2013年も、既に半月が過ぎてしまいました。
今年最初の更新は、映画「ホビット -思いがけない冒険-」の感想です。
公開から1ヶ月がたっているため、大丈夫かとは思いますが、
ネタバレ(原作含)要素がありますので、ご注意ください。
*~*~*~*~*~*~*~*~*
まずは、全体の印象から。
映画LotR三部作の、サー・PJらしいテイストを前面に、
要所々々で、原作「ホビットの冒険」に見られる明るさを、
うまく取り混ぜた作品になっていました。
原作の "ほのぼのした味わい" は、さすがに薄れてしまっていますが、
この、新たな三部作の主人公である、
ビルボ・バギンズ と トーリン・オーケンシールド とに、
しっかりと焦点をあてて、上手く、
序章としてのドラマを作っていたように思います。
ドワーフたちの絆を、タフな明るさとともに描いていたのも良かった。
しかも、袋小路屋敷で、ちゃんと歌ってくれたし♪
まさか、あるとは思わなかった、皿洗いの歌はもちろんですが、
予告編でもグッときた、はなれ山の歌が、本当にスゴク良いですね。
この歌、ドワーフ13人衆の歌声で、是非ともフルコーラス聴いてみたいです。
今回の第一部は、原作の全19章のうちの第6章まで、
ちょうど三分の一にあたるところまでが、描かれていました。
しかも、「指輪物語:追補編」や「終わらざりし物語」から、
関連箇所を引っ張ってきて、見事にストーリーを補完しています。
何より、往時の "谷間の国" や "エレボールの王国" の様子が、
きっちりとビジュアルで見せられ、語られたことで、
トーリンを筆頭にした、ドワーフたちの抱く、
"故郷を取り戻したい" という切実な願いが、強くつたわってきて、
思いがけずに、彼らと旅立つことになったビルボが、
過酷な旅のさ中に、我が家への想いを馳せるとき、
ドワーフたちの望郷の念に思い至ることで、
彼らとの間に、真の "旅の仲間" としての結びつきが生まれるまでを、
物語として、きれいな流れでまとめてありました。
三部作化、今のところは上手くいっているようですね。
ただし、最後の最後まで、自分の目で確かめてみないことには、
どっちに転ぶのか分からないのがPJ'sクオリティ ・・
ということを、前三部作で学習ズミなので(苦笑)、
続く、残り二作の公開を、油断せずに待ちたいと思います。
ちなみに、現時点での鑑賞回数は2回。
1回目がHFR3D字幕で、2回目が2D字幕でした。
どちらが良いかは、たぶん、個人の好みによるのではないかな?
HFR3Dは動きが滑らかで、画面が明るく隅々まで見えるため、
山の上の石の巨人や、山の底の大ゴブリンの王国のシーンなど、
動きが激しい場面が、こと細かに、よ~く見えて、
なかなか面白い、映像体験ではありました。
一方で、"やっと、中つ国に帰って来られた!" という懐かしさを、
何より強く感じることができたのは、私の場合、2D字幕で鑑賞したとき。
どうしても、前三部作との連続性を、いろいろな面で求めてしまうので、
"視覚的要素" という、映画で大きな割合を占める部分で、
従来との差異が少ないフォーマットの方に、個人的には、軍配が上がりました。
( でも、石の巨人の場面は、2Dだと動きがよく見えなかったのが残念。。 )
*~*~*~*
この後は、登場人物ごとに、簡単な感想をまとめていきたい思います。
【初登場組】
■ビルボ・バギンズ ( Bilbo Baggins / cast:Martin Freeman )
今作の最大の見どころは、なんと言っても、マーティン・フリーマン演じるビルボ・バギンズです。
ビルボといえば、映画FotRでのサー・イアン・ホルムの演技が大変素晴らしかったこともあり、
M・フリーマンver.の スチール画 を初めて見たときには、今ひとつ、ぴんと来なかったのですが、
予告編で、動いているM・フリーマンのビルボを見た途端に、その印象はガラっと変わりました。
表情の作り方や、動作などに、サー・I・ホルムの仕草も巧みに取り入れつつ、
演じているというよりも、ビルボ・バギンズそのものとして、画面の中に存在していました。
この印象は、映画本編を見てますます強くなり、ものすごく幸せなキャスティングに大満足です。
あと、これは偶然なのでしょうが、アングルによっては時々、
前三部作でB・ボイドが演じたピピンに似ているように見える瞬間もあって、
さすが、トゥック家の血筋だわ~とか、勝手に思っております(笑)
原作でも、物語の後半になればなる程、ビルボの活躍する場面が満載なので、
M・フリーマンのビルボで、それらのシーンを見られると思うと、今から楽しみで仕方がありません♪
■13人のドワーフ
ここまでしっかり、13人のキャラクターを描き分けてきたことに感心しました。
予習画像で、ちゃんと顔と名前を一致させておいて良かった!
