秋霖の中、いとおしき情景の旅路は・・。【2009.9.27.～9.30.】 最終

　　　　　　　　最終章　旅の終わりは、特急『あずさ』となり・・。


私達のグループは、霧雨の降る中、わずか３時間ばかりの上高地を別れ、
中央本線の『松本駅』に向ったのは、午後の２時半過ぎであった。

私達が乗車した観光バスが野麦街道を通る時は、本降りの雨となり、
車窓から観える幾重の山並みは、けむるようにかすんで見え隠れした。

『松本駅』に到着した時は、雨上がりのどんよりとした曇り空で、
私達はこの旅を共にした人たちと、
今回の旅行は秋雨前線の中、各地をめぐり、小雨が降ったり止んだりし、まったく晴れ間のない珍しい旅となりました、
このようなことをお互いに微苦笑しながら、談笑したのである。

この後、『松本駅』１７時１８発の特急『あずさ３０号』の列車に乗車し、『新宿駅』２０時８分着となり、
私は発車後まもなくして予約していた駅弁を煎茶と共に頂いたりした。
こうした夕食の時に、車内のアナウンスの声が聴こえ、
『この列車は全席禁煙となっています・・』
と車内のアナウンスの声が聴こえたのである。

私は家内に、
『３０年前頃・・よく旅行で乗った『Ｌ特急』が懐かしいょ・・』
と私は苦笑しながら、家内に云ったりした。

あの頃は車内でビール、日本酒などを呑まれたり、煙草は目の前の灰皿を使いながら程々に喫ったりし、
駅弁を車窓を開けたりして買い求めたりしていた・・。

私は愛煙家のひとりであるが、昨今の嫌煙ブームなので、
せめて列車内の一両ぐらいは喫煙可を接続させるか、
或いは車両の隅に喫煙室を設けて、換気設備に経費を要するので利用者は有料とするのが望ましい、
とここ１０年ぐらいは思い続けているのである。

たまたま新幹線を利用した時は、このような設備の車両を接続させているが、
現世は有料トイレのある時代もあるので、
喫煙席は３００円増、或いは喫煙室は１００円ぐらい利用者は支払い、運用者は維持管理に努めるのが、
本来のサービスと私は確信めいたりしているのである。


この後の私は、車窓から暗い外の状景を眺めながら、
今回の旅行も共にした人たちと、食事の時、休憩所の時、観光ホテルのロビー、
観光バスや列車内でたまたま隣席した時などで、談笑を重ねてきたのである。

観光バスで松島から仙台港に移動した時、たまたま隣席した男性の方と言葉を交わしたのである。
私が６５歳になり高齢者のひとりになり、記念のひとつとして今回の旅行に・・
このようなことを私は話したのである。

『僕は・・昭和８年生まれ・・』
と男性は微笑みながら私に云った。

『それでしたら・・私より１０年以上・・先輩ですね・・花の８、９年ですね・・』
と私は男性に云った。

『・・』
男性は戸惑われたようであった。

『私は昭和８年とか９年の方には・・小学生の時に敗戦時の前後で教科書を含めて・・
すべての価値観が一変したので・・
大変な時代を過ごされた・・という意味合いで・・敬意をこめて・・花の・・と敬称しまして』
と私は男性に云ったりした。

この後、この男性とは急速に親しくなったのである。

今回の旅行で共にした方たちは、７０歳前後のご夫婦が圧倒的に多く、
日常生活の過ごし方、健康対策、お孫さんのことなどを素直に話しかけて下さり、
私は教示されながら、まぎれない人生の教科書を学んだりしたのである。

私達夫婦は４０代の頃から、団体旅行に参加した時は、
ご年配のご夫婦のさりげない言葉、しぐさを学び、
いつの日にか齢を重ねた時、あのようなご夫婦のようになれれば、
と思いながら、数多くの旅を重ねてきたのである。


今回の旅行は、私が６５歳の高齢者入門となり、家内は１２月下旬に６０歳を迎えるので、
ささやかな記念旅行としたのである。

そして９月２７日は私の誕生日であり、あえてこの日に出発日としたが、
旅行中は秋の長雨となり、小雨が降ったり止んだりしたことが多く、
私のこの後の人生を象徴しているのかしら、と思ったりした。

しかし私は血液型がＢ型であるので、マイナス要素は忘れ、
プラス要素だけは常時覚えている都合のよいタイプなので、
体力は衰えても、ボケないで７０歳を迎えたい、と思ったりしていると、
『あずさ』はまもなく新宿駅到着、とアナウンスされていた。

私は共に旅をしてきた数多くの人に、
『お騒せしまして・・大変にお世話になりました・・
再びお逢いしたいですね・・』
と家内共々、明るく大きめの声で、お礼の挨拶をしたのである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　《終わり》