書籍「図解わかる税金」でおなじみの 税理士法人 元(GEN)のブログ

会計・税金・経営情報について「わかりやすい」を合言葉に現場の声を発信しています。

信託型SОの課税関係

2023-05-31 10:48:48 | Weblog
国税庁が信託型SОの課税関係を示す、税制適格SОに係る付与契約時の株価算定はルールを通達改正で明示へ


国税庁は5月30日、 ストックオプション(SО)に関する税務上の一般的な取扱いをまとめたQ&Aを公表するとともに、

税制適格SOに係る付与契約時の株価算定ルールに関連して「

租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)等を改正することとし、

改正案への意見募集(パブリックコメント)を開始した。

このうち、Q&Aでは、税制非適格の信託型SOについて、

役職員がSOを行使して発行会社の株式を取得した場合の経済的利益が給与所得(最高税率55%)となることを明らかにした。

信託型SOを採用している会社は譲渡所得(税率20%)と認識していたとされ、

信託型SОを採用している社にとっては衝撃的な事態となる。

他方、通達改正では税制適格SОに係る付与契約時の株価算定ルールを明示する。

税制適格SОの権利行使価額の要件とされている付与契約時の「1株当たりの価額」について売買実例等により算定した価額であることを明確化する一方、

取引相場のない株式について、一定の条件の下、財産評価基本通達の例によって算定している場合には、

売買実例等により算定した価額の如何にかかわらず、これを認めることとした。


(税のしるべ電子版)

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消費税 値引き・返品時の返還インボイスについてQ&A ⑤

2023-05-29 09:23:44 | Weblog

Q6.売り手が負担する振込手数料について、
   会計上は「支払手数料」、
   消費税法は売上に係る対価の返還等として
   処理することはできるのでしょうか。

  → 振込手数料相当額について、
    会計上は支払手数料として処理していても
   消費税法は売上に係る対価の返還等として
    処理することが可能です。

    この場合、振込手数料相当額が税込金額
    1万円未満であれば、返還インボイスの発行が
    不要になります。

    消費税法上、売上に係る対価の返還等として
   処理する場合には、その基となった適用税率
    (判然としない場合には合理的に区分)
    による必要があるほか、
    帳簿に対価の返還等に係る事項を記載し、
    保存する必要があります。

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一方的な値下げを通告した発注事業者に注意

2023-05-24 09:46:02 | Weblog

公取委がインボイス実施に関連して一方的な値下げを通告した発注事業者に注意、仕入税額控除の経過措置などを踏まえた対応を

公正取引委員会は17日、今年10月1日からのインボイス制度の実施に関連して独占禁止法違反につながるおそれのある複数の事例が確認されたとして、

確認された事例の内容と当該事例を踏まえた独禁法と下請法上の考え方を明らかにした。

確認されたのは、インボイス実施後も経過措置によって免税事業者からの課税仕入れであっても

一定の範囲で仕入税額控除が認められるにもかかわらず、発注事業者が取引先の免税事業者に対して課税事業者に転換せず、

引き続き免税事業者を選択する場合には、消費税相当額を取引価格から引き下げると文書で伝えるなど一方的に通告を行ったというもの。

公取委は事例等を明らかにすることで違反行為の未然防止を図る。

こうした事例に該当した5業態・約10の発注事業者に対し、公取委は独占禁止法違反行為の未然防止の観点から注意を行ったとしている。

こうした事例について公取委は、取引上優越した地位にある事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、

取引先の免税事業者にインボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、

消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となるおそれがある。

また、下請法上の親事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、

取引先の免税事業者である下請事業者にインボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、

免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、

下請法上問題となるおそれがある――と独禁法と下請法上の考え方をそれぞれ明らかにしている。

公取委は、これまでもインボイス制度の実施に関連して免税事業者と取引先との間で独禁法、

下請法上問題となるおそれのある行為をまとめたQ&Aを公表するなどしていた。

インボイス制度の実施後、インボイスを発行することができない免税事業者からの課税仕入れは原則として仕入税額控除ができなくなる。

ただ、実施後3年間は免税事業者からの課税仕入れでも仕入税額相当額の80%(その後3年間は50%)の控除が可能となる経過措置が設けられている。

インボイス制度の実施後の発注事業者と取引先の免税事業者との価格交渉に当たっては、

免税事業者も自らの仕入れに係る消費税を負担していることや経過措置が設けられていることを踏まえ、

一方的ではなく双方が納得できる価格とすることが求められる。

(税のしるべ)


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消費税 値引き・返品時の返還インボイスについてQ&A ④

