あちらを立てれば、こちらが立たず。こういうアンチノミー(二律背
反)の状況は、日常生活のいたるところにころがっている。相反する
二つの主張の間を取り持って、うまく調整するのが、政治の技術とい
うものだ。年金問題の場合も然り。電力問題の場合もまた然りであ
る。
え、電力問題だって?と訝(いぶか)る向きも多いだろうが、この場
合には、対立する三つの項がそれぞれの主張をぶつけ合っている。
第1の項は、太陽光や風力などの、再生可能エネルギー事業者。この
第1の項は次のように主張する。「我々は自然にやさしく、環境に負荷
をかけません。二酸化炭素などの地球温暖化物質も出さないのですよ。
えへん」
第2の項は、火力発電所である。第2の項はこう主張する。「再生可能
エネルギーは、発電の絶対量が少ないうえに、天候や時間によって発
電量が変わるのがネックです。需要に見合った電力を安定的に確保す
るには、出力が下がったときに不足分を埋める調整用の電源が別途必
要になります。つまり、我々が欠かせないのです。えへん」
第3の項は、原子力発電所である。第3の項はこう主張する。「火力発
電は非効率なうえ、地球温暖化物質である二酸化炭素を大量に排出す
るのがネックになります。そこへいくと、我々は温暖化物質を出さず
に、電力を安定的かつ効率的に供給する唯一のやり方なのです。事故
が起こったときに放射能がばら撒かれるのがネックだと言う人もいま
すが、そんなことは滅多にないことですし、電力供給のコストも安価
で済みますから、比較してみれば、我々のがベストだと言えるのでは
ないでしょうか。えへん」
日経はきょう(11月30日)の紙面で《電力の供給力確保を促すには 》
と題する社説をかかげ、第1の項と第2の項を取り持つ手段として、
「容量メカニズム」なる手法があることを紹介し、次のように述べて
いる。
発電事業者は、稼働率が低くて費用の回収を見通せない投資には消極
的にならざるを得ない。有識者会議はこの点を踏まえ、将来の電源不
足を回避する策として「容量メカニズム」と呼ぶ手法を検討してい
る。
電力小売会社が、電力販売に必要な発電能力を長期の枠として入札
を通して買う。発電会社は発電所の稼働状況にかかわらず安定収入が
見込める。自由化で先行する米欧で導入が始まっているこの仕組みを
日本でも定着させたい。
将来、この「容量メカニズム」の手法が実際に行われるようになれ
ば、利害関係が複雑にからみ合う現実の場面では、細々したいろい
ろな問題が出てくるだろう。そのとき、この問題領域に第3の項が
しゃしゃり出てきて、「いよいよ、我々の出番だと思うのですがね」
と主張したら、どうなるのか、経済学や倫理学の応用問題として、
ひとつ思案してみるのも一興である。
反)の状況は、日常生活のいたるところにころがっている。相反する
二つの主張の間を取り持って、うまく調整するのが、政治の技術とい
うものだ。年金問題の場合も然り。電力問題の場合もまた然りであ
る。
え、電力問題だって?と訝(いぶか)る向きも多いだろうが、この場
合には、対立する三つの項がそれぞれの主張をぶつけ合っている。
第1の項は、太陽光や風力などの、再生可能エネルギー事業者。この
第1の項は次のように主張する。「我々は自然にやさしく、環境に負荷
をかけません。二酸化炭素などの地球温暖化物質も出さないのですよ。
えへん」
第2の項は、火力発電所である。第2の項はこう主張する。「再生可能
エネルギーは、発電の絶対量が少ないうえに、天候や時間によって発
電量が変わるのがネックです。需要に見合った電力を安定的に確保す
るには、出力が下がったときに不足分を埋める調整用の電源が別途必
要になります。つまり、我々が欠かせないのです。えへん」
第3の項は、原子力発電所である。第3の項はこう主張する。「火力発
電は非効率なうえ、地球温暖化物質である二酸化炭素を大量に排出す
るのがネックになります。そこへいくと、我々は温暖化物質を出さず
に、電力を安定的かつ効率的に供給する唯一のやり方なのです。事故
が起こったときに放射能がばら撒かれるのがネックだと言う人もいま
すが、そんなことは滅多にないことですし、電力供給のコストも安価
で済みますから、比較してみれば、我々のがベストだと言えるのでは
ないでしょうか。えへん」
日経はきょう(11月30日)の紙面で《電力の供給力確保を促すには 》
と題する社説をかかげ、第1の項と第2の項を取り持つ手段として、
「容量メカニズム」なる手法があることを紹介し、次のように述べて
いる。
発電事業者は、稼働率が低くて費用の回収を見通せない投資には消極
的にならざるを得ない。有識者会議はこの点を踏まえ、将来の電源不
足を回避する策として「容量メカニズム」と呼ぶ手法を検討してい
る。
電力小売会社が、電力販売に必要な発電能力を長期の枠として入札
を通して買う。発電会社は発電所の稼働状況にかかわらず安定収入が
見込める。自由化で先行する米欧で導入が始まっているこの仕組みを
日本でも定着させたい。
将来、この「容量メカニズム」の手法が実際に行われるようになれ
ば、利害関係が複雑にからみ合う現実の場面では、細々したいろい
ろな問題が出てくるだろう。そのとき、この問題領域に第3の項が
しゃしゃり出てきて、「いよいよ、我々の出番だと思うのですがね」
と主張したら、どうなるのか、経済学や倫理学の応用問題として、
ひとつ思案してみるのも一興である。
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