ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

覚醒剤 何故いけないのか

2017-06-07 14:50:30 | 日記
私は屋外を自由に出歩くことができない。6年前に患った脳卒中の後遺症
で、半身が麻痺しているからである。これを「片麻痺」の状態と言うが、
そんなことから、当然ではあるが、私の日々の過ごし方は、いきおい室内
での娯楽がメインになる。むかしの私の趣味は釣り(フィッシング)だっ
たが、今はタブレットでネット・ブラウジングをしたり、ブログ記事を書
き綴ったり・・・。その他には、テレビを見るのも日々の大きな愉しみであ
る。

私が毎日楽しんでみているテレビ・ドラマに、「やすらぎの郷」という番
組がある。最近、ネットのニュースで知ったのだが、このテレビ・ドラマ
に出演していた若手俳優が、覚醒剤所持容疑で逮捕され、この番組から降
板せざるを得ないことになったという。

またか、と思う。そして、一体なぜなのだ、とも思う。プロ野球の大打者
だった清原和博が、覚醒剤所持容疑で逮捕されたときもそうだった。バド
ミントン選手として有望視されていた桃田賢斗が、カジノ店で賭博をした
ことが発覚し、無期限の競技会出場停止処分をうけたときもそうだった。
安倍政権がカジノ法案(IR実施法)を成立させ、カジノを合法化しようと
する政治的な動きもあるなかで、将来有望なこの若手選手は、なぜ凶悪犯
罪でも犯したように騒がれなければならなかったのか。

覚醒剤について言えば、このドラッグを服用することは、タバコを吸うこ
ととどう違うのか。なぜタバコと違って、重大な犯罪のように扱われなけ
ればならないのか。私にはその理由がちっとも分からない。いつものよう
に、グーグル先生に質問してみた。「覚醒剤 何故いけないのか」と。

グーグルで検索をかけると、大阪府警察の次のような回答が出てきた。
「覚醒剤は、乱用する人の心や体をボロボロにし、人としての生活を営む
ことを不可能にしてしまいます。また、幻覚や妄想などの精神障害を引き
起こし、ついには殺人や放火などの凶悪犯罪や悲惨な事故を引き起こすこ
とにもなります。
乱用者本人はもちろん、家族や社会全体に対しても取り返しのつかない被
害を及ぼします。
こうしたことから、覚醒剤の使用などは、法律にて厳しく禁止されている
のです。」

この回答は、最初に「覚醒剤は、乱用する人の心や体をボロボロにする」
と言うが、これだけならば、覚醒剤はタバコと少しも変わらない。現に私
の場合は、長年にわたってタバコを乱用したために、脳の血管がボロボロ
になり、ついに脳出血を引き起こしてしまった。その結果が現在の片麻痺
であるから、この理屈で行けば、警察は、私がタバコを吸い始めた四十数
年前に、覚醒剤や麻薬と同様、タバコの吸引を重罪として厳しく取り締
まってくれるべきであった。そうすれば、私はタバコに手を出すこともな
く、脳の血管を損ねることもなく、片麻痺になることもなかったであろ
う。

なかば冗談のようなもの言いになってしまったが、すこし開き直ってまじ
めに言えば、人には「愚行権」というものがある。覚醒剤やタバコを摂取
することは、自分の健康を損なう行為である。だからそういう行為は、
「愚かな行い」以外の何ものでもないが、こういう「愚行」はしかし各人
に認められるべき権利であって、警察も国家もこれを蹂躙することはでき
ない――私はそう考える。

覚醒剤が禁止されるもう一つの理由、――覚醒剤は「幻覚や妄想などの精
神障害を引き起こし、ついには殺人や放火などの凶悪犯罪や悲惨な事故を
引き起こすことにもなる」から、というのはどうか。人を殺せば彼を殺人
罪で処罰することができるし、ぜひともそうしなければならない。しかし
人を殺していないのに、覚醒剤を所持したというだけで、彼を殺人罪で処
罰することはできるのだろうか。できない、と私は思う。

さて、俳優・橋爪功の息子だという件(くだん)の若手俳優であるが、彼
はまだ脳卒中を患っていないし、精神に障害を負っているわけでもない。
殺人や放火をしでかしたわけでもない。「覚醒剤を所持した」というだけ
が彼の問責の理由なのだ。たったそれだけのことで、番組からの降板を決
めたテレビ局の思わくが、私にはまったく理解できない。テレビ放送は人
気商売だから、とりあえず世間の価値判断に従っておこう、ということな
のか。

ところでこの若手俳優、テレビ・ドラマ「やすらぎの郷」では、逮捕歴の
ある介護士の一人として出演していたらしいが、どの人物が彼の役回り
だったのか、私の記憶にはまったく残っていない。彼はそれほど印象の薄
い役者だった。今回の逮捕の経験が、彼の芸の肥やしとなり、彼が役者と
してもう一回り成長するきっかけになれば、それはそれでせめてもの救い
であり、不幸中の幸いというものだろう。
コメント
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