世界同時株安と景気低迷を招いている原因は、中国経済の低迷と、原油安によるものとの見解は衆知のこととなりましたね。遊爺も何度か言及させていただいていました。
原油安については、最近では40ドル/バレルあたりまで回復して、小康状態を保っていて、産油国間での生産調整の会合が持たれていることは諸兄がご承知の通りです。
しかし、4月にドーハで行われる主要産油国の生産水準維持に関する協議が成立したとしても世界の供給過剰にはほとんど影響を及ぼさない可能性が高く、再び価格下落の可能性が高い。そして、40ドル/バレルでも債務の金利負担にあえいでいる米国のシェールガス企業の破綻が相次ぐこととなり、米国でシェール企業破綻に端を発する「4月危機」が到来する可能性があると指摘する記事がありました。
40ドル/バレルのレベルに価格が回復したとは言え債務の利払いに苦しむシェールガス企業が発行するジャンク債市場には3月に入ると資金が再び流入しているのだそうで、世界の市場関係者はいまだ警戒心が薄いと記事は指摘しています。
金融機関はシェール企業に対するレバレッジドローンを証券化して、世界中の投資家に売りさばくことによりリスク回避を行っているのだと。
これは、リーマンショク前夜と同じですね。
1980年代から1990年代前半にかけて起こった多数のS&Lの経営破綻を記事では類似例として指摘されてしますが、リーマンブラザーズが、サブプライムローンと呼ばれる高リスクの住宅ローンで大規模な損失を計上。 その処理に失敗し、2008年9月15日、連邦裁判所に連邦倒産法第11章を申請、事実上の破産となったことで世界中に金融破綻が広まったのも、不良住宅ローンを証券化して世界中の金融機関が売りさばいたことが原因でしたね。
「S&L危機」か「リーマンショック」の再来を、原油安=米国のシェールガス企業の破綻が招くのか。過去に学んだ金融機関は防げるのか。注目が必要ですね。
# 冒頭の画像は、米コロラド州天然ガス採掘場
アングル:苦境の米シェールガス業界に暖冬が追い打ち | ロイター
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原油安については、最近では40ドル/バレルあたりまで回復して、小康状態を保っていて、産油国間での生産調整の会合が持たれていることは諸兄がご承知の通りです。
しかし、4月にドーハで行われる主要産油国の生産水準維持に関する協議が成立したとしても世界の供給過剰にはほとんど影響を及ぼさない可能性が高く、再び価格下落の可能性が高い。そして、40ドル/バレルでも債務の金利負担にあえいでいる米国のシェールガス企業の破綻が相次ぐこととなり、米国でシェール企業破綻に端を発する「4月危機」が到来する可能性があると指摘する記事がありました。
シェール企業、利払いに窮してバタバタと逝く いよいよ訪れようとしている原油価格下落の正念場 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.3.25(金) 藤 和彦
3月下旬に入り、米WTI原油先物価格は1バレル=40ドル前後で推移している。
米国での原油掘削装置(リグ)稼動数の記録的な減少(約1600 → 約400へ)がようやく効果を発揮し始めた(生産が1年4カ月ぶりの水準に低下した)ことに加え、連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ見送りで米ドルが急落したことも原油相場を後押しした。
原油価格の見通しについて、投機筋は昨年(2015年)6月以降で最も強気になっているという(3月22日付ブルームバーグ)。
その理由はなんと言っても、4月17日に主要産油国が集まるカタールの首都ドーハでの会合で、生産抑制に向けてなんらかの合意が成立するとの期待である。
3月21日、OPECのパドリ事務局長は「原油価格は適度な水準で回復する」との見方を示した。しかし、4月のドーハでの会合で具体的な合意ができなければ相場が反転することは明らかである。
さらに筆者は、生産水準維持に関する協議が成立したとしても世界の供給過剰にはほとんど影響を及ぼさない可能性が高い、と考えている。理由は次のとおりだ。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、今年原油の生産を増加させるのはイラン、ブラジル、アルゼンチン、赤道ギニアだ。このうちイランとブラジルは増産を凍結する意向はない。また、アルゼンチン、赤道ギニアが増産凍結に合意しても、抑制される原油供給は日量5万バレルに過ぎず、世界の供給過剰分(日量約200万バレル)の2.5%にすぎない。OPECが6月の総会で減産を決定する可能性も低い(3月1日付ロイター)。
■大幅に増加しそうなシェール企業の破綻
昨年1月に1バレル=40ドル台に下落した原油価格は、その後上昇に転じ、6月には同60ドルに届く勢いだった。だが、6月に開催されたOPEC総会で予想に反して生産据え置きが決定されると再び下落に転じ、同30ドル台後半で年末を迎えた。
今年1月に1バレル=26ドル台だった原油価格は約40%上昇した。しかしこのまま上昇することはなく、年末までにさらなる安値を記録するという昨年の「二の舞」になるのではないだろうか。
その理由は、シェール企業の破綻が今後大幅に増加する可能性が高いからである。
原油価格は回復基調にあるため、シェール企業の一部には増産の動きが出ている。だが、シェール企業全体が利益をあげる水準にはほど遠い。
<中略>
シェール企業各社の2月期決算を見ると、売上高は低油価のせいで軒並み前年比35~55%減少し、稼動リグ数も各社は大幅に本数を減らしている。リグ1本当たりの生産量を大幅に増やしているため生産量は前年比横ばいの企業が多いが、原油価格が1バレル=40ドルになっても、各社にとって債務の利払いのための資金調達が困難なことに変わりはない。
■米国の石油生産企業の3分の1が年内に破綻?
