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信長は合戦をなくすために速戦即決で勝てる軍団をつくった

2021年02月10日 | 歴史
「ほんとうですか」
武田勝頼は思わず膝を立てた。快川紆喜(かいせんじょうき:臨済宗の僧)がいうのは、
「信長は、この国から合戦をなくすために、合戦に勝つ方法をあみ出したのだ」
ということである。

快川紹喜はうなずいた。そして静かな眼で勝頼をみつめたまま、こういった。
「それが信長殿を強くしているのです。つまり、この国から合戦をなくしたいという志があるからこそ、かれは自分のおこなう常識はずれな行為をすべて自ら是認しているのです」

勝頼は息を飲んだ。快川紹喜の話がやっと頭の中にストンと落ちた。
(そういうことだつたのか)
勝頼は気づいた。

快川紹喜のいうのは、
・信長は、若い時から尾張国で城下町を通る人間たちに接触し、いま生きている人間たちがいったいなにを求めているのかを探った。
・整理した結果、その願いの最大のものがこの国から合戦をなくすことだと気づいた。つまり、いまこの国に生きている民衆は、一日も早く合戦のない国にして欲しいと願っているのだ。

・その願いを実現するとなれば、いまこの国の大名たちがおこなっているような合戦方法を続けていたのでは、百年も二百年もかかる。もっと時間を短縮する必要がある。
・そこで、信長は合戦の方法を大幅に変え、速戦即決で勝てるような軍団をつくり、新兵器を採用した。
・その大規模な実験が、すなわち設楽ケ原(したらがはら)の合戦(長篠の戦い:三河国長篠城をめぐって、織田信長・徳川家康連合軍3万8000と武田勝頼軍1万5000との間で行われた設楽ケ原での決戦)であった。 

勝頼は頭の中で整理したことを快川紹喜に語った。快川紹喜はうなずいた。
「よくぞお気がつかれた。そのとおりです」
「信長は、志を実現するために、あのような常識はずれな戦法をとったとおっしゃるのですか?」
「そうです。いまの世に生きる大名方にとって、志があるかないかが大きな分かれ目になりましょう」

(『歴史小説浪漫』作家・童門冬二より抜粋)

---owari---
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