末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

オットー・ネーベル展

2017-12-25 13:31:01 | 日々のはなし
2017年も残り1週間となりました。
年内にアップしたいレビュー記事が、あと3本あるのですが、
果たして無事に、更新できるでしょうか。

まずは1本目。
"安定感のある、シンプルで精緻な抽象画" というものを、
私はどうやら好きらしい、と気づかせてくれた、
オットー・ネーベルの回顧展についてです。

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  オットー・ネーベル展 ― シャガール、カンディンスキー、クレーの時代

  ◇於:Bunkamura ザ・ミュージアム

  ◇会期:2017.10.7.(土)~12.17.(日)

  ◇鑑賞日:2017.12.15.


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子どもの時、お絵描きあそびをした記憶のある人は、多いと思います。
私自身も、何歳の頃からかは忘れてしまいましたが、お絵描き帳を買ってもらい、
好きなアニメや漫画の登場人物、絵本や物語のお気に入りな場面などを、
作者や挿絵画家の絵を真似しながら、描いては楽しんでいた思い出があります。

そうした中で、ほんの時々ですが、
具体的な、キャラクターだとか、場面や情景とかではなく、
○や△や□、線、点などの、シンプルな形を紙面に散らしていき、
同系色のグラデーションで彩っていくのが好きで、描いたりもしていました。

オットー・ネーベル展のメインビジュアルである、
「ナポリ(「イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)」より)」を見た時、
ふいに蘇ってきたのは、そんな、懐かしい記憶でした。

この人、好きなタイプの画家かもしれない ・・ 。

正直、名前もはじめて聞く方でしたが、
その色づかいや、幾何学的なフォルムの積み重ねに魅かれて、
相変わらずの会期終了間際ながら、足を運んでみたところ、大正解!
とても興味深く、充実した鑑賞機会を得ることができました。

本展の構成は以下の通りです。
(印象に残った作品は、タイトルを記します)。

 プロローグ オットー・ネーベル ―「シュトゥルム」と「バウハウス」時代の芸術家
  ■展示作品:24点
    ◇無題(1925年3月発行「シュトゥルム」第16巻、第3号、45ページに掲載)

 1. 初期作品
  ■展示作品:16点
    ◇コッヘル、樅の木谷(1925年)
    ◇避難民(1935年)
    ◇スケッチブック「ヘルヴェティア1、ベルン、ムルテン、モンティリエ(ムンテリアー)」(1933年)
    ◇いにしえの庭に生い茂る(*パウル・クレー作 1919年)
    ◇恥辱(*パウル・クレー作 1933年)

 2. 建築的景観
  ■展示作品:8点
    ◇聖母の月とともに(1931年)

 3. 大聖堂とカテドラル
  ■展示作品:5点
    ◇連作<パリのおみやげ>より(1929年)
    ◇青い広間(1930年、1941年)
    ◇煉瓦の大聖堂(1934年、1947年)
    ◇緑の隠遁所への門(1936年)

 4. イタリアの色彩
  ■展示作品:10点
    ◇『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』(1931年)
    ◇シエナIII(1932年)

 5. 千の眺めの町 ムサルターヤ
  ■展示作品:5点

 6. 「音楽的」作品
  ■展示作品:10点
    ◇アニマート(生き生きと)(1938年)

 7. 抽象 / 非対象
  ■展示作品:23点
    ◇赤く鳴り響く(1935年、1945年)
    ◇黄色がひらひら(1939年)
    ◇輝く黄色の出来事(1937年)
    ◇小さな世界4(*ワシリー・カンディンスキー作 1922年)

 8. ルーン文字の言葉と絵画
  ■展示作品:16点
    ◇冬の構成(1940年)
    ◇満月のもとのルーン文字(1954年)

 9. 近東シリーズ
  ■展示作品:4点

 10. 演劇と仮面
  ■展示作品:11点

 11. リノカットとコラージュ ― ネーベルの技法の多様性
  ■展示作品:8点
    ◇ヴェールの舞(1959年)


私は黄色系の色が結構好きなので、事前に出展作品を公式サイトで見ていた時も、
黄色系をメインカラーにしたり、ポイント的に配色している絵が、特に好印象だったのですが、
実際、展示会場で実物を見たところ、それらの作品ももちろんステキながら、
赤色系のグラデーションが際立って美しいという、驚きがありました。

また、細かくこまかく、何色もの彩りを緻密に重ねていく筆遣いも素晴らしく、
まるで、様々な色に染められた縦糸、横糸で織られたツイードみたいで、圧倒されました。

オットー・ネーベルという人は、画家としてだけではなく、
建築技術を学び、俳優としても舞台に立ち、詩作も手がけた多才な方なのですが、
彼の活動した時期は二つの大戦期と重なっており、WWIでは軍役中に戦争捕虜を経験し、
ナチスが政権を握って以降は、故国ドイツからスイスへの亡命を余儀なくされました。

本展では動画なども使い、世界史的にも、美術史的にも、
当時の時代背景について丁寧な解説があり、いろいろと思いを巡らせながらの鑑賞でした。

1年の終わりに、良い展覧会を見ることができて満足です♪



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