ビルボとのやり取りもあって目立つのは、トーリン 、バーリン 、ボフール 、キーリ、フィーリ 。
戦いの場面でさり気なく活躍しているのが、ドワーリン 、ビフール 、オイン 、ノーリ 。
裂け谷のエルフたちの前で、乱暴な物言いをする グローイン は、後のギムリとそっくりだし、
世話焼き気質っぽいドーリと、末っ子のオーリ に、食いしん坊の ボンブール 。
台詞の多さや、注目シーンの有無などに、偏りが出てきてしまうのは、
この大所帯である以上は仕方がないけれど(人数カウントのシーンが何度もあって可笑しかった)、
続く二作でも、各々の個性をうまく引き出していってほしいです。
しかし、トーリンはすごく情に厚くて、だけど不器用で。。
王国を失った流浪の民として、大ゴブリンに蔑まれていた場面は、
見ているこちらも結構ツラかった。そりゃあ、頑なにもなるでしょう。
ドワーフ族の若き王トーリンが、物語後半にどう描かれていくのか、気になります。
私の一押しドワーフ、バーリンとの信頼関係というか、絆がすごく伝わってきたのも良かったな。
■茶色のラダガスト ( Radagast the Brown / cast:Sylvester McCoy )
西方の地より中つ国に渡ってきた、5人のイスタリの1人で、
闇の森の近くにある、ロスゴベルに暮らしています。
原作「ホビットの冒険」には名前だけが登場、「指輪物語」ではガンダルフが語る回想場面に出てきました。
しかし、映画LotR三部作では出演がなかったため、一部の原作既読者からは、
オルサンクの塔のシーンなどに登場した "蛾 = ラダガスト?" と言われてしまっていたのですが、
今回、めでたく映画初登場となりましたね。 兎橇、楽しそう♪ ウサギさんたちも可愛かったし。
そう言えば、ハリネズミのセバスチャンという名前、出どころはどこなのでしょうか?
囮作戦(何だか、迷走していた感もありますが)の後は、姿が見えなくなってしまいましたが、
第二部以降にも出番はあるのかな?
