映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

女が階段を上る時  高峰秀子

2011-02-15 20:35:47 | 映画(日本 昭和35年~49年)
高峰秀子さんが年末亡くなられた。

自分も年齢を重ねて、高峰秀子の魅力がわかるようになってきた。ブログで何か作品をとりあげてみたいと思っていたが、むしろ普段のキャラと違う作品がいいと思った。「女が階段を上がる時」は銀座のママを演じる映画である。成瀬巳喜男監督がメガフォンをとり、いつもと違う高峰秀子の魅力を引き出している。「浮雲」で共演した森雅之も一緒だが、東宝のスターを中心に豪華キャストである。音楽は黛敏郎の担当、MJQを思わせるバイブを基調とした音楽は成瀬作品では珍しい。でも夜の銀座を舞台にしたこの映画にぴったり合っている。



主人公こと高峰秀子は銀座のバー“ライラック”の雇われマダムである。
夫に死なれた高峰が、マネジャーこと仲代達矢にスカウトされ、この道に入ったのは五年前であった。ある日、店のオーナーに呼ばれ、売上げ減ったことを責められた。利権屋こと小沢栄太郎が最近店に寄りつかなくなったという。売り上げになるような客をもっと呼ぶように出来ないものかという。小沢は以前高峰のバーで働いていた淡路景子の店に通い詰めていた。
マネジャーの仲代が電話で呼び込みをして、小沢が高峰の店へ久々に現われた。彼は淡路の店へ高峰を案内した。店は繁昌していた。高峰の店のなじみの客がとられていた。高峰が好意を持つ銀行の支店長森雅之も来ていた。高峰は客足をもどすため、雰囲気を変えることを決意し、店の場所を移した。すると、上京した関西の実業家こと中村鴈治郎が、店を持たせるからと高峰に迫ってきた。雇われマダムの高峰は心を動かされるのであるが。。。。



高峰秀子には独特の品位がある。腐れ縁の極地の映画ともいえる「浮雲」で、戦後落ちに落ちていった女性を演じたが、その品位は崩しても残るものであった。ここでも銀座のママとして、貞操概念を守りながら、うまく男をはぐらかす役を演じる。本当は普通の主婦が似合う女性なのだと思う。成瀬巳喜男作品ではずいぶんといろんなことをやっている。個人的には「乱れる」が一番好きだ。

この映画をみると昭和35年ごろの銀座の光景が出てくる。リアルな画像である。これを見ているだけでも楽しい。外のネオンの雰囲気は若干違う。でも飲み屋街としては大きくは変わっていないのではないか?ちょうど2月の初めに銀座のクラブへ行ったばかりだ。そんなに違和感がない。銀座らしさは一緒だ。だからこそ銀座の常連というべき人がずっときつづけているのであろう。車で帰るのは一流のホステス、電車で帰るのは二流のホステス、客としけこむのは最低のホステスとナレーションで高峰秀子が話していた。


俳優が豪華だ。みんな芸達者である。森雅之は「浮雲」からのまさに腐れ縁。ポマードで髪を決めているその姿がジェントルマンのいでたちで、銀行の支店長という配役が実に似合う。煮え切らない男の役が多い。森雅之であるが、ここでも若干その匂いを出す。中村雁治郎が映画で一番活躍していたころの作品である。あくの強い関西弁を駆使する。美人に弱いスケベ親父がよく似合う。仲代達矢は売れ始めてきたころの作品だ。「人間の条件」を取り終えたころである。「用心棒」「天国と地獄」など黒澤明作品に連続で主演するのはこのあとだ。

このころの淡路恵子は美しい。高峰秀子はバーのママがあまり似合わないキャラだが、淡路の場合銀座のママという役がまさに水を得た魚のようだ。他には成瀬作品の常連中北千枝子、若大将シリーズにも顔をよく見せる団令子、チャコちゃんシリーズのおばあちゃん賀原夏子など。その後ヒステリーおばさんの代名詞になった塩沢ときが若かりし日の美貌を見せるのが面白い。お店の大女将として細川ちか子が貫禄を見せる。政治家藤山○一郎さんとの関係はあまりにも有名だ。おていちゃんこと沢村貞子は加東大介と兄弟で出演。

まさに映画全盛時代のオールスター映画いいものである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 瞳の中の秘密  | トップ | フローズンリバー メリッサレオ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(日本 昭和35年~49年)」カテゴリの最新記事