やんまの気まぐれ・一句拝借!

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売薬に勝ると爺の玉子酒 後藤丈平

2020年01月31日 | 俳句

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後藤丈平
売薬に勝ると爺の玉子酒

風邪で微熱を出した。婆が手ぬぐいに葱を包み首に巻いて呉れた。爺はこれが一番と玉子酒をつくって呉れた。これで大体の風邪が治った。今はよく効く薬も開発され昔から自分に効く漢方薬もあり普通はこういう対応で治る。病院へ出かけるのは最終手段になる。病院が決め手とは分っているが待ち時間の長さなど抵抗が残る。でもなあ、新型ウイルスもあることだし社会的拡散も考えれば医療機関へは行くべきなのだろう。:俳誌「百鳥」(2019年4月号)所載。
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こぼれても山茶花薄き光帯び 眞鍋呉夫

2020年01月30日 | 俳句
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眞鍋呉夫
こぼれても山茶花薄き光帯び

山茶花の花が散っている。その薄い光を帯びて周辺の大地が眩しい。咲満ちてこぼれる風情がどこかやさしい。僅かな風にこころなしか匂うが如くに感じられる。四季を飾る花々の中でも冬の花は慎ましく咲く。散り敷いてこその華に光りが注がれている。傍らに紅い椿が首からぽとりと落ちた。:角川「合本・俳句歳時記」(2019年3月28日版)所載。
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ふるきよきころのいろして冬すみれ 飯田龍太

2020年01月29日 | 俳句
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飯田龍太
ふるきよきころのいろして冬すみれ

冬の一隅に菫を見つけた。何故か故郷の幼い自分が甦る。ふるきよき時代であったと心底懐かしい。あれは昭和の御代だった。貧しかったが心が豊かだっや気がする。子供達は屋外で一日遊びほうけた。屋外の田んぼは遊びのホームグラウンドであった。野球も出来たし昆虫も追いかけた。田の用水路での泥鰌獲りや鮒釣も出来た。そんな良き頃の冬菫が時を隔てて今眼前にある。:角川「合本・俳句歳時記」(2019年3月28日版)所載。
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冬の霧寄生木のなほみどりなる 満田春日

2020年01月27日 | 俳句
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満田春日
冬の霧寄生木のなほみどりなる

冬の早朝に霧が辺りを覆った。景色が霧の灰色一色となった中に寄生木(やどりぎ)だけが緑色に浮いている。人という社会的存在は社会の中の居場所によって色を変えて生きていゆく。思えば自己を他人にすがって生きてきた自分とはなんだったのだろう。人の世の人の情けが自分を養ってきたのか。いやいや確かに自分の居場所をここに見つけて自分らしく生きてきたはずである。自分が自分色にきっと見えていたはずである。霧が晴れても自分は自分色である。:俳誌「はるもにあ」(2020年1月号)所載。
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堅き意志もちて凍蝶羽を閉じ 寂仙

2020年01月27日 | 俳句
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寂仙
​堅き意志もちて凍蝶羽を閉じ​

寒気に包まれてまだまだ寒い日が続いている。こんな日に一隅の蝶々が目に入った。じっとして動かない。凍てついた様に固まっている。ふとこれは堅い意思をもって羽を閉じているのだと読み取った。禅僧の達磨さんの様な事だろうか。さて土筆とか蛇の様に季節にきっちり従って顔を出すものが多いが、季節を違えて顔を出すものもある。我が周辺でも蒲公英とか蝶々は年を通してみられる。それにしてもこの寒いのに何に迷って歯車を狂わせてしまったか。この凍蝶には人生に何かを抱えている作者の投影がある。:ネット俳句「つぶやく堂俳句喫茶店」(2020年1月24日付)所載。
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寒卵いのちのまろみすすりけり​ 大橋すすむ

2020年01月21日 | 俳句
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大橋すすむ
​寒卵いのちのまろみすすりけり

丸い卵には丸い命が詰まっている。卵は寒という体力の萎え気味の時候には滋養の源に大変良い。と今朝はその寒卵をまるまる啜るのであった。世は長寿社会到来と言うがこれは健康であってこその話し。寝たきりになっては本人も周りも辛かろう。まして否応なく呆けてゆき高齢者の自動車事故も後を絶たない。自分だけはそうなるまいと栄養に気を遣い毎日の万歩計測定に励む今日この頃ではある。気のせいか性格だけは卵の様に歪んだが丸くなってきた。:俳誌「百鳥」(2020年1月号)所載。
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川風に一月場所の太鼓かな 島田五空

2020年01月19日 | 俳句
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島田五空
​川風に一月場所の太鼓かな​