■スランドゥイル王 ( Thranduil / cast:Lee Pace )
登場するのは第二部からだとばかり思っていたので、
いきなりスクリーン上に現れたときには、びっくりしました。
原作通り、季節の花冠をかぶった、実に一癖ありそうな強烈なルックスです。
エレボールがスマウグに襲われた時に、目の前まで来ながらも、
助けることなく引き返していったというのは、今回の映画オリジナルの脚色で、
中つ国における、"エルフ族とドワーフ族の不仲" というのを、強調したかったのだろうとは思いますが、
原作のスランドゥイルは、個性が強いけれども、いざという時にはちゃんと王様らしかったハズなので、
(たての湖の町の救援に行ったり、黄金をめぐっての戦いは控えたいと言ったり、とか)
このアレンジが、今後の展開に、妙に影響しなければ良いなぁ ・・ と思います。
ちなみに、この王様の息子が、「指輪物語」のレゴラスです。
■アゾグ ( Azog / cast:Manu Bennett )
トーリンの祖父スロールの仇敵であるアゾグは、原作だと、エレボールへの遠征時には生きていません。
映画でも描かれた、モリアの前で繰り広げられた「アザヌルビザールの戦い」で、
トーリンの従弟にあたる、くろがね連山の、鉄の足ダインによって討ち取られているからです。
映画では、トーリンのドラマを掘り下げるために、こうした改変を施したのでしょう。
この改変自体は、第二部以降の物語で、引き続きどう描かれていくのか興味深いのですが、
アゾグのビジュアルについては、賛否両論というより、個人的には "否" という感じでした。
何だか、中つ国の世界観から浮いているようで、HFR3Dでの鑑賞時に、特に違和感をおぼえました。
まぁ、この異質性こそが、アゾグの残忍性に繋がるという解釈なのかもしれませんが。。
■死人遣い ( Necromancer / cast:Benedict Cumberbatch )
一瞬だけの登場でしたが、エンディングにちゃんと役者さんの名前があったので。
「指輪物語」のサウロンです。まだ、本拠地であるモルドールのバラド=ドゥアが復活していない為、
この時代は、別名で、闇の森にほど近いドル・グルドゥアの砦を拠点としています。
( ナズグルの首領であるアングマールの魔王まで登場して、懐かしかったです(笑) )。
本格的な登場は、予告編にあったガンダルフのドル・グルドゥア潜入も含めて、第二部以降待ちですね。
ちなみに、中の役者さんは、第二部ではスマウグの声も演じる予定ですね。
【LotRからの続投組】
■老ビルボ と フロド
この二人の登場シーンは、予告編でも見ていたのですが、
やはり、袋小路屋敷で幸せに暮らしていた頃の二人の姿を、
大きなスクリーンで観ることができると、心に沁みてくるものがあります。
映画の導入部として、赤表紙本を書き始めた老ビルボに、
谷間の国と、エレボールの繁栄を語らせるというのは、上手いアレンジですね。
ちょっと誇らしげに、ドワーフたちの王国を話すビルボの口調に、
これから語られる "ビルボの旅" で、いかに、ドワーフたちとの絆が育まれていったかがうかがわれて、
物語の中に、すんなりと引き込まれていきます。
今回の老ビルボとフロドの登場シーンは、実は、映画FotR冒頭の袋小路屋敷の場面に
続いていく内容なのですが、ちょっとした矛盾があるのは、ご愛嬌ということで(笑)。
■ガンダルフ
とんがり帽子をかぶった、灰色のガンダルフですよ~。 フフフっ♪
ガン爺は、本当にホビットのことが好きなんですね。
ガラドリエル様に、何故、ホビットを旅に同行させるのかを問われ、
ビルボを選んだ理由を説明するガンダルフが、印象的でした。
そして、相も変わらず、メッセンジャーとして "蛾" を使っているんですね(笑)
■エルロンド
映画LotR三部作よりも、原作により近い解釈となっていて、
今回の方が断然、エルロンド卿らしくて恰好良いです。 まさか、馬上姿まで拝めるとは!
