やんまの気まぐれ・一句拝借!

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聖書読む家もあまねく除夜の鐘 和田眞美

2018年12月31日 | 俳句
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和田眞美
聖書読む家もあまねく除夜の鐘
クリスチャンの一大イベントであるクリスマスが終わっていよいよ新年を迎える。除夜の鐘が微かに聞こえてくる。仏教徒の家にもクリスチャンの家にも無宗教の家にもあまねく響いてゆく。話は逸れるが落語の中に「宗論は誰が負けても神の恥」というセリフがある。また日本人は八百万の神を受け入れる許容力があって大方は結婚式は教会、七五三は神社、葬式はお寺さんで行う。無宗教の私でも子供の大怪我の時は手を合わせ天に祈ったものだ。何はともあれ来年は誰もが幸せに暮らせますように!:俳誌『百鳥』(2018年3月号)所載。
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炭つげばまことひととせ流れゐし 長谷川素逝

2018年12月30日 | 俳句
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長谷川素逝
炭つげばまことひととせ流れゐし<
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火鉢に炭を継いで暖をとった昔が懐かしい。歳晩の一夜自己の一年を振り返る。あれよあれよと時は流れ去っていた。光陰矢の如しである。いろいろあった気もするが何も果たせなかった気もしている。止めようもない時の流れにただただ茫然と炭を継ぐ。隙間風が寒い。:備忘録。
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暮れきつてつひの絶叫冬の鵙 野見山朱鳥

2018年12月29日 | 俳句
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野見山朱鳥
暮れきつてつひの絶叫冬の鵙

冷気をつん裂く鳴き声は鵙である。年も押し迫った冬の夕暮れ。何か一喝されたやに背筋を伸ばす。巷にはぽつりぽつりと明かりが灯る。今日もおろおろと猫背を気にしつつ歩く。これで良いのか?いやこれしか無い。晩学の吾何も果たせぬまま暮れてゆく。うおっ~~~!:角川「新版・俳句歳時記」(1990年12月15日版)所載。
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水鳥の群れぬ一羽の光りをり 鬼野海渡

2018年12月28日 | 俳句
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鬼野海渡
水鳥の群れぬ一羽の光りをり
群れている水鳥の外れに一つ光っているものあり。群れを離れた一羽が浮かんでいるのだ。人間社会でも役所なり会社なり集団生活が中心ながらも一匹狼と言われる人が必ず出て来る。たった一度の人生思うがままに生きてみたい。そんな心の願望がなかなか果たせない。でもそんな人に出会うと羨望の眼差しを向けてしまう。俳人なら山頭火だろうか。そう生きたい。どっこいそうは生きれない。:俳誌「はるもにあ」(2018年第3月67号)所載。
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気付かれぬように雪から戻りけり 月野ぽぽな

2018年12月27日 | 俳句
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月野ぽぽな
気付かれぬように雪から戻りけり
外は雪。気付かれぬように戻ったのは家の人の作業を邪魔したくないからだ。ピアノを夢中で演奏している夫はまだ私が戻った事を知らない。着替えもそこそこにコーヒーを沸かす。そんな気配にやっとピアノが止まる。目と目で「只今!」と「お帰り!」を交わす。曲はエリーゼの為に代わってやっと指が止まりエンデイングとなる。ここから二人の長い夜が始まる。まだ雪は降っている。:俳誌角川「俳句年鑑」(2019年版)所載。
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鯛焼きの息づかいあり包み紙 人田葉子

2018年12月26日 | 俳句
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人田葉子
鯛焼きの息づかいあり包み紙
クリスマスも過ぎて時節は歳晩を迎える。寒さが年々身に沁みる。そこで身の内から温まりたいと鯛焼きを買う。女将がばさっと新聞紙に包んでぽいと手渡される。胸に抱えたその新聞紙ごと温かい。中で鯛焼きが息づいているかの様だ。家族の待つ家路へ心が弾む。家々の窓が灯され歩く息づかいも荒くなった。:読売新聞「読売俳壇」(2018年12月17日)所載。
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神父老い信者のわれ老いクリスマス 景山筍吉

2018年12月25日 | 俳句
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景山筍吉
神父老い信者のわれ老いクリスマス

神父はカソリックで牧師はプロテスタントと覚えている。思えば神父とも永い付き合いとなった。若くして原罪の重さに耐えかねて教会へ飛び込んだ。あの日あの時の懺悔から老いた現在まで神父はわが話を受け止めてくれた。われが老いたのだから神父はもっと老いたことになる。今日はクリスマス。静かにミサに頭を垂れてこよう。因みに筍吉は家族全員三姉妹の娘に至るまで敬虔なクリスチャンであった。また小生とは歳は誓ったが昭和39年藤倉化成着任同期生でロッカーは隣同士であった。運転手君日陰を走ってくれたまえ伝説や<熱燗や性相反し相許す>が懐かしい。:サンパウロ社「キリスト教歳時記:付録」所載。
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聖夜眠れり頸やはらかき幼な子は 森澄雄