2023-05-22 09:01:30 | Weblog
Q5.売り手が負担する振込手数料を
   「支払手数料」として処理している場合、
   交付義務免除の対象になりますか。

→ 売り手が負担する振込手数料を「支払手数料」
  すなわち課税仕入れとして処理している場合は、
  そもそも返還インボイスを発行する必要がありません。

  支払手数料として仕入課税控除を行うためには、
  支払手数料に係るインボイスを受け取って、
  保存することが必要です。

  ただし、一定規模以下の事業者においては、
  税込金額1万円未満の課税仕入れについて
  帳簿のみの保存で仕入課税控除を認める
  特例(※)の対象になります。

  ※ 1.対象期間は、令和5年10月1日から
     令和11年9月30日までです。

   2.対象者は、基準期間における課税売上高が
     1億円以下又は特定期間における
     課税売上高が5千万以下の課税事業者です。

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家屋への入居目的は単に特例の適用を受けるため、生活の拠点と認めず

2023-05-17 09:59:38 | Weblog

特例の適用には注意したいですね。

ご参考に。

【非公開裁決】請求人の本件家屋への入居目的は単に特例の適用を受けるため、生活の拠点と認めず


 請求人が、家屋(譲渡家屋)およびその敷地を譲渡した当時、譲渡家屋以外にも家屋(請求人家屋)を所有していたが、譲渡前の一定期間は、請求人家屋をほとんど利用しておらず、譲渡家屋の所在地を住民票上の住所と定め、専ら譲渡家屋で生活していたため、請求人の生活の拠点は譲渡家屋にあったといえるのであるから、租税特別措置法(平成30年法律第7号による改正前のもの)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項の規定による特例(本件特例)の適用が認められるとして、特例を適用して所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、請求人が譲渡家屋を生活の拠点としていた事実は認められず本件特例を適用することはできないとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の取消しなどを求めていた事案で、国税不服審判所は、請求人の主張を棄却する判断をした(令和4年4月5日付、非公開裁決)。

【事実】

(関係法令)

 租税特別措置法(平成30年法律第7号による改正前のもの。以下「措置法」)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項は、個人の有する資産が、居住用財産を譲渡した場合に該当することとなった場合には、譲渡所得の金額の計算上、3000万円(譲渡所得の金額のうち同項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が3000万円に満たない場合には当該資産の譲渡に係る部分の金額)を控除する旨規定している。

 また、措置法第35条第2項は、同条第1項に規定する居住用財産を譲渡した場合とは、個人が、その居住の用に供している家屋で政令で定めるものの譲渡若しくは当該家屋とともにするその敷地の用に供されている土地等の譲渡をした場合、または当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなったものの譲渡若しくは当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなったものとともにするその敷地の用に供されている土地等の譲渡を、これらの家屋が当該個人の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした場合をいう旨規定している。

(基礎事実)

 イ 請求人は、〇〇、〇〇に所在する家屋(家屋番号:〇〇、種類:居宅、構造:木造かわらぶき2階建、総床面積:109.84㎡。以下、当該家屋を「本件家屋」)およびその敷地を含む土地を、請求人の母から相続により取得した。

 請求人が本件家屋を相続した当時、本件家屋には、請求人の姉が居住していた。

 ロ 請求人は、平成8年10月15日、〇〇および同所〇〇に所在する家屋(家屋番号:〇〇、種類:居宅、構造:木造かわらぶき平家建、総床面積:173.00㎡。以下、当該家屋を「請求人家屋」)を新築した。

 ハ 請求人の姉は、〇〇に死亡し、本件家屋は空き家となった。

 ニ 請求人は、28年4月21日、〇〇ほか1人(以下「本件買主ら」)との間において、本件家屋および本件家屋の敷地(〇〇ほかから文筆。合計面積414.38㎡)を、合計〇〇で譲渡する旨売買契約を締結した。その後、本件家屋の敷地を実測したところ、当該敷地の面積が391.57㎡であったことから、請求人は、28年6月26日、本件買主らとの間において、当該売買契約の売買代金を〇〇に減額する旨変更契約を締結した。

 ホ 請求人は、28年7月13日、本件買主らに対し、本件家屋および本件家屋の敷地を引き渡した(以下、この譲渡を「本件譲渡」)。

(審査請求に至る経緯)

 イ 請求人は、28年分の所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」)について、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、措置法第35条第1項の規定による課税の特例(以下「本件特例」)を適用した上で、確定申告書に記載し、法定申告期限までに申告した(以下、当該申告を「本件申告」)。

