遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

思い起こすのは、露の条約破棄対日宣戦布告

2006-12-23 21:14:29 | my notice
 ロシア政府の政策で、「サハリン2」の株式の過半数が、「ガスプロム」へ譲渡されることになりました。
 契約文書に署名したプーチン大統領は、21日、外資が示した「柔軟な姿勢」に感謝を示すと同時に、2008年に本格化する北米や日本などへの液化天然ガス(LNG)輸出義務を契約通りに果たすだろうと強調したとのことです。
 ロシア=ソ連は、第二次大戦で勝敗の行方が明らかになった段階で、日ソ中立条約を破棄し南侵を開始し、終戦後も北海道占領を目指し米政府の抗議を受けるまで侵攻し、千島列島と樺太を手に入れ、国後択捉歯舞色丹 4島を今でも実効支配し続けています。
 今回の、8割完成し稼働の収益が見込まれる段階になって、強引に契約を変更させるロシアのやり方は、国家間の条約を破棄する当時のお国柄から変わっていないようです。

 ソ連混乱期で、わらをもすがる状況での不平等契約であったとの見方も在りますが、ビジネスの基本である契約を、環境問題で言いがかりをつける政府の圧力で強引に変更させるのは、国際的にも非難されるべきだし、取引を開始しても、欧米よりのウクライナへの一時供給停止やグルジアへの 2倍以上の値上げ通告に代表される旧ソ連諸国や欧州各国への値上げに見られるように、信頼できる供給先とは言えず、供給を受ける前にこちらから投資の回収が出来たら撤退すべきと、このblogでも書いていましたが、各紙も社説で取り上げて、国際道義と安定供給の不安を唱えています。
 
サハリン2 信頼損なうロシアの経営権奪取

 資源の国家管理を強めるロシア政府に押し切られた、ということだろう。

 サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で、国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事は、事業会社「サハリン・エナジー」株の過半数をロシアの国営天然ガス独占企業体ガスプロムに譲渡することで合意した。
 ガスプロムは株式の50%プラス1株を取得し、経営権を握る。74・5億ドル(約8720億円)とされる譲渡金額は、シェルなど3社が辛うじて投下資本を回収できる水準にとどまる。

 3社は1994年にロシア政府と開発契約を結び、石油・天然ガスの掘削と、パイプライン、液化天然ガス(LNG)工場などの建設を進めていた。開発は成功し、2008年には年産960万トンのLNG工場を稼働する運びだ。

 成否が半ばした事業に、ゴールが見えてきた段階での強引な経営権奪取である。ロシアの行為が、国際的なビジネスのルールに反するのは明らかだ。

 ロシア政府は、パイプライン敷設工事などで大規模な環境破壊があった、と指摘して工事の中止を命じるなど、株式譲渡交渉に側面から強い圧力を加えた。

 3社は東京電力、東京ガスなどに08年からLNGを供給すると約束していた。生産開始が遅れ、違約金が膨らむのを恐れ、渋々、株式売却に応じたようだ。

 開発に合意した94年、ロシアはソ連崩壊後の混乱にあえぎ、原油価格も低迷していた。3社の契約条件が有利だったのは確かだ。だが、プーチン体制の確立と油価暴騰で両者の立場は逆転した。

 ロシアは「持てる者」の強みをフルに活用し、他の資源開発でも一方的な契約変更を押し付けている。西側諸国は不満と不信感を募らせているが、有効な対策を打ち出せないでいる。

 ロシアは1年前、ウクライナへのガス供給量を削減し、欧州のガスも危機に陥れた。エネルギー供給国として危うさを印象付けた。

 日本のLNG輸入量は年約6000万トン。09年にはサハリン2から、その1割近い500万トン程度を輸入する予定だ。供給契約は維持されるが、約束を平気で破る体質への不安は一層強まった。ロシアへの過度の依存は危険だ。

 経済産業省は、今春まとめた「新・国家エネルギー戦略」で、30年には自主開発原油の輸入比率を現在の15%から40%に引き上げる目標を掲げた。今回の事態は、イランのアザデガン油田の権益削減に続く挫折だ。海外での資源開発戦略を練り直す必要がある。
(12/23 読売社説)