2018年12月24日 | 俳句
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森 澄雄
聖夜眠れり頸やはらかき幼な子は
まだ生まれたてで頸の座らない幼子がすやすやと眠っている。汚れなき聖夜にまだ汚れを知らぬ幼子の眠りである。思えば汚れ切った我が身の成れの果てがここにある。物欲性欲出世欲。人には見せぬ内側の汚れは己自身が承知している。世間を渡るあれやこれやに眠れぬ夜が幾夜あったか。原罪もこの世の罪も振り払い何時の日かぐっすりと熟睡してみたい。神様よ惚ける術を早く授け賜え。:彩図社「名俳句一〇〇〇」(2006年11月10日)所載。
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あれも是もと作り過ぐるやおでん鍋 大谷代志江

2018年12月23日 | 俳句
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大谷代志江
あれも是もと作り過ぐるやおでん鍋
寒い冬は鍋物。熱いものを食べれば体が温まる。そして具材が豊富なおでんであれば自分好みのあれやこれやで幸せいっぱいである。作り手の方も自分の好物も家族の好物も取り入れて愛情満タンである。だからどうしても人数分以上に作り過ぎることになる。さはさりながら一夜の夢が明けても後の何日分の食卓をも補える。寄せ鍋、湯豆腐、、、今夜は何で温まろうか。:俳誌『春燈』(2018年2月号)所載。
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一言の追記大事に賀状書く シナモン

2018年12月22日 | 俳句
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シナモン
一言の追記大事に賀状書く

12月25日までに持ち込めば年賀状は元日に配達される。今慌てて賀状を書いている方も多いだろう。型どおりのおめでとうのデザインが出来上がったが一言の追記に一人一人への思いを込める。むしろここが肝になる。相手への思いやりの文言を各人毎に考えることになる。さりげなく自分の弱音を添えることもあろうか。去年(今年の元日)は高齢につき今回で最期にしますとの断りがあった。賀状書くのも体力が無ければ出来ぬ仕事かも知れない。:つぶやく堂ネット喫茶店(2018年12月17日)所載。
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笠智衆の眼差しになる柿落葉 をがわまなぶ

2018年12月21日 | 俳句
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をがわまなぶ
笠智衆の眼差しになる柿落葉
渋い俳優の笠智衆が柿の落葉を眺めている図。帝釈天なら箒を持って境内を掃き清めているのかも知れぬ。元々寺の次男坊として生まれたので坊主役は自然体でこなせる。また他の小津映画をみても日本の父親像を象徴している。もしかしたら娘役の原節子を嫁がせる時の感傷の図なのかも知れぬ。柿落葉を凝視する眼差しにどこか哀愁が伴う。落葉模様は今万華鏡状態にある。:俳誌『百鳥』(2018年2月号)所載。
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渡船場の待合室に着膨れて 山本あかね

2018年12月20日 | 俳句
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山本あかね
渡船場の待合室に着膨れて
よせば良いのに着膨れの重装備でお出かけである。寒々とした川を船で渡ることになった。船の定刻まで待合室で時間潰しをする。次第に川風が身に沁みて来る。旅をするなら心細いほどの冬の旅がよい。感傷に詩心も湧いてくる。宿の温かい夜食に熱燗がつけば言うことはない。されど旅には悲しい旅だってあるだろう。船を待つ一人一人に夫々の事情があると言うものだ。:句集「緋の目高」(2018年11月27日版)所載。
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梟のうつかり人語喋りたる 岡本恵子

2018年12月19日 | 俳句
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岡本恵子
梟のうつかり人語喋りたる
社の森だろうか佇んでいると梟が言葉を発した。どうやら我々の話を聞いて「ほほう」と相槌を打ったらしい。この瞬間鳥と人間の隔たりが霧消しひとつの生命体として共立している。ところで鳥の鳴き声を人語として了解する「聞きなし」と言うのがある。鶯の<法法華経>時鳥の<特許許可局>梟の<ぼろ着て奉公>小綬鶏の<ちょっと来いちょっと来い>。今日は鴉が<阿呆阿呆>と言って飛んで行った。:俳誌「ににん」(2018年冬号)所載。
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みみづくとなつてしまひし花芒 金子敦

2018年12月18日 | 俳句
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金子 敦
みみづくとなつてしまひし花芒
花芒の穂も丸々と太ってまるでみみづくの様である。いやみみづくは花芒の化身かも知れない。と妄想を膨らませ野道を歩く。私の周辺には利根川と支流の江戸川それを結ぶ運河が流れて晩秋から冬季には芒で満たされる。サイクリングにはもってこいの環境である。よく翡翠には遭遇した。あるとき鴉とみみづくの戦いに遭遇した事がある。夜間は鴉の巣を攻撃するみみづくも昼間うっかり遊びに出るとえらい目に会てしまう。周辺の田畑が物流センターに開発される工事中だが何か淋しい。:俳誌「季刊芙蓉」(2018年冬号)所載。
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ゆく年のひかりそめたる星仰ぐ 久保田万太郎

2018年12月17日 | 俳句
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久保田万太郎
ゆく年のひかりそめたる星仰ぐ

いよいよ年も押し迫って来た。ここのところ双子座流星群が観察できている。冬は空気も澄んで晴れていれさえすれば星空が美しい。夕暮れに光り初めるのは宵の明星。金色あざやかな金星である。大きさで言えば木星、色で言えば赤い火星。銀色の一等星はシリウスであろうか。特に都会を離れたところでは言葉を絶する美しい星空が見られる。正月の七ケ日くらいは東京で天の川を見てみたいものだ。:備忘録
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