シェール企業(ガス系を含む)の破綻件数は2013年が15社、2014年が14社と低位で推移してきたが、2015年には67社と急増した(破綻の大半は年後半に発生した)。67件のうち原油系企業は42社であり、地域別にはテキサス州が18社と最も多かった。
シェール企業各社は、キャッシュフローを確実にするとの理由から1年後の原油価格を確定することを金融機関から義務付けられていた(原油先物の「売り」を行う)。そのため、昨年前半までは原油先物の売りと原油現物の買い戻しから生ずる差益を稼ぐことができ、これを操業資金等に充当してきた。しかし今年に入るとその錬金術が使えなくなった。融資に占めるエネルギー企業の比率が高い金融機関の株価が下落傾向にある(2月9日付日本経済新聞)ため、4月以降に集中する金融機関との交渉で、融資が打ち切られるシェール企業が続出することが懸念されている。
<中略>
原油価格の上昇で一息ついた感があるが、負債総額約110億ドルを抱えるチェサピーク・エナジーが破綻すれば、シェール企業の連鎖倒産が起き、金融市場に衝撃が走るだろう。
■80年代後半の「S&L危機」が再来か
<中略>
今回も、テキサス州を中心にシェール企業の大量破綻が生じ、その救済コストが多額に上る可能性がある。
■世界の地政学的リスクはますます上昇
シェール企業の大量破綻は、米国以外の他の金融市場にも悪影響を及ぼす。
今年に入ってからのシェール企業の破綻総数はつかめていないが、年間を通して優に100社を超えることが予想される。だが、シェール企業が発行しているジャンク債市場には3月に入ると資金が再び流入しており(3月11日付ロイター)、世界の市場関係者はいまだ警戒心が薄い。
S&L危機の時とは異なり、金融機関はシェール企業に対するレバレッジド(ハイリスク・ハイリターン)ローンを証券化して、世界中の投資家に売りさばくことによりリスク回避を行っている。しかし、チェサピーク・エナジーのような大型シェール企業が破綻し、金融市場に混乱が生じれば、金融商品化した原油先物価格は暴落する。
その後に金融危機が来るかどうかは「神のみぞ知る」だが、米国でシェール企業破綻に端を発する「4月危機」が来れば、ヒートアップしている米国の大統領選挙への(悪)影響も大きいだろう。さらに原油価格のさらなる急落は産油国経済を直撃し、世界のいわゆる地政学的リスクはますます上昇することは論を待たない。
今回の原油価格下落の正念場がいよいよ訪れようとしている。その結末ははたしてどうなるのだろうか。
3月下旬に入り、米WTI原油先物価格は1バレル=40ドル前後で推移している。
米国での原油掘削装置(リグ)稼動数の記録的な減少(約1600 → 約400へ)がようやく効果を発揮し始めた(生産が1年4カ月ぶりの水準に低下した)ことに加え、連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ見送りで米ドルが急落したことも原油相場を後押しした。
原油価格の見通しについて、投機筋は昨年(2015年)6月以降で最も強気になっているという(3月22日付ブルームバーグ)。
その理由はなんと言っても、4月17日に主要産油国が集まるカタールの首都ドーハでの会合で、生産抑制に向けてなんらかの合意が成立するとの期待である。
3月21日、OPECのパドリ事務局長は「原油価格は適度な水準で回復する」との見方を示した。しかし、4月のドーハでの会合で具体的な合意ができなければ相場が反転することは明らかである。
さらに筆者は、生産水準維持に関する協議が成立したとしても世界の供給過剰にはほとんど影響を及ぼさない可能性が高い、と考えている。理由は次のとおりだ。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、今年原油の生産を増加させるのはイラン、ブラジル、アルゼンチン、赤道ギニアだ。このうちイランとブラジルは増産を凍結する意向はない。また、アルゼンチン、赤道ギニアが増産凍結に合意しても、抑制される原油供給は日量5万バレルに過ぎず、世界の供給過剰分(日量約200万バレル)の2.5%にすぎない。OPECが6月の総会で減産を決定する可能性も低い(3月1日付ロイター)。
■大幅に増加しそうなシェール企業の破綻
昨年1月に1バレル=40ドル台に下落した原油価格は、その後上昇に転じ、6月には同60ドルに届く勢いだった。だが、6月に開催されたOPEC総会で予想に反して生産据え置きが決定されると再び下落に転じ、同30ドル台後半で年末を迎えた。
今年1月に1バレル=26ドル台だった原油価格は約40%上昇した。しかしこのまま上昇することはなく、年末までにさらなる安値を記録するという昨年の「二の舞」になるのではないだろうか。
その理由は、シェール企業の破綻が今後大幅に増加する可能性が高いからである。
原油価格は回復基調にあるため、シェール企業の一部には増産の動きが出ている。だが、シェール企業全体が利益をあげる水準にはほど遠い。
<中略>
シェール企業各社の2月期決算を見ると、売上高は低油価のせいで軒並み前年比35~55%減少し、稼動リグ数も各社は大幅に本数を減らしている。リグ1本当たりの生産量を大幅に増やしているため生産量は前年比横ばいの企業が多いが、原油価格が1バレル=40ドルになっても、各社にとって債務の利払いのための資金調達が困難なことに変わりはない。
■米国の石油生産企業の3分の1が年内に破綻?
