ⅰ 在日朝鮮人の現状を理解する。-6-
~例外的な「通名使用」が、日本国にある(あった)のはなぜか? 「通名」はペンネーム・芸名・愛称などとどうちがうのか? ~
■「通名」(通称)について
・通名使用の理由として流布されている一説に、「朝鮮名だと差別されるからだ」というものがある。
※いわゆる「白人」や「黒人」などであれば、外見のちがいがはっきりと分かるため、名前のちがいはそれほど問題にならない。しかし、東アジアでは”日本人そっくり”の人々がたくさんいる。特に、中国亜大陸や朝鮮半島の人々は外見ではまず区別できないだろう。さらにその人が日本語を普通に話しているならほとんどできない。
(※「区別と差別」に関する問題についてはこの後の別項<参考>でじっくりと考える。)
したがって、”日本語を話す東アジア人”について日本人が分かる(区別できる)ためには、「本名」を知るしかない。しかし、2012年に「外国人管理制度」が刷新されるまでは、朝鮮出身の「特別永住者(約50万人)」だけは「通名の複数使用」などの特別の運用がされていたため、今でも様々な問題が生じている。
そこで、①《差別されないように特別な通名使用が認められてきた》のかどうかを明らかにするため、および、②2012年以後の変化を理解するため、ウィキペディアをていねいに読み込むことにする。
<ウィキペディア:通名>より
・「本名ではなく、一つ、もしくは複数の通称名を名乗って生活することには、2016年1月の時点で法律的な制約はない。
通称名で法律行為を有効に行うことは原則としてできない。しかし在日外国人の通名は、居住する区や市町村への登録を条件として、住民票に「通称(氏名以外の呼称)」(住民基本台帳法施行令第30条の26第1項)として記載され、法的な効力を持つ。
2016年現在の実務上、通名は登記などの公的手続に有効に使用することができ、契約書など民間の法的文書にも使用できる(単なる自称では、詐欺罪や文書偽造罪などに問われる場合がある)。また、就労の際にも通名での応募及び就業が通用しているとともに通名による雇用保険や年金の手続きも行えるようになっており、地方公共団体では通名で公務員として職務を行えるようになっている。
印鑑登録証明書や運転免許証には、本人の申請により本名に加え、通名の併記が可能である(例:氏名 金 美淑(木村 淑子))。また、国民健康保険被保険者証や、一部の顔写真付き身分証明書(障害者手帳等)においては通名のみの記載が可能となっている。」
※1 2012年の”画期的刷新”以降は、制度上、「特別永住者」も”在日外国人全体と同じ”になっている(ようだ)。(ただし、自治体によっては、その「運用」で優遇されている事例もある。)
※2 《在日外国人の通名(※一つのみ)に法的効力をもたせる》こと自体に問題がある、という指摘があるが、ここでは追究しない。
・「法的根拠 歴史的経緯
1940年2月11日に創氏改名制度が施行されたが、内地ではそれ以前から朝鮮人などが「通称」として「日本名」を名乗るものが多かった。創氏改名施行以後、朝鮮や内地在住の朝鮮人なども日本風の「氏名」を名乗ることになった。これは法的な「本名」であり、この日本名で各種届出や証明書類の交付、また登記などの公的手続が行われた。
一方戸籍上は従来の「姓」と「本貫」も残ったが、これらは「本名」ではなくなった。だが1945年以降、38度線の南では「朝鮮姓名復旧令」(1946年10月23日)により、また北でも「北朝鮮に施行する法令に関する件」布告により、創氏改名の根拠となった朝鮮総督府令は失効し、朝鮮人の創氏改名による日本名は遡及無効となって法的根拠を喪失した。
しかし、日本名でいったん公的に取得・蓄積された在日朝鮮人の各種の公的記録を一挙に無効とすることは、事実上困難であった。そのため行政が選択したのは、法的な根拠を欠く在日朝鮮人の日本名使用を運用上は有効とする政策であった。」