( ドワーフたちがオークの急襲を受けていた際に聞こえてきた角笛は、
映画TTTで、ヘルム峡谷に援軍として来た、裂け谷のエルフ軍のそれと同じ音色でしたね )
裂け谷の様子も、原作のように "ツラララ、ラリ~♪" とか、
エルフの皆さんが歌うことは、さすがにありませんでしたが、
音楽が奏でられる、なかなか良い雰囲気で、LotR公開時に抱いた不満 も、無事解消されました(笑)。
■ガラドリエル
エルフの奥方様は、映画LotR三部作の時にも、
原作以上に、その神聖さを強調されていたように思いましたが、
今回はまた、さらに一段と、パワーアップしていらっしゃいました(笑)。
ガラドリエルは、「ホビットの冒険」の原作には登場しませんが、
PJ版の中つ国には、絶対に欠かせない人物として、ますます、存在感が強くなっています。
■サルマン
白の魔法使いサルマン様も、"白の会議" を主宰する賢人として、映画にご登場です。
サルマンがパランティアを使用して、冥王サウロンの策に嵌まり、
"白の会議" を完全に裏切るのは、これより50~60年ほど後のことになりますが、
既にこの時点で、サルマンは "一つの指輪" の研究をすすめ、
それを我が物とするために、会議には報告せず、裏でいろいろと画策していたことが、
「指輪物語:追補編」や「終わらざりし物語」を読むとわかります。
映画の会議の場面で、ガンダルフの話を否定し、反対していたのも、その表れでしょう。
■ゴラム
あの声が聞こえてきて、ゴラムが登場した途端に、目が釘付けでした。
ビルボとのなぞなぞ合戦のシークエンスは、素晴らしく、秀逸。
こんなに大掛かりな作品で、なぞなぞが、こんなにも見応えある場面になるなんて!
映画LotR三部作で見てきた、ゴラムのあれこれが記憶に残っているので、
なぞなぞを考える時に、お婆ちゃんとの会話を思い出すところとか、結構きてしまいます。
指輪を落としたことに気づいたゴラムが、ビルボを追いかける段になっても、
やっぱり、目が離せませんでした。
すでに出口まで来てしまっているのに、ビルボの姿を見失ったままのゴラムが、
涙を一筋流すところなんて、もう、本当に可哀相で。
そして、ビルボの "pity" の場面ですよ。
つらぬき丸を構え、ゴラムにとどめを刺そうとしたビルボが、
ゴラムを哀れに思い、逡巡して、剣を下げるまでの、
台詞はまったく無いけれど、表情がすべてを物語っている見事な演技。
「最も勇気が試されるのは、命を助ける時」
という、つらぬき丸を渡された時の、ガンダルフの言葉が、
ちゃんと、ビルボの中に生きているんですね。
そう言えば、ビルボがはじめて指輪を嵌めたときの様子は、
映画FotRの躍る小馬亭で、フロドが誤って指輪を嵌めてしまったときとそっくりでした。
指輪の意志がはたらいている事を意図した "表現" 、ということでしょうか。
*~*~*~*
ということで、
上映時間170分という長さも、あっという間に過ぎるほどに、相変わらず情報量満載の作品です。
かなり頑張って観ていたつもりですが、まだまだ、記憶違いや見落としもありそうな感じ。
また、アーケン石、大鷲の一族、大ガラス、ツグミ、ビルボの銀食器 等の、
次回作以降で、いろいろと関わってくる、原作からの小ネタもたっぷり登場していて、
第二部、第三部の公開が待ち遠しいです。
第一部「思いがけない冒険」も、時間をつくって、もう一回くらいは観に行きたいですね。
前三部作と違って、今回は、超強力な布陣での字幕監修も付いているので、
行くなら、やっぱり、字幕版かな。
ちなみに、映画LotR三部作の公開時には、
海外の熱心な複数のファンサイトで、transcript を書き起こしてくれていましたが、
今回も、Council-of-Elrondさんの こちらのページ で、transcript の作成を試みているようです。
また、TORnの こちらの記事 のリンク先でも、transcript を見られるようなのですが、
我が家のPCだと画面を開く途中で固まってしまい、残念ながら、まだ確かめられていません。
PJ版の新たな三部作である「ホビット」シリーズも、
何だかだと、最後まで楽しめそうで、ちょっと幸せな気分です。
*~*~*~*~*~*~*~*~*
今年最初の更新は、映画「ホビット -思いがけない冒険-」の感想です。
公開から1ヶ月がたっているため、大丈夫かとは思いますが、
ネタバレ(原作含)要素がありますので、ご注意ください。
*~*~*~*~*~*~*~*~*
