ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

原発の神話が崩壊するとき

2016-11-08 16:41:05 | 日記
東京電力フクシマ第一原発のように、事故を起こした原発施設。
老朽化によって、今後事故を起こす恐れがある原発施設。そうい
う施設の廃炉費用を、だれが負担するのか。

経済産業省が出した答えは、その費用を、自由化で参入した「新
電力」の事業者に負担させるというものである。これに対して、
朝日新聞は、11月7日付の社説《廃炉費の負担 原発優遇は理が
通らぬ》で、真向から異を唱えている。
理由はこうである。経産省のこの見解は「電力自由化の旗振り役
が、自らその理念をゆがめ、原発を優遇する」ものであって、こ
れでは「理が通らない」。「後出しじゃんけんのように新たな負
担ルールを設け、原発や事故と無関係な新電力にも廃炉の費用を
担わせて、公平な競争と言えるのか」と朝日は疑問を投げかけ
る。

私は、経産省の見解にも一理あると考える。国民の負担増を避
け、東電の経営を圧迫しないようにしようとすれば、負担の受け
皿は「新電力」以外には考えられないからである。朝日の社説が
主張するように、負担の受け皿が「新電力」では駄目だとなれ
ば、それではだれが負担するのか。だれが負担するのが理にか
なっているというのか。野党に対する与党・自民党の言い草では
ないが、私も朝日の社説に対して、「それなら代案を出せ、代案
を!」と言いたくなる。

国民の負担増を避ける、――最低のラインとしてこれが譲れない
なら、答えは当然、「東電が負担すべきだ」ということになる。
なに!何を寝言を言っているのだ!そんなことをして、東電が潰
れてしまったら、元も子もないではないか。そんなことになった
ら、日本の産業も、我々日本人の日々の生活も、根こそぎ壊滅状
態に陥ってしまうではないか。なんとまあ、寝ぼけたことをほざ
いているのだ!

大方の人はそう言いたくなるだろう。私もそうである。いや、そ
うだった。ちょっと待てよ、と思い直したのである。原発施設の
廃炉費用を東電に負担させるようにした場合、一体どういうこと
になるのか。予断を排して、ひとつ冷静に考えてみようではない
か。

確実なのは、その場合、東電が電力料金を、大幅に値上げせざる
を得なくなることである。「原子力発電は安上がりだ」という神
話は、こうして簡単に崩れ去る。原子力発電は、廃炉や事故時の
対策費用まで含めれば、恐ろしく高くつく代物なのだ。「安物買
いの銭失い」という諺は、ここにも当てはまる。

こうして原子力発電の真実が露呈するとき、第二に確実なのは、
我々の生活にも明らかに変化が訪れるということである。我々は
電力使用の契約先を東電から(料金の安い)新電力の事業者へと
切り替え、なおかつ無駄な電力使用をやめて、できる限り省エネ
に配慮した暮らしを始めるだろう。そうなったときには、省エネ
家電の開発・製造で、家電業界は息を吹き返すに違いない。二酸
化炭素の排出削減も大幅に進み、地球環境問題にも光が見え始め
るだろう。真暗な未来が待ち受けているわけではない。そう思う。
コメント
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