 ロ 原処分庁は、令和3年3月19日付で、本件譲渡に本件特例の適用は認められないなどとして、更正処分(以下「本件更正処分」)および過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」)をした。

 ハ 請求人は、3年6月21日、原処分の取消しなどを求めて審査請求をした。

【争点】
 本件家屋は、本件特例が適用される請求人の居住用財産に当たるか否か。

【請求人の主張について】
 以下の本件家屋の構造および設備の状況並びに請求人の生活状況からすれば、本件家屋は本件特例の対象となる居住用財産に当たる。

 本件家屋には、5つの和室があり、電気、水道を使うことができ、台所、風呂、トイレ等の生活に必要な設備が設置されていた。

 請求人は、26年5月7日から27年2月19日までの間(以下「本件期間」)、本件家屋の所在地を住民票上の住所とし、実際に、本件家屋で就寝し、本件家屋の設備を利用することによって生活していた。

 また、請求人は、本件家屋のほかに、本件家屋から約5m離れた場所に請求人家屋を所有しているが、請求人家屋をほとんど利用しておらず、専ら本件家屋で生活をしていたことからすれば、請求人の生活の拠点は請求人家屋ではなく、本件家屋である。

【原処分の主張について】
 以下の本件家屋および請求人家屋の設備の利用状況並びに請求人の生活状況からすれば、本件家屋は本件特例の対象となる居住用財産に当たらない。

 本件家屋のガスは、20年10月4日に閉栓され、本件家屋の水道の使用量(各2か月分)についても、24年1月から27年4月9日に閉栓されるまで、零㎥ないし6㎥であった。また、24年4月から28年4月までの電気使用量の平均値は、約14.3kwhであるところ、これは、総務省統計局が公表している全国の単身世帯の1か月当たりの電気代の約7%である。

 また、請求人は、本件家屋のほかに請求人家屋を所有しているところ、請求人家屋には請求人の妻が居住していること、請求人家屋に係る24年から27年までの電気およびガスの1か月当たりの使用料金は、総務省統計局が公表している〇〇の2人以上世帯の標準的な金額をいずれも超えていること、請求人が請求人家屋で入浴、洗濯および食事をしていた旨申述していたことからすれば、請求人の生活の拠点は本件家屋ではなく、請求人家屋である。

【審判所の判断】
(法令解釈)

 措置法第35条第1項は、個人が自ら居住の用に供している家屋または当該家屋とともにする土地等を譲渡した場合には、これに代わる新たな居住用財産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があり、その担税力が弱いことから、居住用財産の譲渡につき3000万円を限度とする特別控除を認め、所得税の負担を軽減して新たな居住用財産の取得を容易にすることを考慮して設けられたものである。

 上記の趣旨に照らすと、措置法第35条第1項に規定する「その居住の用に供している家屋」とは、譲渡者が、短期間随時にあるいは仮住まいとして起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいうものと解される。そして、譲渡資産がこれに該当するか否かについては、その者の日常生活の状況やその家屋の利用の実態、その家屋の入居目的、その家屋の構造および設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し、社会通念に従って判断するのが相当である。

(認定事実)

 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査および審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

 イ 本件家屋の売却に係る仲介の状況

 請求人は、25年頃、知人から、「本件家屋に税金がかかるのではないか」と言われたことを契機として、本件家屋の売却を検討し始めた。そして、請求人は、25年7月5日、不動産仲介業者に本件家屋の売却の仲介を依頼した。

 ロ 本件家屋への入居目的

 請求人は、当審判所に対し、本件家屋への入居目的が本件特例の適用を受け、本件申告に係る税金を安くするためであった旨答述した。

(当てはめ)

 本件特例の対象となる家屋とは、上記(法令解釈)のとおり、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいい、例えば本件特例の適用を受けるための目的で入居したと認められる家屋は、これに当たらない。

 これを本件についてみると、上記(認定事実)のイのとおり、請求人は、本件家屋に入居したと主張する本件期間以前から、不動産仲介業者に本件家屋の売却の仲介を依頼しており、請求人自身、上記(認定事実)のロのとおり、本件家屋への入居の目的が本件特例の適用を受けることにあった旨答述する。そして、実際にも、本件家屋の電気の平均使用料金は、全国の単身世帯の1か月当たりの電気の使用料金に比べ、極めて少ないことからすれば、請求人の本件家屋への入居目的は、単に本件特例の適用を受けるためであったと認められ、請求人が真に本件家屋への居住の意思を持っていなかったことは明らかである。

 以上のことからすれば、本件家屋は、請求人が真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていたとは認められないから、本件特例が適用される請求人の居住用財産には当たらない。