まずは、全体の印象から。
映画LotR三部作の、サー・PJらしいテイストを前面に、
要所々々で、原作「ホビットの冒険」に見られる明るさを、
うまく取り混ぜた作品になっていました。
原作の "ほのぼのした味わい" は、さすがに薄れてしまっていますが、
この、新たな三部作の主人公である、
ビルボ・バギンズ と トーリン・オーケンシールド とに、
しっかりと焦点をあてて、上手く、
序章としてのドラマを作っていたように思います。
ドワーフたちの絆を、タフな明るさとともに描いていたのも良かった。
しかも、袋小路屋敷で、ちゃんと歌ってくれたし♪
まさか、あるとは思わなかった、皿洗いの歌はもちろんですが、
予告編でもグッときた、はなれ山の歌が、本当にスゴク良いですね。
この歌、ドワーフ13人衆の歌声で、是非ともフルコーラス聴いてみたいです。
今回の第一部は、原作の全19章のうちの第6章まで、
ちょうど三分の一にあたるところまでが、描かれていました。
しかも、「指輪物語:追補編」や「終わらざりし物語」から、
関連箇所を引っ張ってきて、見事にストーリーを補完しています。
何より、往時の "谷間の国" や "エレボールの王国" の様子が、
きっちりとビジュアルで見せられ、語られたことで、
トーリンを筆頭にした、ドワーフたちの抱く、
"故郷を取り戻したい" という切実な願いが、強くつたわってきて、
思いがけずに、彼らと旅立つことになったビルボが、
過酷な旅のさ中に、我が家への想いを馳せるとき、
ドワーフたちの望郷の念に思い至ることで、
彼らとの間に、真の "旅の仲間" としての結びつきが生まれるまでを、
物語として、きれいな流れでまとめてありました。
三部作化、今のところは上手くいっているようですね。
ただし、最後の最後まで、自分の目で確かめてみないことには、
どっちに転ぶのか分からないのがPJ'sクオリティ ・・
ということを、前三部作で学習ズミなので(苦笑)、
続く、残り二作の公開を、油断せずに待ちたいと思います。
ちなみに、現時点での鑑賞回数は2回。
1回目がHFR3D字幕で、2回目が2D字幕でした。
どちらが良いかは、たぶん、個人の好みによるのではないかな?
HFR3Dは動きが滑らかで、画面が明るく隅々まで見えるため、
山の上の石の巨人や、山の底の大ゴブリンの王国のシーンなど、
動きが激しい場面が、こと細かに、よ~く見えて、
なかなか面白い、映像体験ではありました。
一方で、"やっと、中つ国に帰って来られた!" という懐かしさを、
何より強く感じることができたのは、私の場合、2D字幕で鑑賞したとき。
どうしても、前三部作との連続性を、いろいろな面で求めてしまうので、
"視覚的要素" という、映画で大きな割合を占める部分で、
従来との差異が少ないフォーマットの方に、個人的には、軍配が上がりました。
( でも、石の巨人の場面は、2Dだと動きがよく見えなかったのが残念。。 )
*~*~*~*
この後は、登場人物ごとに、簡単な感想をまとめていきたい思います。
【初登場組】
■ビルボ・バギンズ ( Bilbo Baggins / cast:Martin Freeman )
今作の最大の見どころは、なんと言っても、マーティン・フリーマン演じるビルボ・バギンズです。
ビルボといえば、映画FotRでのサー・イアン・ホルムの演技が大変素晴らしかったこともあり、
M・フリーマンver.の スチール画 を初めて見たときには、今ひとつ、ぴんと来なかったのですが、
予告編で、動いているM・フリーマンのビルボを見た途端に、その印象はガラっと変わりました。
表情の作り方や、動作などに、サー・I・ホルムの仕草も巧みに取り入れつつ、
演じているというよりも、ビルボ・バギンズそのものとして、画面の中に存在していました。
この印象は、映画本編を見てますます強くなり、ものすごく幸せなキャスティングに大満足です。
あと、これは偶然なのでしょうが、アングルによっては時々、
前三部作でB・ボイドが演じたピピンに似ているように見える瞬間もあって、
さすが、トゥック家の血筋だわ~とか、勝手に思っております(笑)
原作でも、物語の後半になればなる程、ビルボの活躍する場面が満載なので、
M・フリーマンのビルボで、それらのシーンを見られると思うと、今から楽しみで仕方がありません♪
■13人のドワーフ
ここまでしっかり、13人のキャラクターを描き分けてきたことに感心しました。
予習画像で、ちゃんと顔と名前を一致させておいて良かった!