シェール企業(ガス系を含む)の破綻件数は2013年が15社、2014年が14社と低位で推移してきたが、2015年には67社と急増した(破綻の大半は年後半に発生した)。67件のうち原油系企業は42社であり、地域別にはテキサス州が18社と最も多かった。
シェール企業各社は、キャッシュフローを確実にするとの理由から1年後の原油価格を確定することを金融機関から義務付けられていた(原油先物の「売り」を行う)。そのため、昨年前半までは原油先物の売りと原油現物の買い戻しから生ずる差益を稼ぐことができ、これを操業資金等に充当してきた。しかし今年に入るとその錬金術が使えなくなった。融資に占めるエネルギー企業の比率が高い金融機関の株価が下落傾向にある(2月9日付日本経済新聞)ため、4月以降に集中する金融機関との交渉で、融資が打ち切られるシェール企業が続出することが懸念されている。
<中略>
原油価格の上昇で一息ついた感があるが、負債総額約110億ドルを抱えるチェサピーク・エナジーが破綻すれば、シェール企業の連鎖倒産が起き、金融市場に衝撃が走るだろう。
■80年代後半の「S&L危機」が再来か
<中略>
今回も、テキサス州を中心にシェール企業の大量破綻が生じ、その救済コストが多額に上る可能性がある。
■世界の地政学的リスクはますます上昇
シェール企業の大量破綻は、米国以外の他の金融市場にも悪影響を及ぼす。
今年に入ってからのシェール企業の破綻総数はつかめていないが、年間を通して優に100社を超えることが予想される。だが、シェール企業が発行しているジャンク債市場には3月に入ると資金が再び流入しており(3月11日付ロイター)、世界の市場関係者はいまだ警戒心が薄い。
S&L危機の時とは異なり、金融機関はシェール企業に対するレバレッジド(ハイリスク・ハイリターン)ローンを証券化して、世界中の投資家に売りさばくことによりリスク回避を行っている。しかし、チェサピーク・エナジーのような大型シェール企業が破綻し、金融市場に混乱が生じれば、金融商品化した原油先物価格は暴落する。
その後に金融危機が来るかどうかは「神のみぞ知る」だが、米国でシェール企業破綻に端を発する「4月危機」が来れば、ヒートアップしている米国の大統領選挙への(悪)影響も大きいだろう。さらに原油価格のさらなる急落は産油国経済を直撃し、世界のいわゆる地政学的リスクはますます上昇することは論を待たない。
今回の原油価格下落の正念場がいよいよ訪れようとしている。その結末ははたしてどうなるのだろうか。
40ドル/バレルのレベルに価格が回復したとは言え債務の利払いに苦しむシェールガス企業が発行するジャンク債市場には3月に入ると資金が再び流入しているのだそうで、世界の市場関係者はいまだ警戒心が薄いと記事は指摘しています。
金融機関はシェール企業に対するレバレッジドローンを証券化して、世界中の投資家に売りさばくことによりリスク回避を行っているのだと。
これは、リーマンショク前夜と同じですね。
1980年代から1990年代前半にかけて起こった多数のS&Lの経営破綻を記事では類似例として指摘されてしますが、リーマンブラザーズが、サブプライムローンと呼ばれる高リスクの住宅ローンで大規模な損失を計上。 その処理に失敗し、2008年9月15日、連邦裁判所に連邦倒産法第11章を申請、事実上の破産となったことで世界中に金融破綻が広まったのも、不良住宅ローンを証券化して世界中の金融機関が売りさばいたことが原因でしたね。
「S&L危機」か「リーマンショック」の再来を、原油安=米国のシェールガス企業の破綻が招くのか。過去に学んだ金融機関は防げるのか。注目が必要ですね。
# 冒頭の画像は、米コロラド州天然ガス採掘場
アングル:苦境の米シェールガス業界に暖冬が追い打ち | ロイター
この花の名前は、リンドウ
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