(請求人の主張について)

 請求人は、本件期間の本件家屋での生活状況について、本件家屋で就寝、食事、洗濯等をし、1日のうち8割程度を本件家屋で過ごし、残りの2割を請求人家屋で過ごしていた旨等答述し、上記【請求人の主張について】欄のとおり、本件期間において、請求人家屋をほとんど利用しておらず、本件家屋の所在地を住民票上の住所と定め、本件家屋において就寝し、本件家屋の設備を利用することによって専ら本件家屋で生活していたのであるから、請求人の生活の拠点は本件家屋である旨主張する。

 しかしながら、請求人家屋の電気の使用料金が2人以上世帯の平均的な使用料金を超え、ガスや水道についても一定の使用実績がある一方、本件家屋の電気の使用料金が単身世帯の平均的な使用料金と比較して著しく少ない点および水道の使用量にあっては零㎥の月がある点において、請求人の上記答述およびそれに基づく主張は、客観的事実と整合しないし、本件家屋が本件特例が適用される請求人の居住用財産に当たらないのは、上記(当てはめ)のとおりである。

 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

( 税のしるべ電子版)


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値引き・返品時の返還インボイスについてQ&A ③

2023-05-15 09:03:02 | Weblog

Q3.決済の際に、売り手が負担する振込手数料を
   「売上値引き」として、処理している場合、
   返還インボイスを発行しなければならないのでしょうか。

→ 令和5年度税制改正において、
  税込み金額で1万円未満の値引き・返品
  割戻しなどの売上に係る対価の返還等については
  返還インボイスの発行が免除されることに
  なりました(少額なインボイスの交付義務免除)
 
振込手数料(税込金額1万円未満)を
  売上値引き処理する場合は、
  返還インボイスの発行は不要です。


Q4.Q3の交付義務免除の適用対象者に
   要件はありますか。
   また、いつまで適用されるのでしょうか。

→ 適用対象者に制限はありません。
 すべての適格請求書発行事業者が対象です。

  また、恒久的な措置のため、適用期限はありません。

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売買代金総額を土地と建物の各固定資産税評価額比で按分して算定すべき

2023-05-10 09:53:18 | Weblog
わりとあります、参考にです。

【公表裁決】土地と一括で売買した建物の価額は著しく不合理、売買代金総額を土地と建物の各固定資産税評価額比で按分して算定すべき

【裁決のポイント】

・請求人が一括購入した土地・建物について、建物の所得税法施行令126条1項1号に規定する「当該資産の購入の代価」は売主・買主で合意した売買価額になると主張。

・審判所は建物の売買価額が適切な時価を反映しているとされる固定資産税評価額を大きく上回っており、著しく不合理といえ、売買代金総額を土地と建物の固定資産税評価額比で按分して算定すべきとした。
 賃貸用の土地と建物を一括して購入した審査請求人の不動産所得について、原処分庁が売買契約書に記載された土地と建物の価額が著しく不合理で、土地と建物の固定資産税評価額の価額比に基づいて建物の取得価額を算定すべきとし、減価償却費が過大であるとして所得税等の更正処分等を行った。これに対し、請求人が売買契約書に記載された建物価額をもとに取得価額を算定すべきとして処分の取消しを求めていた事案で、国税不服審判所は、原処分庁の主張を認める裁決を下した(令和4年9月9日付、公表裁決)。

事案の概要
 請求人は不動産賃貸業を営んでいる。請求人は平成28年7月、29年9月、29年12月に物件A、B、Cをそれぞれ買い付ける旨の売買契約を締結し、物件A、B、Cは取得後、貸付の用に供された。AとBの売買契約書には売買代金総額の内訳として土地価額と建物価額が記載されていた。Cの売買契約書には土地価額と建物価額は記載されていないが、売主による署名押印がある30年4月12日付の「譲渡対価証明書」と題する書面が作成されており、同証明書には譲渡対価のうち建物価額がいくらであるかが記載されていた(Cでは、同証明書に記載された建物価額と売買代金総額からこの建物価額を差し引いた土地価額を内訳価額とする)。

 請求人は28年分、29年分、30年分(本件各年分)の所得税等ついて法定申告期限出に申告した。請求人は、令和元年11月に29年分と30年分の所得税等について修正申告を行ったが、原処分庁はこのうち30年分の所得税等の修正申告に対し、3年2月に過少申告加算税の賦課決定処分をした。請求人はこの賦課決定処分に不服申し立てをしなかった。その後、3年3月に原処分庁が本件各年分の所得税等について各更正処分および過少申告加算税の各賦課決定処分をし、今度は請求人が処分の一部を不服として再調査の請求を経て審査請求を行った。

