我が国の歴史は、すでに解答を用意している。
(皇統の「安全装置」)
史実を踏まえるなら、現在のように、愛子様の世代で男系男子がいない場合、我々の先人はどうしたのか、という事も調べておく必要がある。さすがに125代も続いている皇室の歴史には、このような危機が何度もあり、実はそれに対する「安全装置」はすでに皇統に組み込まれているのである。
前節で紹介した後桜町天皇は、甥の後桃園天皇が12歳になられた時に譲位された。しかし、後桃園天皇がこれまた21歳で病没されてしまい、その年にお生まれになった皇女・欣子(よしこ)内親王しか残されていなかった。
この時に、第113代東山天皇の曾孫(ひまご)にあたる閑院宮家のまだ8歳の祐宮(さちのみや)殿下を迎えて、世継ぎとした。第114代・光格天皇である。光格天皇は欣子(よしこ)内親王を皇后に迎えられている。
光格天皇と先代・後桃園天皇とは7親等もの隔たりがあり、家系は約百年も前に分かれている。現代の感覚で言えば赤の他人である。しかし、何親等離れようと、男系である以上、皇統はつながっており、皇位につくことができる、というのが、わが国の伝統的な考え方であった。
同様なケースは、第26代継体天皇、第102代・後花園天皇にも見られる。継体天皇は、先代・武烈天皇が崩御されたとき、皇子も兄弟もなく、約200年も前の第15代・応神天皇の6世の子孫にあたる57歳の男大迹尊(おおどのみこと)が越前から迎えられて、即位された。先代とは10親等も離れている。後花園天皇も、先代・称光天皇が28歳の若さで崩御されたとき、二人の皇女しかいなかったので、8親等離れた立場でありながら、跡継ぎになられた。
(「万世一系」のY染色体)
このように直系の男系男子がいない場合は、どれほど離れていようと、傍系の男系男子を選んで、世継ぎにするというのが、皇室の伝統的ルールであった。逆に、男系男子の後継者はいるが、まだ幼いので、成長するまでの中継ぎをするのが女性天皇の役割であった。
しかし、我々の祖先は、なぜそれほどまでに男系男子にこだわったのだろうか。それは血筋とは、男性によって伝えられる、という信仰があったためであろう。これは迷信だろうか?
現代の遺伝学は、それに相当する法則を発見している。性染色体はX染色体とY染色体の2種類があり、男性はXY、女性はXXからなる。この二人から生まれたこどもは、父親のX、Yのどちらかと、母親の2種類のXのどちらかの組合せを持つ。
男の子は父親のYと母親のどちらかのXを持つ。したがって、Y染色体は代々男親から男の子へとかならず継承されるのである。女の子はX染色体しか持っていないから、将来他の男子と結婚して、男の子を産んでも、その子のY染色体は自分の父親のものではない。だから女系ではY染色体は伝わらないのである。
「万世一系の皇統」とは、今上陛下や皇太子殿下、秋篠宮殿下が持たれているY染色体が、遠く後醍醐天皇や天智天皇、聖徳太子や日本武尊、そして初代・神武天皇まで遡ることができる、という厳然たる事実なのである。
愛子天皇が一般民間人と結婚されて設けられた女系男子が即位したら、この万世一系のY染色体の系統が断絶してしまう。2千年もの間、我々の先祖がなんとか維持してきたこの伝統を、我々の世代が無知ゆえに破壊することは許されるのだろうか?
