遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

G7 人民元のSDR通貨採用を受け入れ

2015-06-02 23:58:58 | 日本を復活させる

 SDRとは、IMF加盟国に出資割合に応じて融資を受ける権利が割り当てられるのですが、その単位で、国際収支が悪化した国は、自国が持つSDRを他の加盟国に渡して、代わりに必要な外貨を手に入れることができるというものです。
 誤解を恐れずざっくり言うと、ドル(or金)を補完する世界に通用する通貨との引換券(請求権)と言え、その通貨はIMFで定められ、5年に1度見直しがされています。ここで、指定された通貨が国際的に流通する通貨とのお墨付きを得たものと言えます。現在は、ドル、円、ユーロ、ボンドの4種類で、中国は5年前の見直し時に元の指定を申請しましたが、却下されていました。今年も指定申請をしていて可否が注目されていましたが、G7の財務相・中央銀行総裁会議で採用の受け入れが合意された様ですね。
 国際通貨は、市場原理で変動する「変動相場制」に対応したものですが、元はドルとリンク(1日2%の範囲内)させ中国政府が管理する「管理変動相場制」の通貨です。つまり、元が広く国際流通すれば、中国政府が通貨相場を管理出来る可能性があるのです。
 中国が、何故SDRでの承認を固執するのか、諸兄はご承知のことと存じますが、ポイントを取り上げてみました。

 勿論、終極は国際金融の制覇ですが、第一段階は、資金調達に苦しむことが予測される、AIIBの資金を、元がSDRに認定されれば、中国が元を印刷して調達できるということです。
 AIIBの難関の資金調達が出来れば、中国の海外からの投資減に苦しむ国内金融の緩和や、AIIBでの海外融資、囲い込みが推進可能となり、金融での世界制覇への道筋が開けてくるのですね。

 
人民元のIMF通貨採用に基本合意 G7 (FOCUS-ASIA.COM) - Yahoo!ニュース
 不動産バブル崩壊でも人民元が増長する秘密
 人民元の主要通貨化めぐり食い違い IMF「適正水準」?米は相場に不信感 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
 

「人民元帝国」 AIIBの罠 (月刊WILL 6月号 産経新聞 特別記者 田村秀夫)

<前略>
資金調達ができるのか?
<中略>

 
AIIBは当然、世銀やアジア開銀並みの格付けを狙うわけだが、ちょっと待ってほしい。そもそも、年間七千五百億ドルの資金を市場から調達できるのか。
 そこでBIS統計から、国際金融市場でどのくらい債券による資金調達がなされているのか、調べてみた。
 二〇二二年は全世界で五千百三十億ドル、二〇一四年は六千七百四十億ドルである。このうち、世銀、アジア開銀など国際金融機関の調達分は一三年が一千百四十億ドル、一四年が一千三百入十七億ドルである。
 最近の二年間をみる限り、年間七千五百億ドルもの資金を市場調達できるはずはない。
 
金利を高くするなど、よほど好条件で投資家を引きつけないことには資金調達できない。つまり、資金需要が一挙に高まるのだから金利が高騰してしまう。資金調達コストが上がれば、借り入れ国もたまったものではない。七千五百億ドルと言わないまでも、AIIBが巨額の資金を調達するのは市場の状況からみて不可能
のように思える。
 しかも、
中国の債務証券発行額は増加の一途で、途上国全体の五割近いシェア(二〇一四年)を占め、国際金融機関の発行額を上回っている。そんな情勢のもとで、AIIBという新しい国際金融機関が巨額の資金調達を行えるとは信じがたい

 四兆ドル近い
中国の外貨準備はそもそも見せ金
に過ぎないのだが、それを取り崩してAIIB融資の原資とするならよかろう。参加国は大いに結束して、中国に外準を吐き出せと迫るべきだ。が、北京はそれも合点承知、各国が徒党を組んで北京に迫る場になりかねない理事会を常設しないのだ。
 真相はどうやら、
中国は世界を巻き込む形で資金を調達し、行き詰まった経済成長モデルを建て直そうと狙っている
ことだ。

甘い対中幻想をただせ
 AIIB加盟国のなかでもっとも多くのインフラ資金を必要としているのは中国であり、その規模は他国を圧倒している。その事実を明らかにしたのは、他ならぬ習近平党総書記・国家主席である。
 三月下旬に海南省博鰲で開かれた国際会合で習氏は、「新シルクロード経済圏」構想の詳細を発表した。その付属文書で、「中国国内での建設中または建設予定のインフラ投資規模は一兆四百億元(約一千六百七十三億ドル、約二十兆九百二十八億円)、中国以外では約五百二十四億ドル(約六兆二千七百七億円)に上る」という。
 AIIBは同経済圏に必要な資金を提供することになっているが、当面の資金需要の七六%は中国発である。
習政権は、自国単独では限界にきた国際金融市場からの資金調達を多国間機関名義にしようとするのである

