一読ください。
名著です。
●日本人なら知っておきたい日本 武光誠 (詳細は→ https://amzn.to/2ot51nr )
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「円の思想」とは、対極にある世界。
そこでは、日々「熾烈なだましあい」が行われています。
「この世の実状」を知りたい方は、こちらをご一読ください。全部わかります。
●中国に勝つ日本の大戦略 北野幸伯 (詳細は→ http://amzn.to/2iP6bXa )
以上です。
---owari---
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