ビルボとのやり取りもあって目立つのは、トーリン 、バーリン 、ボフール 、キーリ、フィーリ 。
戦いの場面でさり気なく活躍しているのが、ドワーリン 、ビフール 、オイン 、ノーリ 。
裂け谷のエルフたちの前で、乱暴な物言いをする グローイン は、後のギムリとそっくりだし、
世話焼き気質っぽいドーリと、末っ子のオーリ に、食いしん坊の ボンブール 。
台詞の多さや、注目シーンの有無などに、偏りが出てきてしまうのは、
この大所帯である以上は仕方がないけれど(人数カウントのシーンが何度もあって可笑しかった)、
続く二作でも、各々の個性をうまく引き出していってほしいです。
しかし、トーリンはすごく情に厚くて、だけど不器用で。。
王国を失った流浪の民として、大ゴブリンに蔑まれていた場面は、
見ているこちらも結構ツラかった。そりゃあ、頑なにもなるでしょう。
ドワーフ族の若き王トーリンが、物語後半にどう描かれていくのか、気になります。
私の一押しドワーフ、バーリンとの信頼関係というか、絆がすごく伝わってきたのも良かったな。
■茶色のラダガスト ( Radagast the Brown / cast:Sylvester McCoy )
西方の地より中つ国に渡ってきた、5人のイスタリの1人で、
闇の森の近くにある、ロスゴベルに暮らしています。
原作「ホビットの冒険」には名前だけが登場、「指輪物語」ではガンダルフが語る回想場面に出てきました。
しかし、映画LotR三部作では出演がなかったため、一部の原作既読者からは、
オルサンクの塔のシーンなどに登場した "蛾 = ラダガスト?" と言われてしまっていたのですが、
今回、めでたく映画初登場となりましたね。 兎橇、楽しそう♪ ウサギさんたちも可愛かったし。
そう言えば、ハリネズミのセバスチャンという名前、出どころはどこなのでしょうか?
囮作戦(何だか、迷走していた感もありますが)の後は、姿が見えなくなってしまいましたが、
第二部以降にも出番はあるのかな?
