書籍「図解わかる税金」でおなじみの 税理士法人 元(GEN)のブログ

会計・税金・経営情報について「わかりやすい」を合言葉に現場の声を発信しています。

譲渡対価額が区分されていなかった土地建物の消費税巡り、地裁判決鑑定評価額比率との乖離大きく固定資産税評価額比率での按分は合理性失う

2022-06-29 09:39:49 | Weblog
土地と建物の区分がされていない契約書はよくありますが

区分の原則は時価ですが、これを按分するのは実務上悩ましいですね。

譲渡対価の額が区分されていなかった土地と建物を売却したことを巡り、

課税庁が消費税法施行令45条3項を適用して建物の譲渡に係る消費税の課税標準を算出する際には

固定資産税評価額比率による按分法を用いることが最も合理的として更正処分等を行った。

これに対し、納税者が異なる主張を行い、処分の取消しを求めていた事案で、

東京地裁(岡田幸人裁判長)は7日、課税庁の採った手法は一般的にはその合理性を肯定し得ないものではないとしつつ、

適正な鑑定で異なる評価がされるなどした場合には合理性の根拠は失われるなどとし、

本件はこのような場合に当たり、鑑定評価額比率を用いるのが相当として処分の大半を取り消す判決を下した<令和元年(行ウ)第480号>。

消費税法施行令45条3項は、事業者が課税資産と非課税資産とを同一の者に同時に譲渡した場合、

これらの資産の譲渡の対価の額がそれぞれ合理的に区分されていないときは、

当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、

これらの資産の譲渡のときにおける当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする旨を定めている。

納税者は不動産貸付業を営む者で平成28年8月に大阪市中央区にある土地建物を売却した。

売買契約書には消費税相当額を含む代金総額は記載されていたが、その内訳は記載がなかった。売却時、同地周辺は地価の急騰局面にあった。

その後、納税者が消費税等の確定申告書を提出したところ、

所轄税務署が本件代金総額に占める建物の価額は、

代金総額に28年度の建物の固定資産税評価額と土地の固定資産税評価額との合計額のうち

建物固定資産税評価額の占める割合を乗じて計算した金額の税抜価額になるとして、

更正処分等を下したため、納税者が処分の取消しを求めていた。

争点は、同項を適用した場合における本件建物の譲渡に係る消費税の課税標準。

納税者は当初、譲渡時点で課税資産と非課税資産の各譲渡の対価の額が区分されていなくても、

納税申告時点で合理的に区分されていれば同項の適用はない旨の主張もしていたが、地裁はこれを同項の文理に反するとして退けた。

その上で、地裁は納税者の鑑定申出を採用。

不動産鑑定士が本件土地建物の売買時点の時価評価額を鑑定したところ、

土地と建物の固定資産税評価額比率が55・51対44・49だったのに対し、

同鑑定評価額比率は77・3対22・7で、建物の価額が占める割合に相当な乖離が生じていた。

この点につき地裁は「消費税の課税標準を算出するに当たって実質的な差異が生じている」と指摘。

そうすると、同項を適用した建物の譲渡に係る消費税の課税標準を算出するに当たって、

固定資産税評価額比率による按分法を用いる合理性を肯定する根拠は失われており、

鑑定評価額比率による按分法を用いることが相当であると判断し、

鑑定評価額比率に基づき税額等を算出して増額更正処分等の大半を取り消した。

(税のしるべ)

