遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

イラク派遣延長の航空自衛隊

2006-12-10 16:48:32 | my notice
 米連邦議会の超党派諮問機関「イラク研究グループ」(ISG)の報告書が、米国及び、部隊を派遣している各国、中東アラブ諸国で、様々な論議を活発化し始めています。
 米英のブッシュ米大統領とブレア英首相の会談では、ISG報告書に対して踏み込んだ発言はなく原則論に留まり、米英の結束を確認されたようです。さらに、米英同盟の結束の重要性を訴えたなかで、ブッシュ大統領は同日(日本時間8日)が65周年にあたる真珠湾攻撃に言及。「大戦では難局にもぶつかったが、米英の指導者は勝利への力に疑問を抱かなかった」と、イラク戦での難局克服を訴えたそうです。
 そんななか、日本政府は8日、イラク復興支援特別措置法に基づく基本計画を変更し、今月14日で期限切れとなる航空自衛隊のイラク国内での空輸活動について、同法の期限である来年7月31日まで約半年間延長することを閣議決定しました。

 共和党の上院までもの大敗で、米国の政策が大転換し、部隊を派遣し共同行動した各国、中東アラブ諸国、当のイラクの人々が翻弄される可能性はないのでしょうか?
 ISG報告書に対し、ブッシュ大統領は評価をしながらも、政策に具体的反映や変化をする発言はなく、駐留米軍の削減勧告については、「柔軟で現実的であることがより大切」などと発言しています。
 
対イラク政策 問題解決、広がる疑問 米英首脳 勧告に終始原則論 (12/09 産経朝刊)

 共同記者会見ではブッシュ大統領が「イラクでの勝利こそがイラク国民、米英の安全、文明世界にとり重要だとの点で一致した」と述べるなど、米英がイラクから手を引くよりも、むしろ積極的な関与を続ける方針を改めて強調した。

 さらに、米英同盟の結束の重要性を訴えたなかで、大統領は同日(日本時間8日)が65周年にあたる真珠湾攻撃に言及。「大戦では難局にもぶつかったが、米英の指導者は勝利への力に疑問を抱かなかった」と、イラク戦での難局克服を訴えた。

 首脳会談では、79項目の勧告を盛り込んだISG報告書をはじめ、米国防、外交当局の分析をもとにイラク情勢や中東全域の政策について意見が交わされた。

 ブレア首相は、イラク政策の見直しについて「成功に何が求められているのかをはっきりさせるべきだ。失敗すれば深刻な結果につながる」と述べており、会談では兵力削減問題のほか、米側が強い難色を示すイラン、シリアとの対話問題でも踏み込んだやりとりがあったもようだ。

 ロイター通信は、ホワイトハウス高官の話として、新たなイラク政策がクリスマス前に公表されるとの見通しを伝えた。

 しかし、大統領は首脳会談後の記者会見で、(1)駐留米軍の削減は状況に即した判断による(2)イラン、シリアとの対話は、核開発やテロ支援の停止が前提-など、報告書の勧告に対しては、すべて従来の原則論を繰り返したに過ぎない。このため新たな政策に、今回の勧告内容がどこまで取り込まれるのかは疑問との声が広がり始めている。

 一方、ベーカー元国務長官らISGの共同座長を呼んで同日行われた上院での公聴会では、次期大統領候補の一人であるマケイン議員(共和党)が報告書の兵力削減勧告に激しく反発。勧告は結果的に陸軍と海兵隊に過剰な負担を強いるとして、「この筋書きに従えば、われわれは早晩、イラクで敗北することになる」と警告した。

 ブレア首相は常々、イラク問題と中東和平をリンクさせており、SGI報告書を「利用」し、ブッシュ大統領にパレスチナ問題への関与を促すとの方針だそうで、ペケット外相は「(報告書の)見解はおおむね我々の見解と一致する」との声明を発表、政府内部で具体的な撤退計画が議論されると見られているそうです。(12/8 読売朝刊)

 韓国、ポーランドもSGI報告書を機に、派遣軍の削減や撤退の繰り上げの検討を始める様子ですが、豪州・ハワード首相は、イラクで民主主義が確立するまで撤退すべきではないとし、「西側がイラクから敗北と受け止められる状況で撤退するのは、テロを増長させることになる。それは米国の威信への打撃であり、豪州にも悪い結果をもたらすことになる。」 と述べています。
 エジプトやイスラエルは当然の事ながら、「米政権が勧告に真剣に取り組むとは考えられない」、「意見が異なる」など、否定的な見解を示しています。
 アルカイダや、イラク政府に反攻している集団が、反米戦争に勝利したと喜んでいるのではないでしょうか。

