やんまの気まぐれ・一句拝借!

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落ちかけて持ち直しけり巣立鳥:望月清彦

2021年04月30日 | 俳句
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落ちかけて持ち直しけり巣立鳥:望月清彦
この春に生まれた鳥がもう巣立ちの時期を迎えた。見ていると危なっかしくてはらはらどきどきである。おっと落ちるかなと思ったら持ち直した。小生の体験では雀の子がよく落ちてきた。経理の女子社員が拾って左の手の平で保育しながら勤務していたのを覚えている。ある日開け放ってある窓からひょいと飛び出してそれきりとなった。:読売新聞「読売俳壇」2021年4月19日所載
(今日二匹巣立ち確認雀の巣:やの字)
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パンク修理飽かず見てる子日の永し:大東美智子

2021年04月29日 | 俳句
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パンク修理飽かず見てる子日の永し:大東美智子
自転車のパンクを修理している。それを飽かずに見ている子がいる。そんな作業も最近は日が永くなっていつまでも明るい中で出来る。時間はたっぷりとある。興味心旺盛な子供には何時までも見ていたい作業である。例えは変かも知れないが街中の大道芸を見る様な興味心とでも言おうか。昔は自宅にゴムのりとか。タイヤチューブの切れ端があってよく自分で修理したものだった。最近はパンクもしない自転車ばかりになってしまったのか。昭和へのノスタルジアを誘う修理である。:読売新聞「読売俳壇」2021年4月19日所載
(冷やかしの路上バザーや日永し:やの字)
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諦めの早さが取得大朝寝:あらゐひとし

2021年04月28日 | 俳句
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諦めの早さが取得大朝寝:あらゐひとし
朝は昼近く迄の大朝寝をしている。あれもこれも諦めてしまえば気楽なものである。こんな性分は生まれながらのものである。自分ではこれが取得だと思っている。出世もしなかったがまずまずの人生であった。テレビではゴルフの松山某さんのあきらめない根性が賞賛されている。あれはあれで大変だろうなと思う昨今である。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月18日所載
(凡人に凡日のあり大朝寝:やの字)
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芽吹きけり破船のごとき樹根より:山中登志子

2021年04月27日 | 俳句
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芽吹きけり破船のごとき樹根より:山中登志子
芽吹くものが見に入った。それも破船のごとき樹根から蘖(ひこばえ)ている。生命力は時にか弱く時に斯く逞しい。時は新緑の候。新しい芽吹きが朽ちゆくものを凌駕してゆく。「近頃の若い者は、、、」と愚痴っている内にとうとう若い者に導かれる年齢となってしまった。若い者に任せて楽をする術も次第に着いてきた。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月18日所載
(芽吹くもの人の目にあり春の川:やの字)
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うららかや道問ひしより道連れに:早川水鳥

2021年04月26日 | 俳句
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うららかや道問ひしより道連れに:早川水鳥
うららかな春の一日の散策。少し遠出となった。近くに旧跡があると聞く。出合った人に道を問う。おなし方角ですからと道連れのご案内となった。人の縁と言うのは不思議なものである。長く住む町内の人でも口も聞いた事の無い人もあれば旅先の一目惚れもこれありである。今日賜わった一期一会の展開はどうなってゆくのであろうか。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月18日所載
(家を出て外にある顔うららかや:やの字)
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春眠の夢に集ひてみな若し:笠井彰

2021年04月25日 | 俳句
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春眠の夢に集ひてみな若し:笠井彰
心地良い春の眠りに沈んでいる。その夢の中であの顔この顔懐かしい顔ぶれが集った。まてよどの顔も若々しいではないか。そう言えば若くして別れた顔ぶれではある。消息不明の者も何名かいる。地道な暮らしの便りを貰った者もある。初恋の女子先生は他界されたとも聞く。吾に度胸無く告白出来なかった娘もあの頬笑みを見せてゐる。夢なのに深刻になってしまう自分がここにある。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月18日所載
(とろりとろり夢の中でも春愁:やの字)
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三分とて早や人に酔ひ花に酔ひ:一寸木詩郷

2021年04月24日 | 俳句
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三分とて早や人に酔ひ花に酔ひ:一寸木詩郷
待ちかねていた桜が咲いた。三分咲きの花々が目に眩しい。土地土地の花の名所に人は出掛け花を愛で花に酔う。心許した人々が宴を開き酒を飲み命を喜んでいる。時は春これから様々な花が咲き目を楽しませてくれる。山の緑も滴る様だ。[閑話休題]ところで今年は何時もと大分様子が違うようだ。気候の温暖化で各地の花の見頃も早くなった。それに例のコロナで人の出もめっきり減ってしまった。元の様な賑わう花見が今後帰ってくるか心配である。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月18日所載
(酔狂といふ今生の花の宴:やの字)
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若鮎の跳ね上がりたり堰の上:岩本弘

2021年04月23日 | 俳句
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若鮎の跳ね上がりたり堰の上:岩本弘
花が葉に主役を譲っていよいよ新緑の候となってゆく。一年魚の鮎が海から川へと遡上を始めた。若鮎が新鮮な輝きをもって遡上する川ではあるが途中には関所のように「堰」が待っている。逞しい彼らはそれを物ともせずに跳ね上がり跳越えて遡上してゆく。これを逞しいと言うか美しいと言うか哀れと言うか。再び彼らがこの堰へ戻る頃には「落ち鮎」と言われ終末の淵へと流されてゆくのである。:読売新聞「読売俳壇」2021年4月13日所載
(時は今鮎の命のきらめきぬ:やの字)
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老人の老いゆく速さ竹の秋:中村重雄