 争点は、本件各建物について所得税法施行令126条1項1号に規定する「当該資産の購入の代価」を、固定資産税評価額比をもって算定すべきか否か。

請求人の主張
 本件の各内訳価額は、買主、売主双方がその価格、引渡し時期等あらゆる交渉を行った結果の産物であり、第三者間での相対の商取引で合意された価額であるから、合理的な価額といえる。

原処分庁の主張
 (1)本件の各建物は請求人が取得した時点でそれぞれ築27年、40年、38年が経過しており、設備等が破損する等いずれも老朽化していた、(2)各物件に係る固定資産税評価額について、いずれも建物価額が土地価額を大きく下回っている、(3)各内訳価額における土地と建物の価額の割付比率は、各建物の築年数および構造等がそれぞれ異なるにもかかわらず、一律に3対7である、(4)各物件の売主らに各建物の売却価額に係る認識がないことから、恣意的で著しく不合理なものである。固定資産税評価額は、一般的に土地と建物等につき適正な時価を反映しており、各建物の購入の代価を各固定資産税評価額比に基づき算定することは、合理的な基準に基づくものであるといえる。

審判所の判断
 土地と建物が一括して売買され、売買契約で定められたそれぞれの価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものである場合には、同号に規定する「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準で算定するのが相当である。

 請求人は、各売買契約書に記載された土地と建物の各内訳価額は第三者間での相対の商取引で合意された価額で合理的な価額といえ、各建物に係る同号で規定する「当該資産の購入の代価」は、各内訳価額に基づいて算定すべきである旨主張する。しかし、固定資産税評価額は一般的に適切な時価を反映しているといえ、3物件の各売買代金総額は各固定資産税評価額総額を上回るのに対し、各建物価額はその固定資産税評価額を大きく上回る一方、各土地価額はその固定資産税評価額と同様かまたは下回っている。本件でそのような評価とすべき事情は見当たらず、各内訳価額に係る各建物価額は各売買代金総額から過剰に価額が配分されたものというべきで、各内訳価額における各土地と各建物それぞれの価額は、いずれもその客観的な価値と比較して著しく不合理なものであると認められるから、各建物の「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定することとなる。

 そして、売主が土地と建物を一括して譲渡する場合、建物の購入の代価について売買代金総額を土地と建物の各固定資産税評価額の価額比でそれぞれ按分して算定することは、一般的には合理的な基準による算定であるといえ、各内訳価額に係る各建物価額についてはいずれも前記の不合理な場合に該当し、また、各固定資産税評価額が適正な時価を反映しているとはいえないような事情もないから、各建物の購入の代価は各売買代金総額を土地と建物の各固定資産税評価額比でそれぞれ按分して算定すべきである。

(税のしるべ)

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値引き・返品時の返還インボイスについてQ&A ②

2023-05-08 09:10:19 | Weblog

Q2.返還インボイスには
   どのような記載事項が必要でしょうか。

→ (1)適格請求書発行事業者の
     氏名又は名称及び登録番号

  (2)対価の返還等を行う年月日

  (3)対価の返還等の基になった取引を
     行った年月日

  (4)対価の返還等の取引内容
     (軽減税率の対象品目である旨)

  (5)税率ごとに区分して合計した対価の
     返還等の金額(税抜き又は税込み)

  (6)対価の返還等の金額に係る消費税額等又は
     適用税率


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値引き・返品時の返還インボイスについてQ&A ①

2023-05-01 09:04:58 | Weblog

インボイス制度では、適格請求書発行事業者が
値引きや返品等を行ったときには、
原則として返還インボイス(適格返還請求書)を
発行しなければなりません。

ただし、令和5年度税制改正において、
税込金額1万円未満であれば返還インボイスの
発行が免除される改正が行われました。


~返還インボイスに記載すべき事項~


Q1.適格請求書発行事業者は、
値引きや返品の際にも、インボイスを発行
しなければならないのですか?

→ 値引き等を行った際には、売り手と買い手の
  税率と税額の一致を図るために、
  原則として値引き等の金額や消費税額等を記載した
  返品伝票などの書類(返還インボイス)を
  発行しなければなりません。

  ただし、3万円未満の公共交通機関
(船舶、バス又は鉄道)の運賃、
3万円未満の自動販売機及び自動サービス機
による商品の販売等のようにインボイス発行が
免除される取引については、
返還インボイスの発行も免除されます。

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