書籍「図解わかる税金」でおなじみの 税理士法人 元(GEN)のブログ

会計・税金・経営情報について「わかりやすい」を合言葉に現場の声を発信しています。

記帳義務不履行への加算税加重措置は記帳漏れなどがあっても「運用上、適切に配慮」する場合も

2022-07-26 09:36:38 | Weblog
令和4年度税制改正では、記帳水準の向上に資する観点から記帳義務の適正な履行を担保し、

帳簿の不保存や記載不備を未然に抑止することを目的に過少申告加算税・無申告加算税の加重措置が講じられた。

6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される。

本措置の適用に当たっては、

4年度税制改正大綱に「これらの金額が記載されていないことにつきやむを得ない事情があると認められる場合には、

運用上、適切に配慮することとする」とされていたが、

この運用上の取扱いの検討が必要な場面について、

8日に財務省のホームページに掲載された「令和4年度税制改正の解説」で言及がなされている。

本措置は、所得税、法人税、消費税の税務調査で一定の売上に係る帳簿の提出の求めがあった場合に、

(1)不記帳・不保存であった場合(提出をしなかった場合)、

(2)提出された帳簿について収入金額の記載が不十分である場合のいずれかに該当するときは、

通常課される過少申告加算税・無申告加算税の割合に5%もしくは10%の加重をするというもの。

加算税の加重割合は、(1)および(2)のうち

(1)と同視される記載された収入が2分の1未満の場合が10%、

(2)のうち記載された収入が3分の2未満で2分の1以上の場合が5%となる。

記載された収入が3分の2以上であれば加重はない。

また、(1)や(2)に該当する場合であっても法律によって納税者の責めに帰すべき事由がない場合(災害等の場合)は本措置は適用しないこととなっている。

ただ、災害等の場合以外でも税制改正大綱では、

やむを得ない事情があると認められる場合に、運用上、適切に配慮することが盛り込まれていた。

この運用上の取扱いについて検討が必要と考えられる場面として、

「税制改正の解説」の国税通則法等の改正の中では、

①不完全な記帳状態ではあるが、申告書には収入金額が適正に記載されている場合、

②翌期の帳簿に記帳漏れとなった当期の収入金額が適正に記載されている場合等、

③白色申告者が、帳簿の体裁を正しく取ってはいない事業用の通帳・ノートに収入金額を

網羅的かつ一覧性のある形で記載しており、契約書・請求書等の書類が一定程度保存され、

収入金額を確認できる場合、④仕訳帳・総勘定元帳を保存しておらず、

態は補助帳簿による簡易簿記で記帳している青色申告者が、

現金出納帳や売上帳等の補助帳簿に収入金額を適正に記載している場合、

⑤仕訳帳・総勘定元帳の片方しか保存していない青色申告者について、

保存している一方の帳簿と補助帳簿に収入金額を適正に記載している場合――の五つが「例えば」の形で示されている。

なお、具体的な取扱いは今後、通達等で示される予定。

(税のしるべ)

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節税が主目的の保険商品への対応で金融庁と国税庁が連携強化、保険商品の審査段階で税務に関する事前照会

2022-07-21 09:35:32 | Weblog

金融庁は14日、節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品への対応として

保険商品の審査段階およびモニタリング段階で国税庁との連携をさらに強化すると発表した。

このうち、審査段階では、金融庁が保険会社に対して国税庁への税務に関する事前照会をしょうようするほか、

保険会社から同意を得た上で必要に応じて金融庁からも国税庁に事前照会を実施。

金融庁は事前照会の結果を商品審査で参考情報として活用する。

節税目的の保険商品を巡っては、その商品開発等に関して当局と保険会社との間で規制強化と抜け穴探しのいたちごっこが続いていたが、

今回の取組みでその歴史に終止符が打たれるかが注目される。

モニタリングの段階では、金融・国税両庁の定期的な意見交換の場等を通じ、

金融庁が国税庁から保険商品に関する節税スキームの情報提供を受けるとともに、

国税庁からの情報や金融庁が独自に把握した情報を活用し、

保険会社・保険代理店における募集管理態勢の整備状況や販売実態等のモニタリング等を実施。

同時に国税庁に対して商品開発や保険の募集現場で利用されるスキームの情報提供を行うなどとしている。

本発表とあわせて、金融庁はマニュライフ生命保険㈱に業務改善命令(行政処分)を出したと発表した。

同社が法人から個人への名義変更による節税を目的とした名義変更プランによる保険商品の開発等を旧経営陣の主導のもと推進していたことや国税庁の通達改正の抜け穴をついて、

年金保険を利用した名義変更プランによる募集を行い、契約者に対して租税回避的な行為を推奨していたことなどが処分理由。

名義変更プランとは、低解約返戻金型定期保険等を活用し、法人から個人(役員等)に名義変更を行って、法人と個人の税負担の軽減が可能となる点に着目。

保険期間当初の低解約返戻金期間中に法人から個人に名義変更を行い、同期間経過後に解約することを前提とした保険加入を推奨する手法を指す。

金融庁は節税を主目的に販売される保険商品について、

平成31年2月の国税庁による法人税基本通達の改正に係る保険業界への周知(周知開始日等が2月14日前後だったことからバレンタインショックとも呼ばれる)以降、

たびたび保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わないよう注意喚起を実施。

令和元年10月には保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正し、法人等向けの保険商品の設計上の留意点として、節税(課税の繰延べ)を訴求した商品開発を含め、