※《特別に「法的効力をもつ通名(日本名)」を使用する運用》の理由は、《事務取扱・処理の困難》だった、と書いてある。確かに、終戦直後からしばらく”横暴を極めた朝鮮人の行為の数々”を調べてみると、その当時《日本人による朝鮮人への差別行為》などは恐ろしくてできなかっただろう。
ただし、《日本政府や日本企業などの外国人不採用》などはあっただろう。しかし、それを単純に「差別」とは言えない。”自国民限定や優先”は「差別」とは言わない。
・「2012年6月以前
外国籍の者に、本名ではない「通称」の使用を認める根拠法は、2009年(平成21年)7月以前には存在していなかった。通称使用の根拠となっていたのは、法務省入国管理局長通知の「外国人登録事務取扱要領」(昭和二十九年六月二十二日付法務省管登合第四二九号附属書)である。同通知は「外国人の社会生活上の利便性を考慮し」外国人登録原票の記入に際し、本名に加え通称を併記することを認めていた。そしてこの原票を基に、2012年(平成24年)6月までは通称併記の外国人登録証明書が発行されていた。つまり通称使用を条文で認めた法律は存在しておらず、行政が運用上認めていたに過ぎなかった。
刷新
2012年(平成24年)7月以降、法務省と市区町村が別々に行っていた外国人管理業務の一本化などを目的に、従来の外国人登録制度を基本とした外国人管理制度が刷新されることとなった。住民基本台帳法が改正されて、外国人(短期滞在者等は除く。以下同じ)も日本人と同一の住民票に記載されるようになると共に、外国人登録法は廃止された。また通称が併記された外国人登録証明書も廃止となった。
改正後住民基本台帳法第7条第14号の「政令で定める事項」の一として、同法施行令第30条の25第1号により、外国人は氏名(本名)による住民票に、通称を併記登録することができる。通称の登録は「住民票に記載されることが必要であることを証するに足りる資料を提示しなければならない。」とされるものの、地方自治体ではいわゆる特別永住者の通称登録について、従来保持していた外国人登録証明書に通称が記載されていたという理由で引き続き受け付けているケースが多い。ただし外国人が住民票の写しや住民基本台帳カードを取得する場合は、氏名(本名)が記載されており、通称のみの住民票の写しや住民基本台帳カードは発行されない。
外国人登録証明書に代わり、外国人在留者には「在留カード」が、特別永住者には「特別永住者証明書」と書かれたカードが発行されることになった。これらには通称は表記されない。」
・「登録
通名の届出や変更は、市町村が窓口である。登録可能な通名は一つのみで、国籍の限定はなく、したがっていかなる国籍の外国人も、通名登録が可能である。住民票への通名記載を申し出る際には、「当該呼称が居住関係の公証のために住民票に記載されることが必要であることを証するに足りる資料を提示」すると共に、申出書に「記載を求める呼称が国内における社会生活上通用していることその他の居住関係の公証のために住民票に記載されることが必要であると認められる事由の説明」を記載する必要がある。(同法施行令第30条の26第1項、同法施行規則第45条第1項)
立証資料としては… …登録した通名を変更できる回数や頻度については統一的な法規定がなく、各市町村での判断事項であるが、2013年11月15日、総務省は結婚や養子縁組等の場合を除き、原則として通名変更を許可しない旨の通達を出した。
…転出・転入があっても氏名(本名)とそれに付随する通名は他自治体へ引継がれる。
一方、入国した外国人に発行される在留カードには、通名は(法律上も運用上も)記載されないため、通名の使用を証明するためには、本人の住民票の写しや住民基本台帳カードの提示(提出)によるしかない。また、外国人登録制度の当時は、各市町村において管理・保管していた外国人登録原票も、制度改正と同時に法務省に返納することとなったため、平成24年の制度改正前に使用していた通名の証明が必要な場合は、本人が直接法務省に、従前の外国人登録原票の写しを請求する必要がある。
また、いわゆる特別永住者には、在留カードに代えて市町村が発行する「特別永住者証明書」が交付される。この特別永住者証明書には通名は記載されない。