その他の各紙
 NIKKEI NET:社説 ・サハリン2の災いを福となせるか
 asahi.com :朝日新聞今日の朝刊-社説 サハリン2 これがプーチン流か

 「ガスプロム」は、世界の確認ガス埋蔵量の約17%を持っていて、ロシアのGDPの 8%を占める世界規模のガス産業の王者です。約25万人の従業員を抱えるこの巨大企業は、天然資源の供給を通じ国際社会への影響力を強めようとしているクレムリン外交の実働部隊の役割も担っているのだそうです。 

 「ガスプロム」は旧ソ連のガス工業省を母体としていて、連邦崩壊時(1991年)に石油産業が分割民営化させる中、エリツィン前大統領のもとで首相を務めたチェルノムイルジン氏が「ガスプロム」出身であったことから、ガス部門は細分化されず「ガスプロム」が独占支配を守れたのだそうです。

 西シベリアを中心に産出するロシアのガスは半分あまりが国内で消費され、残りがパイプラインで輸出され、欧州向けが巨額の利益をもたらしており、旧ソ連諸国には割安価格で供給されてきていました。
 プーチン政権は、この「ガスプロム」を通じ、周辺国に外交的な圧力を高めていて、周辺国への引き締めは露骨になってきているのです。
 
日本国際フォーラム 伊藤憲一理事長へのインタビュー (12/23 読売朝刊)

□ロシア主導の開発となった今回の決着をどう見るか

 「完成間近の巨大事業に対して突然、過半数の権益を要求するのは、通常ならば考えられない行為だ。ただ、今秋にロシアが環境問題で圧力をかけてきた時から予測できた展開ではある。」
 「ロシアは 1月にウクライナへの天然ガス供給を突然停止したように、法治国家ならぬ『力治国家』で、力が全てだ。外交でも経済でも、過去に締結した契約も、力関係が変われば簡単にホゴにされる恐れのある国だ。
 サハリン2や他のサハリンプロジェクトについても、ロシアがさらなる権益拡大を求める可能性がある」

□サハリン2以外でも日本企業がロシアから圧力を受けた事例は在るのか。

 「たとえば、ロシア極東地域のハバロフスクには、新潟県などから多くの日本企業が進出した。ところが、事業が軌道に乗り始めたら、様々な圧力をロシア政府からかけられ、撤退に追い込まれたケースもある。
 現時点ではロシアでは契約はあまり担保にならないと考えるべきだ。」


 沼地での工事効率の良い冬季に入ったことや、東京電力や東京ガスとの契約の違約金発生の恐れから、交渉決着を早めたとの三菱商事社長のインタビュー記事もありましたが、契約を守るためにもう一方の理不尽な契約変更をのむという変則事態が発生しており、東京ガスや東京電力の自社だけの利益を考える狭い考えも、一連の交渉に悪い影響を与えています。

 中近東の石油、豪州、インドネシアのガスといった資源供給の分散化を図ったサハリンプロジェクトですが、ソ連崩壊で低迷して、外国企業に頼った産業開発が必用だった頃のロシアとは変わってしまったのです。しかも、契約は無視するお国柄です。
 安定した資源供給の為に分散化は必用ですが、相手により逆効果を産みます。
 今回の株式譲渡で、投資額はほぼ回収出来るとのことですので、回収が出来た暁には、以前に書きましたし、上記記事の伊藤理事長も仰っていますが、中国に高い価格で買って頂いて、中国のお腹を満たしてあげることで、世界の資源争奪争いを和らげる方が、世界全体の為にもなりますし、他の地域での日本の資源供給元も探しやすくなります。

 商社が危険を冒してロシアと取引するのは、ユーザーが求めるからです。
 大手代表の東京ガスや東京電気なども、供給元を探す責任を商社に押しつけるのではなく、自らも協力して、豪州など安定供給が望めるところから購入するよう、目先の価格だけではない、広い視野のポリシィを持つべきです。
 「安物買いの銭失い」といいますが、目先の価格にひかれ、後々値上げで高いものを買わされたり、供給を一方的にストップされたりする危険があり、我が国の領土を終戦のドサクサで不法占領しそのまま居続ける国から買わなくても、高くても安定供給してくれる、信頼できるパートナーと言える国から買って頂いた方が、消費者の私としては、安心出来るのです。
 東京ガス、東京電力の一ユーザーとして、是非是非ロシアのガスを購入しないように、お願いします。