 日本という世界最大のカネの出し手、債権国と、米国というドルの総元締めの参加抜きに、AIIBは世銀やアジア開銀のようにトリプルAの債券格付けを取得できず、せいぜい中国国債並みのシングルAが関の山だと債券の専門家はみる。要するに、
低い金利での資金調達には難がある

 
だとすれば前述したように、中国自身が人民元を発行してAIIBに貸し付ける手がある。それには、人民元が広く借入先に受け入れられることが条件になる。そのためには人民元が国際通貨である必要がある。だからこそ前述したように、IMFによるSDR構成通貨の認定を北京は渇望
するわけだ。
 中国がAIIBを創立し、アジア地域全体でインフラ投資ブームを演出する背景は、自身の窮状を打開するためだ。鉄道、港湾、道路などで需要を創出し、中国の過剰生産能力、余剰労働力を動員する。そのために必要な資金は、AIIBの名義で国際金融市場から調達する。人民元を受け入れてくれれば、外貨による調達を補える。
 そして、中国主導の経済圏が拡大するにつれて、人民元が流通する領域を拡大させ、ゆくゆくは人民元を基軸とする経済圏を構築する。各国が人民元に頼るようになれば、外交面での中国の影響力が格段に強化される。AIIBは行き詰まりを見せている中国経済成長モデルの再構築と、党支配体制維持・強化のための先兵なのである。日本がそんな北京の思う壷にはまりこんでよいはずはない。
 アジアでの中国の外交・軍事戦略を助長するという側面には、米国も無関心ではいられないはずだ。中国関連のビジネス利権に米国の目がくらまされないよう、日本はしっかりとワシントンに対し、日本やアジア各国が受ける脅威の大きさを説明し、AIIBや人民元帝国問題では日本が米国をリードする機会にすべきだろう。これまでのように対米追随であとは無思考というのでは、中国の人民元帝国膨張戦略に対抗できそうにない。
 安倍政権は集団的自衛権など安全保障法制の整備などで日米同盟強化をめざすが、それだけでは人民元帝国の台頭には対応できそうにない。米国の対中外交をぐらつかせてはならない。日本は対米従属型と決別し、米国をリードする決意が必要だ。そのためには、国内の甘い対中幻想を厳しくただす必要があるのだ。


  AIIBへの参加について、英独仏伊豪と日米加で行動が別れました。
 元のSDR追加承認については、IMFのリプトン筆頭副専務理事(元米大統領特別補佐官)と、ルー米財務長官とで意見が分かれている様ですね。G7の中での賛否は、どのような分布なのか、未だ報道に接していませんが、後報を待っています。

 米財務省高官が「中国にはまだなすべきことがある」と断じ、ルー氏が、「中国は本当に市場が為替レートを決めることを受け入れるのか」と指摘されている通りで、中国政府が管理する「管理変動相場制」という競争に有利なハンディを持った元が「変動相場制」の他通貨と同じ土俵で戦うことは、中国が容易に金融市場を制覇してしまうことは明らかです。

 田村記者が指摘される様な、米国を日本がリードできるかどうかは別として、中国の野望を知る日本は、最近その野望を認識し始めてきた米国と連携し、仲間を募り、その野望の達成を阻止しなければなりません。
 世界第2位の経済大国となった中国の元が、広く世界で使われていることは事実ですから、SDRに追加認定の流れは阻止できないところでしょう。
 ただ、グローバルな通貨の仲間入りをするのに、有利なハンディをもって保護されたままでは、グローバル通貨の資格はありません。また、そのハンディがゆえに、輸出価格競争力や国内産業を輸入品との競争から守り今日までの経済成長を支えた一助としたのです。
 SDRに追加するのなら、完全変動相場制への移行は必須条件でしょう。
 変動相場制に移行すれば、中国には大きな負荷が増え、貿易などでもハンディのない公平な国際競争が可能となります。

 AIIBを創設しながら、借金をしている中国の姿と同じく、儲けに繋がるものならなんでもありの姿勢です。
 誇り高き中華民族とは程遠い、埃り多き中華民族の本領発揮です。
 G7では「技術的な評価を得ることが前提」としている様ですが、中国の野望を阻止するために、「変動相場制」への移行を必要条件ととして主張する様、各国に働きかける必要がありますね。



 # 冒頭の画像は、G7 国財務相・中央銀行総裁会議に参加した麻生財務相






  イワヤツデ  (撮影;六甲高山植物園 2014年 5月 )


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