なお、従前の外国人登録証明書が発行されていた外国人については、移行措置として、当面はその外国人登録証明書が在留カードまたは特別永住者証明書とみなされるが、通名の変更があってもそれには反映されない(外国人登録証明書に記されたものと、住民票に記されたものが相違している可能性がある)ことに留意すべきである。
日本国籍の者は通名を登録できない。しかし日本国籍を取得したが改名していない場合など、日本国籍者でも通称名を使用することがある。その場合、その名称を法律的に有効なものとするためには、家庭裁判所で改名する必要がある。判例によれば「その通称名で生活している実態があること」は、改名の理由となる。」
2012年の制度改正により、しだいに特別永住者の例外的問題は解消されていくだろうが、現時点での問題点に関するウィキペディア記事をつづけて紹介しておく。
・「批判
通名の制度は、いわゆる在日特権、もしくは見直すべき制度であるとして、その問題点が批判されている。
在日特権を許さない市民の会は、同一人物が金融機関の口座を名寄せされることなく複数の通名を用いて複数の口座を開設できることが架空口座の存在を助長して脱税やマネー・ロンダリングを容易にするとしている。また、犯罪容疑者が本名で報道されないことで、在日外国人が社会的制裁を免れると指摘して、通名の存在を在日特権であるとして批判している。竹田恒泰は、讀賣テレビ放送『たかじんのそこまで言って委員会』への出演時に、この在特会の主張に賛同する意見を述べている。
2013年11月には、韓国籍の男が6つの通名を使用して、携帯電話など約160台を契約し、契約後に転売。料金などの月々の支払いを免れていた事件が起きている。通称を悪用した犯行の組織犯罪処罰法での立件は全国初の事例となる。
この事件に関する取材を受けて、片山さつきは、「日本人が改名するには、家庭裁判所の許可が必要だが、外国人の場合、届けるだけで通名を変えられる。これはいかにもおかしい。」「戦後生まれの人は、通名を持つ意味は少ない。日本名を名乗りたければ帰化すればいい。」と主張し、通名制度の見直しを主張している。片山は、尖閣諸島防空識別圏問題が発生した後に在日中国大使館が在日中国人に緊急事態に備えて連絡先を登録するよう呼び掛ける通知を出したことを挙げ、尖閣有事の際に在日中国人が国防動員法に基づいて蜂起する可能性を上げて、日本の安全保障の観点から懸念を示している。また、通名制度を是正することで、通名を隠れ蓑にした外国人の政治献金の防止ができることを挙げている。
犯罪の被疑者が通名を使用している外国籍の者であった場合、朝日新聞等の一部報道機関は、本名(民族名)ではなく通名(日本名)で報道することもある。
批判に対する反論
一方、在日本大韓民国民団は、「1人の人が2つも名前を持っているのは、確かにおかしい」としながらも、「本名を名乗ることで就職が難しくなる」という「日本の閉鎖性」を挙げ、「通名を使うのはいけないというのは、問題のすり替え」と反論している。また、通名変更の原則禁止の通達を出した総務省自治行政局外国人住民基本台帳室も、通名をすぐに廃止することについては「創氏改名から通名が使われ続けてきた経緯があり、現在も不動産登記などに使われていること」「本名だと読み方が難しい名前があること」を理由に否定的である。」
※民団もさすがに「就職差別」とは言えないようだ。なお、「閉鎖性」はどの国にもそれなりにあるだろう。
そもそも、《「自国民」と「外国人」を区別しないで採用する国家や企業》は、(米国の一部企業を除いて?)世界でどれだけあるのだろうか?
《「特別永住者の通名」は(公式には)事務処理上の便宜により例外として運用されてきた》ことは分かったが、《日本人(の多く)が朝鮮人を差別してきた(いる)かどうか》についてはまだ結論は出せない。
(以上で「通名」終わり)
~次回、「現状理解」をつづけ、その後、別項として「差別と区別」について考える~
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