保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を防止するための指針を示してきた。

このような中で、同社で前記のような問題が認められたため、業務改善命令を出した。

(税のしるべ)

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財産債務調書等の記載事項の簡略化範囲を拡充、財産債務調書等に係る通達や所基通、相基通を改正

2022-07-14 09:30:57 | Weblog
富裕層向けの情報ですが

実務的には重要なので

ご参考に。

国税庁は5日、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取扱いについての

一部改正について(法令解釈通達)を公表した。

財産債務調書の提出義務者の拡充や提出期限の後倒しといった4年度税制改正への対応のほか、

記載事項を簡略化できる範囲の拡充などが行われている。

4日には「所得税基本通達の制定について」と「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」の一部改正、

相続税法基本通達等の一部改正(いずれも法令解釈通達)も公表された。

4年度税制改正法では、財産債務調書の提出義務者が広げられ、改正前の提出義務者のほか、

その年の12月31日に10億円以上の財産を有する者が加わった。

他方、財産債務調書と国外財産調書の提出期限がその年の翌年の3月15日から同6月30日へと後倒しされるなどした。

財産債務調書等に係る通達の改正では、こうした4年度改正法への対応とともに、

4年度改正大綱で「財産債務調書及び国外財産調書の記載事項について運用上の見直しを行う」とされていたことを受けて、

両調書の提出義務者の事務負担軽減を目的に、

所得税の確定申告書に添付すべき収支内訳書または所得税の青色申告書に添付すべき青色決算書の「減価償却費の計算」欄に減価償却資産として記載されているものは、

その価額の総額を記載することができることとした。

あわせて、財産債務調書で所在別に区分することなく、件数と総額で記載することのできる範囲や記載を省略することができる範囲を拡充。

預貯金のうち、1口の預入高が50万円未満のものは預入高に代えて所在欄または備考欄に口座番号等を記載することも可能とした。

それぞれ5年分以後から適用される。

各改正に関連し、「財産債務調書制度等の見直しについて」と題したパンフレットも公表されている。

また、4年度改正では、所得税の税務調査で証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者などへの対応策として、

必要経費不算入の措置が講じられた。

事実の仮装・隠蔽があるまたは無申告の年分に確定申告における所得金額の計算の基礎とされなかった間接経費の額は一定の場合を除き、

必要経費に算入しないというもので、5年分以後の所得税から適用される。

改正所基通では、本措置の対象の範囲外となる「計算の基礎とされていた金額」について、

確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書に記載された売上原価の額等にこれらの金額の記載がない場合でも、

居住者が保存する帳簿書類その他の物件により売上原価の額等を明らかにした場合には「計算の基礎とされていた金額」と取り扱って差し支えないことなどが示されている。

相基通等の改正では、「信託に関する受益者別(委託者別)調書」の記載事項等、

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等の改正が行われたことなどに伴い、

それぞれの規定等の法令解釈に当たり留意すべき事項等が定められた。

(税のしるべ)

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令和4年分路線価は2年ぶりに上昇

2022-07-06 10:06:25 | Weblog

国税庁は1日、令和4年分の路線価等を公表した。

全国約31万7000地点の標準宅地の評価基準額の対前年変動率の平均値は、

0.5%上昇(前年分は0.5%下落)と、2年ぶりに上昇に転じた。

都道府県別で見ると、

北海道、宮城、福島、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、愛知、京都、大阪、岡山、広島、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、沖縄の20都道府県(同7道県)が上昇し、

横ばいはなし(同1県)、

残りの27県(同39都府県)が下落した。

新型コロナウイルスの影響が緩和され経済活動が戻りつつある中で、

上昇地点が増え、下落幅も縮小している。

都道府県庁所在都市の最高路線価を見てみると、

上昇した都市は、前年分の8都市から15都市に増えた。

上昇率が一番大きかったのは、再開発が進む千葉市中央区富士見2丁目千葉駅前大通りの5.1%(1平方メートル当たり124万円)だった。

一方、下落した都市は、16都市で、前年分の22都市から減少。

下落率が一番大きかったのは、新型コロナウイルスの影響により飲食店や物販店の撤退が相次ぐなど打撃が大きかった

神戸市中央区三宮町1丁目三宮センター街の5.8%(1平方メートル当たり490万円)となっている。

なお、横ばいの都市は16都市(同17都市)だった。

全国で路線価が最も高かったのは、

東京都中央区銀座5丁目銀座中央通りの「鳩居堂」前で37年連続トップとなったが、2年連続で下落。

下落率は前年比5.9ポイント増の1.1%と下落幅は縮小している。

路線価は、1平方メートル当たり4224万円で、前年より48万円下がった。

(税のしるべ)

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