■スランドゥイル王 ( Thranduil / cast:Lee Pace )
登場するのは第二部からだとばかり思っていたので、
いきなりスクリーン上に現れたときには、びっくりしました。
原作通り、季節の花冠をかぶった、実に一癖ありそうな強烈なルックスです。
エレボールがスマウグに襲われた時に、目の前まで来ながらも、
助けることなく引き返していったというのは、今回の映画オリジナルの脚色で、
中つ国における、"エルフ族とドワーフ族の不仲" というのを、強調したかったのだろうとは思いますが、
原作のスランドゥイルは、個性が強いけれども、いざという時にはちゃんと王様らしかったハズなので、
(たての湖の町の救援に行ったり、黄金をめぐっての戦いは控えたいと言ったり、とか)
このアレンジが、今後の展開に、妙に影響しなければ良いなぁ ・・ と思います。
ちなみに、この王様の息子が、「指輪物語」のレゴラスです。
■アゾグ ( Azog / cast:Manu Bennett )
トーリンの祖父スロールの仇敵であるアゾグは、原作だと、エレボールへの遠征時には生きていません。
映画でも描かれた、モリアの前で繰り広げられた「アザヌルビザールの戦い」で、
トーリンの従弟にあたる、くろがね連山の、鉄の足ダインによって討ち取られているからです。
映画では、トーリンのドラマを掘り下げるために、こうした改変を施したのでしょう。
この改変自体は、第二部以降の物語で、引き続きどう描かれていくのか興味深いのですが、
アゾグのビジュアルについては、賛否両論というより、個人的には "否" という感じでした。
何だか、中つ国の世界観から浮いているようで、HFR3Dでの鑑賞時に、特に違和感をおぼえました。
まぁ、この異質性こそが、アゾグの残忍性に繋がるという解釈なのかもしれませんが。。
■死人遣い ( Necromancer / cast:Benedict Cumberbatch )
一瞬だけの登場でしたが、エンディングにちゃんと役者さんの名前があったので。
「指輪物語」のサウロンです。まだ、本拠地であるモルドールのバラド=ドゥアが復活していない為、
この時代は、別名で、闇の森にほど近いドル・グルドゥアの砦を拠点としています。
( ナズグルの首領であるアングマールの魔王まで登場して、懐かしかったです(笑) )。
本格的な登場は、予告編にあったガンダルフのドル・グルドゥア潜入も含めて、第二部以降待ちですね。
ちなみに、中の役者さんは、第二部ではスマウグの声も演じる予定ですね。
【LotRからの続投組】
■老ビルボ と フロド
この二人の登場シーンは、予告編でも見ていたのですが、
やはり、袋小路屋敷で幸せに暮らしていた頃の二人の姿を、
大きなスクリーンで観ることができると、心に沁みてくるものがあります。
映画の導入部として、赤表紙本を書き始めた老ビルボに、
谷間の国と、エレボールの繁栄を語らせるというのは、上手いアレンジですね。
ちょっと誇らしげに、ドワーフたちの王国を話すビルボの口調に、
これから語られる "ビルボの旅" で、いかに、ドワーフたちとの絆が育まれていったかがうかがわれて、
物語の中に、すんなりと引き込まれていきます。
今回の老ビルボとフロドの登場シーンは、実は、映画FotR冒頭の袋小路屋敷の場面に
続いていく内容なのですが、ちょっとした矛盾があるのは、ご愛嬌ということで(笑)。
■ガンダルフ
とんがり帽子をかぶった、灰色のガンダルフですよ~。 フフフっ♪
ガン爺は、本当にホビットのことが好きなんですね。
ガラドリエル様に、何故、ホビットを旅に同行させるのかを問われ、
ビルボを選んだ理由を説明するガンダルフが、印象的でした。
そして、相も変わらず、メッセンジャーとして "蛾" を使っているんですね(笑)
■エルロンド
映画LotR三部作よりも、原作により近い解釈となっていて、
今回の方が断然、エルロンド卿らしくて恰好良いです。 まさか、馬上姿まで拝めるとは!
