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昔から母は留守番釣忍:原田香伯

2020年07月01日 | 俳句
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昔から母は留守番釣忍:原田香伯
母は家を守った。父が仕事の時も子どもが学校の時もである。ただ留守番をしていただけでは無い。家事の炊事洗濯以上の事をこなしていた。戦後の混乱期にはご近所から針仕事を頂いて家族の糊口を凌いだ。泣き叫ぶ子を背中にあやしつつ懸命に命を繋いだ。父がやけ酒で帰らぬ夜も家の留守を守った。子供が学校で悪さをしたときもひたすら謝って廻った。今静かな人生の午後を寛いでいる。わすかな風に風鈴が一鳴りした。囁く様な小さな音で。<短所みな母に似てをり冷奴:やの字>:俳誌『百鳥』(2019年10月号)所載。
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