(「安全装置」としての宮家)
現在の皇室に男の子が生まれず、男系男子が途絶えるような場合は、どうしたらよいのか。上述したように我々の先祖は解答を示してくれている。傍系で何親等離れていようと、同じY染色体を持つ男系男子を探し出して皇位を継承して貰えばよいのである。
いや、探し出す必要はない。こういう場合に備えた「安全装置」として戦前は11の宮家があった。遠く室町時代に創設された伏見宮家の系統であるが、男系として皇室と同じく神武天皇以来のY染色体を継承されている。戦後、占領軍の命令で皇籍離脱を強制され、今は民間人となられているが、現在も8宮家が存続し、久邇(くに)、賀陽(かや)、朝香、東久邇、竹田の5家に男系男子がおられることが分かっている。
これら男系男子を持つ旧宮家は皇族に復帰していただき、万一、今後とも皇室に男系男子がお生まれにならない場合は、旧宮家から男系男子を次々代の天皇としてお迎えする、というのが、わが国の伝統に沿ったあり方である。さらに、光格天皇の時のように、愛子様(かなわなければ、眞子様、佳子様)には、その方の皇后陛下になっていただければもっと良い。
60年も前に皇籍を離脱した旧宮家の復活などというと時代錯誤から考える向きもあろうが、そもそも旧宮家を廃止したのは皇室弱体化を狙った占領軍の指導によるものであり、日本の歴史伝統に反した行いであった。
また宮家創設にかかる費用を心配する人もいるが、現在の国家予算からは宮家当主に3千万円程度、妃殿下にはその半額が支払われているに過ぎない。1家5千万程度で5家復活したとしても3億円にも満たない。せいぜい官僚30人分程度の費用でしかない。
宮様が増えれば、安全装置としての役割以外でも、外国の賓客の応対や、慈善団体や公共団体の名誉総裁など現在の皇室のご負担を軽減しつつ、いっそうの充実を図ることができよう。30人程度の官僚とは比べものにならない効果が期待できる。
(愛子皇后と日本の幸せ)
21世紀も暮れようとする頃、ある宮家から迎えられた第127代天皇と愛子皇后のご一家は、幸福な生活を送られていた。皇太子殿下はすでに50代になられ、天皇のご名代としてしばしば外国訪問もされて、国際的にも敬愛されている。民間から上がられた妃殿下との間にもうけられた二男一女の皇孫殿下たちは、それぞれすでに成人されて、福祉団体や学術団体などの名誉総裁の役職を果たされている。
老壮青三世代そろった賑わしい皇室の動きに刺激され、国民の各年代層も活発な活動を続けていた。老人層は学術研究や芸術に精を出して、世界中で活躍していた。壮年層は最先端の科学技術と洗練されたデザインから生み出される車や家電製品などを生み出し、"Japan Cool"として、世界市場で尊敬される地位を築いていた。若年層は国際的なボランティア活動やスポーツで、日本の存在感を際だたせていた。
また皇室が参加される自然保護や伝統文化保存の活動も盛んになり、日本列島は美しい自然の中に豊かな文化を保存する国として、環境破壊に悩む各国の見習うべきお手本とされていた。
世界の各国民は、改めて2千年もの間、日本国民が代々の先祖から継承してきた皇室制度という深い知恵を羨むのだった。
(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)
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以上、伊勢編集長のご説明は、明快であると私は思っています。
しかし、マスコミに洗脳された人々は、今の時代は愛子天皇が一般民間人と結婚されてお生れになった男子が即位しても、問題ないと、男女同権の立場から言っても、異論はないと言う。
しかし、これこそが、天皇制廃止を目論む左翼やフェミニスト達の戦術に愚弄されている姿であり、もっとさかのぼれば、宮家を廃止し、皇室弱体化を狙った占領軍GHQの戦略でもある。
マスコミは「女性天皇賛成論」で国民を、まず誘導し、皇室典範が改定されて、愛子天皇が一般民間人と結婚されたのちには、今度は「女系反対論」で天皇制廃止を目論む戦術なのです。
