末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち

2016-06-30 09:07:46 | PJ版:役者のはなし
都内での上映はしばらく前に終了していますが、
この映画を見た記録は、やはりブログに残しておきたいので、
後れ馳せながら、レビューをアップします。

1961年に行われたアイヒマン裁判の舞台裏、史上初のTVによる裁判中継と、
世界37ヶ国への映像配信に挑んだTVマンたちの姿を描いた本作は、
強制収容所解放70周年を記念して撮られました。
裁判中継の成功に向けて奮闘するTVマンたちの場面を、ドラマ仕立てにする一方で、
彼らが撮影した法廷の映像部分には、実際の記録フィルムが使われています。

正直、評価が分かれる作品だと思いました。

歴史的な裁判を映像に記録したTVマンたちにスポットを当てるという視点には、
すごく面白みを感じるものの、実際に見てみると、
ドラマ部分よりも、間に挿入される記録映像の方に釘付けになってしまうからです。

当然というべきか、リアルな現実には敵わないものですね。

なので、劇映画としては、ドラマの焦点がボヤけてしまった印象ですが、
アウシュヴィッツの実態(の一端)を、後世の観客に "見せて" 伝えるという
映像メディアの使命は、しっかりと果していたように思います。

このあたり、映画製作陣もジレンマだったのではないでしょうか?

私自身は、見て良かったと思っています。プログラムも勉強になりましたし、
ハンナ・アーレント 」や「 顔のないヒトラーたち 」を連想しながら、鑑賞しました。

興味深ったのは、撮影監督のフルヴィッツが当時、
アイヒマンを "我々と同じようなありふれた男" と捉えていた点です。
ハンナ・アーレントの裁判傍聴記事発表以前にも、こうした考え方をする人がいたんですね。
マッカーシズムの煽りで差別される側にいた彼の経歴が、関係しているのでしょうか。

人が "過ち" を繰り返さないためには、"正しい" 情報を知ることと、
それを発信できることとが何より大事なのだと、考えさせられました。

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   映画 『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』

  ◇原題:The Eichmann Show
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 )、IMDb ( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2016.6.14. 映画館にて
       ♪Martin Freeman / Milton Fruchtman