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7 コメント

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Unknown (くあ東)
2006-12-24 01:44:19
TBありがとうございました。私も、同様に、先の大戦末期に日ソ中立条約を一方的に破棄して、サハリンや千島・北方領土に侵攻してきた当時とあの国は何も変わっていないんだな、と思いましたね。
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Unknown (ムニ枕)
2006-12-24 13:31:26
はじめまして、ムニ枕と申します。
初めて書き込みさせて頂きます。

>商社が危険を冒してロシアと取引するのは、ユーザ>ーが求めるからです。
正に仰る通りだと思います。
ユーザーの”購買行為”が市場を成長・監視する行為となっていると思います。
それに、長期的に契約できる取引先を複数持つのが、
安定化供給への要です。価格のみを追った計画性の無い戦略は、供給側が強気に出られた時に困窮します。

私のブログに書いた事ですが、
このままロシアが政権の力を重視した行為を繰り返すと、近い将来には自国経済への自爆行為に成りかねないと予想しました。
その時、ロシアの世論がどう動くかが興味深いです。

長文、失礼致しました。
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TBありがとうございます。 (uhauhookwww)
2006-12-24 18:17:34
はじめまして。
中央アジア、欧州に対してもガス代値上げする、飲まないならガスの元栓閉める、と恫喝しまくりです。
具体的に取引が始まる前に手のひら返されて良かったかもしれません。
他のエネルギー源を他の国に探した方が後々いいと思います。
ロシアの10年後も怪しいし。
返信する
あの国は何も変わっていない (遊爺)
2006-12-24 23:41:25
くあ東さん、コメントをありがとうございます。

>サハリンや千島・北方領土に侵攻してきた当時とあの国は何も変わっていないんだな、と思いましたね。

 そんな国から、自国の生死を左右しかねないエネルギー源を購入してはいけませんね。
 武器輸出も盛んな国で、貧して核の流出や保有管理が危惧され、各国が立ち直りを支援しましたが、皆で購入を控えるべきでしょう。皆で購入量を半分に減らすことが出来れば、たちまち窮して、態度を改めるかも知れません。

 
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Re: はじめまして (遊爺)
2006-12-25 00:06:43
ムニ枕さん、こんにちは。

>長期的に契約できる取引先を複数持つのが、安定化供給への要です。

エネルギー安全保障の基本ですね。
その複数先に、こんなに危険な国を入れたら、逆効果ですね。
 サハリンプロジェクトは、販売先は日本と中国がメインですから、日本が買わなければ中国だけとなり中国に利する事となりますが、世界の資源高騰の引き金となっている国のお腹を満たすことが、異常な資源争奪戦の緩和剤になる期待がもてます。
  国益の為にもこの国から買わないのが先で、中国への期待は、そうなれば更によいという付録の話ですが...。
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Re: はじめまして (遊爺)
2006-12-25 00:17:38
uhauhookwwwさん、こんにちは。

>具体的に取引が始まる前に手のひら返されて良かったかもしれません。

 EUとの交渉も、EUは統一交渉をしようとしていましたが、ロシアの戦術で各国が個別交渉での契約締結を始めています。更に、ガスプロムの各国内での販売活動も認める条件付きとか。
 一度取引を始めてしまって、そこそこの量を依存してしまうと、不利と解っていても言いなりにならざるをえなくなる実証例ですね。
 エネルギー安全保障は、信頼できる国と手を組むことが大事ですね。
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ロシアの本質は変わらない・・ (容子)
2007-02-12 20:55:29
遊爺さま

「サハリン2」の株式の過半数が、「ガスプロム」へ譲渡する事をロシア政府が強引に「サハリン・エナジー」飲ませたこの方法は、遊爺さまのおっしゃる通りソ連時代と少しも変わっていない、えげつなさを感じます。

周辺国にも、強引な脅迫まがいの方法で外交を展開してますが・・中国ともども要警戒国ですね・・・
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