カーネギーは「朝寝は時間の出費である。 しかも、これほど高価な出費は他にない」と述べたが、このカーネギーの言葉には、金銭や地位や名誉を獲得することに価値をおき、それ以外の時間の使い方を無価値とみる、単純で素朴な価値観が示されている。
でも、と私は言いたい。高齢で退職し、暇を持て余す私のような境遇になると、金銭や地位や名誉を獲得することそのものが、さほど魅力的なことに思えなくなるのだ。だから私は、「でも、ゴールが大事なことに見えなくなってしまったら、どうなのだろうなあ」と考えずにはいられない。
時間の浪費を戒める格言は、あくまでも、金銭や地位や名誉を獲得するというゴールを目指すことが意味を持つ年齢の人たち、つまり若者や壮年の人たち向けのものなのである。
もちろん私のような老人ともなれば、青年や壮年の人たちに比べて持ち時間は圧倒的に少なくなる。したがってその分だけ時間は貴重になる。
だからこそ私は、意味のないゴールを目指すなどという無意味なことに、貴重な時間を浪費したくないのである。
時間の価値を知れ。 あらゆる瞬間をつかまえて享受せよ。(チェスターフィールド)
というのが、老人向けの格言になるだろうか。(つづく)