古代から、男系男子が歴代の天皇の血統につながることがなぜ、わかっていたのか。遺伝子もY染色体も分からない時代でありながら、天皇の男系男子には、遠く後醍醐天皇や天智天皇、聖徳太子や日本武尊、そして初代・神武天皇まで遡ることができると知っていたこと自体が驚きである。女系男子はこの「万世一系の皇統」を壊すものであり、天皇制の意義が失われるものであること深く認識しなければならない。
下世話なお話しで大変申し訳ないが、女系男子を認めるということは、京都の「九条ネギ」をずっと守り続けてきた京都人が、その畑に、「ジャガイモやダイコン」を植えるということに等しいことです。「九条ネギ」の品種改良ではなく、まったく別物の野菜をつくり続けるということになると思うのです。それでは、納得がいかない、ということになりはしないでしょうか。
現代の遺伝学はそのように語りかけていると思うのですが、いかがでしょうか。
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PS
私は男尊女卑の考えは持っていません。女系天皇がよいと多くの国民が納得して認めるのであれば、やむを得ないと考えます。しかし、しっかりとした認識でご判断していただきたいと思っているのです。
---owari---
大変難しい問題、と認識しております。
男系の維持については、私自身理解をしているつもりですし、以前は今回の記事と同様の考えを強く持っておりました。
しかし、昨今、このような主張にも無理があると感じております。
>>傍系で何親等離れていようと、同じY染色体を持つ男系男子を探し出して皇位を継承して貰えばよいのである。
何親等も離れた『一般人』に、天皇陛下の無私の御心で民と国のために祈り続ける、という重責が果たせるのか、これまでの天皇の御勤めは、かようにも簡単にできるものなのか。
>>愛子様(かなわなければ、眞子様、佳子様)には、その方の皇后陛下になっていただければもっと良い。
愛子さまのお気持ち、眞子さま、佳子さまのお気持ちは無視なのか、一民が皇室のみなさまの結婚相手を決めようと言うのか
何と傲慢な考え方なのだろう、と思うようになっております。
フェミニズムや左翼の魂胆などとは別次元で、本当に旧皇室の方の中にどれほどその重責を担おう、と言う方がいらっしゃるのか、女系天皇もやむを得ないのか、そのような議論を、本当に日本を思い、天皇と皇室のみなさまに崇敬の念を持つ者たちで議論すべきだと思っております。
今の政治家の中にそのような想いで皇位継承を考えている人がいるようには思えないことがそもそもの問題だと感じております
ありがとうございました
ご意見ありがとうございました。
小平次さんがおっしゃるように根本を詰めていくと、皇位継承の問題は、
「本当に日本を思い、天皇と皇室のみなさまに崇敬の念を持つ者たちで議論すべきだ」とのご意見に賛同いたします。
ご意見のなかで、
①何親等も離れた『一般人』に、天皇陛下の無私の御心で民と国のために祈り続ける、という重責が果たせるのか、これまでの天皇の御勤めは、かようにも簡単にできるものなのか。
⇒これについては、光格天皇のときにも7親等もの隔たりがあり、現代の感覚で言えば赤の他人ですが、皇位は継承されています。天皇の御勤めも果たされていたと存じます。
しかし、かつての宮家ではしっかりとした教育(帝王学)を受けられていたと思いますが、宮家廃止後の現在では、この点が心もとなく、一般人と同じではないかと危惧されることはよく分かります。
②>>愛子様(かなわなければ、眞子様、佳子様)には、その方の皇后陛下になっていただければもっと良い。
「愛子さまのお気持ち、眞子さま、佳子さまのお気持ちは無視なのか、一民が皇室のみなさまの結婚相手を決めようと言うのか」
何と傲慢な考え方なのだろう、と思うようになっております。
⇒ご指摘の通りかもしれません。
皇位継承の問題で、いちばん重要な点は、「天皇陛下の無私の御心で民と国のために祈り続ける、という重責が果たせるのか」ということだと思っています。
この天皇の御勤めが、現行の憲法や皇室典範に、天皇の国事行為として規定されていますが、あまりにも多忙な職務であり、天皇にここまで勤めていただいたら、忙しくて倒れ、病気になってしまいます。実際は宮内庁の役人が手伝っているのでしょうが、天皇の本来のお務めである、「無私の御心で民と国のために祈り続ける」行為を最重要視して、御勤めができるように改善していただきたいと願っています。