太秦と新入り

2017年05月14日 08時45分21秒 | 業界のかけら


関西で活動する舞台女優から聞いた話。

太秦の撮影所では、
新入りの役者はスタッフや大部屋役者から、
手厳しい洗礼を受けるという話は何度か聞いたことがある。

彼女も初めて太秦で仕事をした時は、
「もうやりたくない」と泣きながらマネージャーに電話をしたそうだ。

特にキツく当たられるのは、東京から来た役者だという。

何回目かの撮影の時、
彼女はお武家様の妻の役をやった。
その役はいつも東京の女優が演じているのだが、
なぜかこの時は彼女だったのだ。

おかげで撮影当初、けっこういろいろと嫌がらせをされたらしい。
たとえば、
移動のロケバスで席につこうとすると、
その席にわざと荷物を置かれる。
仕方なく立っていると、
「危ないから座れ」と言われる。
そういった類のことだ。

だがある日の昼休み、
話の流れで彼女が素性がわかった途端、

「なんや君、天六なんか。はよ言うてや」

急にみんな親しげに接してくれるようになったという。

まあ、これは二十年ぐらい前の話。
今は昔と比べると、閉鎖的な空気はかなり無くなったようだけれど。