( ドワーフたちがオークの急襲を受けていた際に聞こえてきた角笛は、
映画TTTで、ヘルム峡谷に援軍として来た、裂け谷のエルフ軍のそれと同じ音色でしたね )
裂け谷の様子も、原作のように "ツラララ、ラリ~♪" とか、
エルフの皆さんが歌うことは、さすがにありませんでしたが、
音楽が奏でられる、なかなか良い雰囲気で、LotR公開時に抱いた不満 も、無事解消されました(笑)。
■ガラドリエル
エルフの奥方様は、映画LotR三部作の時にも、
原作以上に、その神聖さを強調されていたように思いましたが、
今回はまた、さらに一段と、パワーアップしていらっしゃいました(笑)。
ガラドリエルは、「ホビットの冒険」の原作には登場しませんが、
PJ版の中つ国には、絶対に欠かせない人物として、ますます、存在感が強くなっています。
■サルマン
白の魔法使いサルマン様も、"白の会議" を主宰する賢人として、映画にご登場です。
サルマンがパランティアを使用して、冥王サウロンの策に嵌まり、
"白の会議" を完全に裏切るのは、これより50~60年ほど後のことになりますが、
既にこの時点で、サルマンは "一つの指輪" の研究をすすめ、
それを我が物とするために、会議には報告せず、裏でいろいろと画策していたことが、
「指輪物語:追補編」や「終わらざりし物語」を読むとわかります。
映画の会議の場面で、ガンダルフの話を否定し、反対していたのも、その表れでしょう。
■ゴラム
あの声が聞こえてきて、ゴラムが登場した途端に、目が釘付けでした。
ビルボとのなぞなぞ合戦のシークエンスは、素晴らしく、秀逸。
こんなに大掛かりな作品で、なぞなぞが、こんなにも見応えある場面になるなんて!
映画LotR三部作で見てきた、ゴラムのあれこれが記憶に残っているので、
なぞなぞを考える時に、お婆ちゃんとの会話を思い出すところとか、結構きてしまいます。
指輪を落としたことに気づいたゴラムが、ビルボを追いかける段になっても、
やっぱり、目が離せませんでした。
すでに出口まで来てしまっているのに、ビルボの姿を見失ったままのゴラムが、
涙を一筋流すところなんて、もう、本当に可哀相で。
そして、ビルボの "pity" の場面ですよ。
つらぬき丸を構え、ゴラムにとどめを刺そうとしたビルボが、
ゴラムを哀れに思い、逡巡して、剣を下げるまでの、
台詞はまったく無いけれど、表情がすべてを物語っている見事な演技。
「最も勇気が試されるのは、命を助ける時」
という、つらぬき丸を渡された時の、ガンダルフの言葉が、
ちゃんと、ビルボの中に生きているんですね。
そう言えば、ビルボがはじめて指輪を嵌めたときの様子は、
映画FotRの躍る小馬亭で、フロドが誤って指輪を嵌めてしまったときとそっくりでした。
指輪の意志がはたらいている事を意図した "表現" 、ということでしょうか。
*~*~*~*
ということで、
上映時間170分という長さも、あっという間に過ぎるほどに、相変わらず情報量満載の作品です。
かなり頑張って観ていたつもりですが、まだまだ、記憶違いや見落としもありそうな感じ。
また、アーケン石、大鷲の一族、大ガラス、ツグミ、ビルボの銀食器 等の、
次回作以降で、いろいろと関わってくる、原作からの小ネタもたっぷり登場していて、
第二部、第三部の公開が待ち遠しいです。
第一部「思いがけない冒険」も、時間をつくって、もう一回くらいは観に行きたいですね。
前三部作と違って、今回は、超強力な布陣での字幕監修も付いているので、
行くなら、やっぱり、字幕版かな。
ちなみに、映画LotR三部作の公開時には、
海外の熱心な複数のファンサイトで、transcript を書き起こしてくれていましたが、
今回も、Council-of-Elrondさんの こちらのページ で、transcript の作成を試みているようです。
また、TORnの こちらの記事 のリンク先でも、transcript を見られるようなのですが、
我が家のPCだと画面を開く途中で固まってしまい、残念ながら、まだ確かめられていません。
PJ版の新たな三部作である「ホビット」シリーズも、
何だかだと、最後まで楽しめそうで、ちょっと幸せな気分です。
*~*~*~*~*~*~*~*~*
映画 『ホビット -思いがけない冒険-』 ◇原題:The Hobbit ~ An Unexpected Journey ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 ) IMDb ( 関連ページ ) ◇鑑賞日:2013.1.1. 他 映画館にて |