地元っ子が大川と呼んでいる隅田川。その川風に乗って一月場所の触れ太鼓が流れて来た。一月場所は初場所とも言われ気分一新した力士達にも気合いが入っている。正面の櫓では開始の太鼓と終了の打ち出し太鼓がある。野鳥の聞きなしではないが始まりは「どんどんこいドンドンコイ」と聞こえ終了の跳ね太鼓は「でていけデテイケデテイケ」と聞こえるそうだ。どの場所でも新鋭の活躍や老兵の頑張りが注目される。さて注目の日本人力士の活躍や如何に。:雄山閣「新版・俳句歳時記」(2012年6月30日版)所載。
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鰭酒のすぐ効きてきておそろしや​ 皆川盤水

2020年01月18日 | 俳句
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皆川盤水
​鰭酒のすぐ効きてきておそろしや

切り落とした河豚の鰭をこんがり焼いて熱燗に注ぐ。その薫り方が強烈で直ぐに酒が回った錯覚に陥る。お値段も少々お高くなるのだが酔った勢いでご注文と言う事になる。おなし酒量でも恐ろしいほど効いてきた。そこで知らぬ同士の熱弁を交わす次第になってゆく。河豚の毒こそ無かったが人様に絡まれての毒舌には参った、参った。:雄山閣「新版・俳句歳時記」(2012年6月30日版)所載。
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阪神忌天幕の灯は野外ミサ​ 小路紫峡

2020年01月17日 | 俳句
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小路紫峡
​阪神忌天幕の灯は野外ミサ

平成七年(一九九五)年一月十七日未明にマグニチュード7.2の大地震が神戸市・淡路島を襲った。今、その時の死者を弔らってミサが行われている。野外に張られた天幕が寒風に揺れて立ち尽くす人々を心身共に冷たくしている。わが住居では福島沖の地震の余震だろうか震度三とか四の揺れは常時ある。玄関には非常時様の防災鞄がおいてある。自治会も防災自衛組織を立ち上げた。炊き出し用の発電機大型炊飯設備も備えた。しかし想定外の天災は忘れた頃にやって来る。人知が果たして及ぶのだろうか。人はただ静かに祈る事あるのみ。忘れたくとも忘れられない天災が有る。:雄山閣「新版・俳句歳時記」(2012年6月30日版)所載。

埋火や大事な一語忘れたる ほりもとちか

2020年01月16日 | 俳句
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ほりもとちか
埋火や大事な一語忘れたる

昔は火鉢とか囲炉裏があった。その灰に埋もれた火を吹くとまた炎が甦る。丁寧に吹いている内に今話そうとしていて事を忘却してしまった。大切な事だったか大した事では無かったか。忘れてみれば大事な一語となって心理に重くのしかかる。埋火の火が立ち上がる前に思い出せるといいなあ。あ、そうだ「雨でもヨガは中止なし」と妻への伝言を忘れるところであった。これは大事(おおごと)になるところであった。:朝日新聞「朝日俳壇」(2019年12月29日)所載。
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風花や夫をいとしと思ふ時 山本あかね

2020年01月11日 | 俳句
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山本あかね
風花や夫をいとしと思ふ時

晴天なのに雪がちらついている。風花である。今は天国にいる夫の便りかも知れぬ。ふと無性に亡き夫が愛しく思えてきた。思えば一緒に過ごした時間の長かったこと。自分を形作ってきた大半の時間を共にしてきたのである。家を成し家族を成し旅を成しゴミ出し諸々の生活を成してきた。失って知る存在の大きさが物質の様な重量をもって胸に迫ってくるのであった。:俳誌「百鳥」(平成2019年4月号)所載。
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人日の黄の花々を数へつつ​ 友岡子郷

2020年01月07日 | 俳句
友岡子郷
​人日の黄の花々を数へつつ

新年も早七日目を迎える。食傷気味の身体を表へと誘い出す。黄色い花が目に優しい。名前を知っているのは冬ながらの蒲公英、水仙、蝋梅、パンジー、石蕗などあったが名を知らぬものも結構多い。日当たりの良い場所ではこの時期春を先取りしているのだろう。季節はデジタルにはやってこない。アナログで重なり歪んで進行してゆく。そんな季節に身を置いて今日も万歩計は頑張っている。:俳誌「角川・俳句」(2020年1月号)所載。
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初声や電線すずめ庭すずめ​ 鷹羽狩行

2020年01月03日 | 俳句
鷹羽狩行
​初声や電線すずめ庭すずめ​

元旦の夜も明けて雀の声が姦しい。空からは電線の雀地面からは庭の雀が鳴き騒ぐ。騒がしいと言っても耳障りの良い響きでとても心を安らげる。近年雀の数が激減しているという。我が近辺でも普通に雀はいるのだがその一群れ一群れの家族数が縮小している様に感じられる。地球環境や生活環境の変化が影響しているのだろうか。老婆心ながら雀や鴉が絶滅危惧種にならぬ様に祈っている。:俳誌「角川・俳句(2020年1月号)所載
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