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査察処理件数は過去最少

2022-06-23 10:51:41 | Weblog
国税庁は令和3年度の査察の概要を公表した。

令和3年度に査察に着手した件数は前年度より5件多い116件。

処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数は同10件少ない103件で、

着手件数は査察制度創設以降過去最少だった前年度を上回ったものの、

処理件数は過去最少を記録した。

新型コロナウイルスの感染防止のために緊急性などを踏まえた着手となったことや感染拡大に伴う移動制限等が影響した。

脱税額は1件当たりの額が前年度よりも高かったことで集計開始以降過去最少だった前年度を約12億円上回る102億1200万円となったが、過去2番目の少なさだった。

告発件数は同8件少ない75件。

告発分の脱税額は前年度を8億円超下回る60億7400万円で3年連続で過去最少だった。

処理件数に占める告発件数の割合である告発率は72・8%だった。

告発が多かった上位3業種は建設業(19者)、不動産業(15者)、卸売業(4者)で、

このうち建設業と不動産業は平成27年度から7年連続で上位2業種を占めている。

なお、査察事件で3年度中に一審判決が言い渡された件数は117件で、

このすべてが有罪判決、5人には実刑判決が出た。

実刑判決のうち最も重いものは査察事件単独に係るものが懲役2年、他の犯罪と併合されたものが懲役9年だった。

こうした中にあって、同庁では消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、

近年、市場が拡大する分野における脱税など、社会的波及効果が高いと見込まれる事案を重点事案と位置づけ、積極的に調査を実施している。

消費税事案では愛玩用動物のイベントを企画・開催する法人が消費税の仕入税額控除を悪用した消費税不正受還付事案などを告発したほか、

無申告事案は太陽光発電設備に係る請負工事やインターネットショッピングサイトを利用した輸出入雑貨の通販などの事案を告発した。

その他、海外法人を利用した国際的な不正スキーム事案や学校法人の元理事長がリベート収入を除外していた事案などもあった。

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていたが、

不動産や有価証券等への投資のほか、脱税者が費消していた事例もあり、

数千万円の高級車両や高級腕時計が購入された事例、海外カジノを含むギャンブルや高級クラブの遊興費として支出された事例もあった。

(税のしるべ)

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中小企業向けの賃上げ促進税制は教育訓練費要件だけで控除率上乗せ可に

2022-06-16 10:16:25 | Weblog
中小企業向けの賃上げ促進税制は教育訓練費要件だけで控除率上乗せ可に

令和4年度税制改正で、中小企業向けの賃上げ促進税制は控除率の上乗せ要件が見直されるととも

控除率がこれまでの最大25%から同40%に引き上げられた。

通常要件(控除率15%)である雇用者全体の給与総額の1・5%以上増に追加される控除率の上乗せは従来、

教育訓練費の10%以上の増加等とともに同給与総額が2・5%以上増加していなければ、

適用要件を満たさなかったが、今回の改正で教育訓練費の10%以上の増加だけでも控除率の10%上乗せが適用できるようになった。

教育訓練費の増加要件は前年度の同金額が小さければ、

要件を満たすことはそれほど難しくなく、同要件を満たして控除率の上乗せを図っていきたい。

4年度改正前までは、①雇用者全体の給与総額が2・5%以上増加した上で、

②教育訓練費が10%以上増加するなどしなければ、控除率の10%上乗せは受けられなかった。

4年度改正によって①と②が分離し、通常要件を満たしたうえで、

①のみを満たすだけで15%上乗せ、②のみを満たすだけで10%上乗せがそれぞれ受けられるようになった。

②はもともと教育訓練費の増加もしくは中小企業等経営強化法の認定経営力向上計画における経営力向上の証明のどちらかを選択適用する形となっていたが、

4年度改正で経営力向上の証明は要件として廃止され、教育訓練費の増加のみとなった。

経済産業省が公表している本税制のQ&Aによると、

比較(前事業年度の)教育訓練費の額が零である場合、適用年度の教育訓練費の額が1円以上であれば同要件を満たすものとされている。

1円うんぬんが現実的かどうかは別にして、教育訓練費の最低額などは設定されていない。

教育訓練の対象者、対象となる教育訓練費の範囲には注意が必要なものの、同税制の適用を予定し、

給与総額の1・5%以上の賃上げを実施した場合は、教育訓練費要件の充足も積極的に視野に入れてみてはどうだろうか。

その際に、本税制は4年4月1日から6年3月31日までの間に開始する各事業年度を対象(法人の場合、個人事業主は5年、6年)としているので、

例えば5年3月期、6年3月期と2期連続で適用したいと考えた場合には、

それぞれの事業年度で無理なく教育訓練費の伸びが10%以上となるようにしておくことも忘れないようにしたい。

(税のしるべ)

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新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画案を取りまとめ

2022-06-07 10:46:16 | Weblog
積立てNISAやiDeCoをする方が増えていますから

これは朗報かな。

新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画案を取りまとめ、岸田首相がNISAやiDeCoの改革を明言