 元々は、9.16テロのアルカイダに本拠地を提供するアフガニスタンのタリバンを駆逐し、引き続きアルカイダなどのテロを支援し、核兵器を保有するとして、イラクのフセイン政権を排除しようとして始まった戦闘でした。
 フセイン政権を倒し、フセインを死刑判決にしましたが、アルカイダなどの国際テロは依然として活発に活動し、宗教戦争に形を変えることで、イラク国内を内戦状態に導く、彼らの思惑通りの展開となっています。
 なので、米軍他の各国の派遣軍は、シーア派の援軍という立場に陥っていて、シーア派以外のイラク国民や中東アラブ諸国の人たちには、敵にみられている状況です。

 複雑な中東情勢の中を、素人の私が、なぜそんな方向に曲がってしまったのか、テロを支援する政権を倒し、世界が安心して暮らせる路を選ぶ当初の目的に立ち戻るにはどうすれば良いかなど、解るすべがないのですが、テロや、独裁者が喜ぶ路にだけは進まないでほしいものです。

 陸自が撤退した後、被弾覚悟で、命にかかわる危険にさらされながらも任務を果たしている、イラクでの航空自衛隊の任務の状況を書いた記事が、12/8の読売朝刊に載っていましたので紹介します。
 # ずいぶん前振りが長くなってしまいました。
 
 今年9月、バクダッド国際空港に隣接する米軍飛行場への着陸態勢に入った空自C130輸送機の警報装置が突然作動した。
 テロ組織による肩撃ち式携帯ミサイルを探知するため、空自機には、尾翼下など3か所にセンサーが付いており、作動すると同時に、空自機からはミサイルを誘導するフレアと呼ばれる火炎弾が撃ち出された。だが警報はやまず、空自機は急降下しながら機体を左右に急激に切り返して着陸した。
 空自機は、クウェートからバグダットを経由し、イラク北部のアルビルまで往復する予定だったが、空自幹部は「安全装置のフレアをバジダットへの着陸で撃ち尽くしたため、運航をバグダットで打ち切った」と打ち明ける。
<中略>

 順調そうに見える活動だが、活動する上で様々な制約を抱える空自に対し、当初は多国籍軍からの風当たりは強かったという。
 その典型が、「情報」の共有だ。先遣隊長を務めた宮川正・1等空佐は「輸送だけが任務の我々に対し、多国籍軍の情報提供は限定的だった」とはなす。南部地域での空輸に限定されていたころ、多国籍軍司令部の会議に出席した際、機密情報を映していたスクリーンの電源は切られ、会議終了後には、「所用の多いバグダットになぜいかなないんだ」と詰め寄られたこともあるという。
 空輸物資を丹念にチェックし、武器弾薬でないことを確認する様は、多国籍軍の目には奇異に映り、空自が最も必用とした飛行経路上の脅威情報も、思うように提供してもらえなかった。それでも次第に信頼関係を築き、1年後には、米軍が無人偵察機で撮影したテロ組織のアジトなどの映像も提供されたという。
 輸送任務を統括する織田邦男空将は「情報がいかに重要であり、高価であるか、多国籍軍と活動を共にするには何が必用かがよく分かった」と話す。その一方で、「今後の課題は、隊員の士気をどう維持するかだ」と言う。
 政府は自衛隊をイラクに派遣する目的の第一義に、「イラク国民に対する人道復興支援」を掲げている。イラクの人々と直接ふれあう陸自は良かったが、陸自が去った後も活動を続け、イラク国民と接する機会のない空自にとっては、3年前と同じ大義名分を理由に延長されても、士気は落ちるだけだろう。
 北朝鮮のミサイルと核の脅威に直面する日本にとって、日米同盟なくして安全保障戦略は成立し得ない。であるなら、政府はイラクでの空自の活動が同盟の連携強化に貢献し、日本海の安全に結びついていることを、延長理由の第一義としてきちんと明示すべきだ。政府は、被弾覚悟で任務を続けていることを知っているのだろうか。

 テロの攻撃による被弾の命の危険と、多国籍軍との内部の連携の危惧、そして肝心の送り出している日本の長官の意識、政府の弱腰(どこかの国の回し者としか考えられない、反国防論者への配慮)、国民の関心の中での任務と、その継続。
 まさに、世界のテロとの戦いに各国が汗をかき、命をかけているなかで、空自のみなさんが、陸自の撤退の後、南部のクエートから近いタリルに限定した任務を、遙かに遠く危険度の高い、バグダットやアルビルまで拡大し、今回延長して任務にあたったいただけていることで、日本の姿勢が世界にも伝わります。

 インド洋の海自もご苦労いただいていますが、危険と日々向き合った任務に、深く感謝します。



 

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