2021年04月22日 | 俳句
598
老人の老いゆく速さ竹の秋:中村重雄
何歳からが老人と言うのか。ワクチンの摂取では無いが近時65歳からが老人ですよなどとは言えなくなってきた。老人会では65歳は若手のホープと言われるご時世である。とは言うものの老いの自覚は人によって様々なようだ。多分老いを自身で自覚した時が老いなのだろう。その老いを自覚した瞬間から老いて行く速さを思い知る事になる。折しも竹の葉が竹林に猛烈に積み上げている竹の秋である。:読売新聞「読売俳壇」2021年4月13日所載
(八十は洟垂れ小僧竹の秋:やの字)
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たんぽぽの咲く土手子等は草すべり:三好れいこ

2021年04月21日 | 俳句
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たんぽぽの咲く土手子等は草すべり:三好れいこ
土手にたんぽぽが先満ちている。こんな春爛漫の中子等が草を滑って遊んでいる。その段ボールにお尻を乗せて滑る事を誰かが発明する。速さを競っているうちに大きな段ボールに二人三人と乗って滑り出した。それを見ていた連中が同様の段ボールに乗って競争を始める。子供は遊び作りの天災である。たんぽぽも一緒になって遊んでいる様に見える。:読売新聞「読売俳壇」2021年4月13日所載
(たんぽぽや母ありし日の土手遊び:やの字)
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若者の方が息切れ山笑ふ:萩原豊彦

2021年04月20日 | 俳句
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若者の方が息切れ山笑ふ:萩原豊彦
若者と歩く。若者の方が先に息切れである。はあはあと言う吐息に山が笑っている。何せ高年齢化の時代ご長寿の方が増えている。しかも戦争その他様々の試練を潜って来たしたたか者である。ちょっとの飢えや生傷など屁とも思わない。自分は昭和16年の生なのでそれから見ると若者の根性がまま気になってくる。現実には何も出来ない年齢なのだが人のだらしなさだけは気になって嘆いている。それぞれに人生峠あり山よ笑うことなかれ。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月11日所載
(夢に見るふしだらな恋山笑ふ:やの字)
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春暁や病諾(うべな)ひ生きぬかむ:北村和枝

2021年04月19日 | 俳句
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春暁や病諾(うべな)ひ生きぬかむ:北村和枝
思い掛けずに病を得てしまった。何で私が?!?!と不条理を恨むばかりである。ではどうするか。そんな現実をしかと認識して諾(うべな)うしか術はないのだ。そんな覚悟から生き抜くぞと闘志をかき立てる。本来芯のところで気の小さな自分を知っている。どうぞ神様仏様ご加護の程を願います。無宗教ながらこう言う時には祈っているのである。そう天国の父母が見守ってくださるのが心の頼りである。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月11日所載
(逝く春の五臓六腑をいたはりし:やの字)
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あくびして今日はじまる仔猫かな:熊木和仁

2021年04月18日 | 俳句
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あくびして今日はじまる仔猫かな:熊木和仁
仔猫が目覚めるや欠伸した。かくして我が家の今日が始まった。何と長閑かな始まりだろう。お茶の間のテレビでは各地の紛争や病魔との戦いはたまた貧困の嘆きが映し出されている。そんな状況の中でこの家の普通の生活が有り難い幸せである事を思い知る。今この日本の安寧があまねく人類に行き渡り何時までも有り続けることを切に祈りたい。:朝日新聞「朝日俳壇」2021年4月11日所載
(遊ぶ目の真剣なこと仔猫かな:やの字)
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あたたかやそちら聞こえぬはうの耳:夏井いつき

2021年04月17日 | 俳句
593
あたたかやそちら聞こえぬはうの耳:夏井いつき
心地良いあたたかさの中で会話が弾む。近頃だいぶ耳も遠くなった。時に言葉が聞き取りにくい事がある。幸い耳は二つあるのでどちらかが機能していれば良しとする。さて今の一言は音として聞こえているが言葉として聞き取れぬ。まあ都合の悪い事は聞こえないほうが気楽と言うものである。ところで口が軽く尻が重いのは生まれながらの性である。:俳誌「角川・俳句」2021年4月号所載
(あたたかや財布はたいておーいお茶:やの字)
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ヒヤシンス落下する夢ばかり見る:鈴木統子

2021年04月16日 | 俳句
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ヒヤシンス落下する夢ばかり見る:鈴木統子
ヒヤシンスが咲いている。ここのところ落下する夢が続くのは気候が不安定の為かも知れぬ。今は春だと言うのに不意に寒さが身を襲ったりする。そんな時には不思議と悪夢を見てしまう。私事のトラウマの話だが東京空襲の最中に襲いかかる猛火から子を救くおうと母は私を水路に放り投げた。その空中遊泳が時折夢となって現れる。冷や汗に目を覚ませば激しい不整脈に襲われた自分が其処に居るのである。ヒヤシンス咲く春寒の頃である。:俳誌「ににん」2021年春号所載
(ヒヤシンス面影ふいと現るる:やの字)
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