政府の新しい資本主義実現会議(本部長=岸田文雄首相)は5月31日、

「新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画案」を取りまとめた。

この中では、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCо(イデコ、個人型確定拠出年金)制度の改革の検討が打ち出された。

これを受けて、岸田首相は今年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定し、

NISAの抜本的な改革や高齢者に向けたイデコの改革など資産形成を行いやすい環境整備を行うと明言した。

NISAの抜本的な改革は個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせることが目的。

イデコの改革は就業機会確保の努力義務が70歳まで伸びていることを念頭に置いている。

若年世代が資産形成を行いやすい環境整備等についても検討する。

税制関係では、このほかにオープンイノベーションをさらに加速し、

研究開発投資全体を押し上げられるような民間企業の研究開発投資を促進するための税制のあり方の検討、

賃上げ税制等の一層の活用に向けた制度の周知の徹底などを盛り込んだ。

コロナ後に向けて債務の削減等を図る新たな事業再構築のための法整備も行う。

また、財政の中期的な持続可能性に留意しつつ、

①基金等を活用した予算単年度主義の弊害の是正とともに、

②税制改正におけるその将来にわたる効果を見据えた動的思考の活用の二つの改革を行うとした。

これら内容は同日、経済財政諮問会議で示された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」の原案にも、

おおむね同様のことが記載されている。

税制改正における動的思考について、

岸田首相は5月5日に英国ロンドンで行った基調講演で

「現時点での減税等のインセンティブが将来の増収をもたらすという動的思考を積極的に導入していく」と述べていた。

骨太の方針の原案には、新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画案にはない記述として、

再分配機能を向上させるとともに、公平かつ多様な働き方等に中立的で、

デジタル社会にふさわしい税制などの構築に向けた税体系全般の見直しを推進することなども盛り込まれている。

これらは与党との調整を経て週内にも閣議決定される予定。

(税のしるべ)

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直近3年分の所得税申告書等のPDFが取得可能に

2022-06-02 11:22:04 | Weblog

申告書等情報取得サービスがスタート、直近3年分の所得税申告書等のPDFが取得可能に

国税庁は23日、e―Taxにより直近3年分(令和2年分以降)の所得税の確定申告書等のPDFファイルを取得できる

「申告書等情報取得サービス」がスタートしたと発表した。

e―Taxで申告書等を提出した場合だけでなく、

書面で提出した場合も同サービスを利用することが可能で、パソコンやスマートフォンから申請から取得までできる。

取得したPDFファイルは、ダウンロードのほか印刷も可能で、手数料はかからない。

同サービスの対象となるのは、書面またはe―Taxにより提出した、

①所得税および復興特別所得税確定(修正)申告書、

②青色申告決算書、

③収支内訳書のうち、直近3年分(令和2年分以降)となっている。

取得方法は、パソコンまたはスマホからe―Taxソフト(WEB版、SP版)にログインし、

閲覧申請データを作成・送信する。

e―TaxのメッセージボックスにPDFファイルが格納された後、ダウンロードすることができる。

閲覧申請データの作成・送信やメッセージボックスの確認にはマイナンバーカードが必要となる。

PDFファイルの取得にかかる期間は、申請から数日となっている。

税務署において申告書の内容等の確認作業等が必要な場合は、

通常よりも処理に時間がかかるとしている。

PDFファイルのダウンロード可能期間は、メッセージの格納から180日以内。

代理人や相続人は利用できないとしている。

また、直近年分の申告書等がいつから取得できるかについては、

原則として翌年5月1日以降に取得申請が可能となる。

例えば、X4年3月15日に、X3年分の確定申告書を提出(期限内申告)した場合、X4年5月1日以降に取得可能となる。

ただし、法定申告期限(翌年3月15日)後に申告書等を提出している場合は、

税務署における処理のため、申請が可能になるまでしばらく時間を要することがあるとしている。

なお、e―Taxにより申告書等を提出している場合は、

パソコンからe―Taxソフト(WEB版)にログインすることで、

メッセージボックスの申告書等を提出した際の受信通知から、

申告書等のPDFファイルをダウンロードすることができる。

(税のしるべ)

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