映画とライフデザイン

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映画「黒い画集 寒流」 池部良&新珠三千代

2014-04-16 17:18:04 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「黒い画集 寒流」は1960年の東宝映画だ。
「黒い画集」松本清張の傑作短編集で、先日も「あるサラリーマンの証言」を見たが、実におもしろかった。「寒流」はサスペンス仕立てであるが、殺人事件はからまない。昭和35年前後のサラリーマン状況を巧みに映し出しており、面白い。

池部良の銀行支店長ぶりは、冷静沈着な振る舞いでいかにも一時代前の支店長像である。何よりも見モノは新珠三千代の美貌である。「けものみち」の時に少年のころは池内淳子に関心を持たなかったという話をしたが、新珠三千代も同様である。はやりまくった「細うで繁盛記」はときおりみていたが、彼女を見ても何も感じなかった。でもここでの新珠は気品があり、本当にきれいだ。年齢を重ねて初めてわかる女性の美しさである。「洲崎パラダイス」のあと、「女の中にいる他人」の前でこのあたりが一番いいのかもしれない。

安井銀行の役員会の模様が映し出される。常務の桑山(平田昭彦)は池袋支店の支店長に本店貸付課長の沖野(池部良)を推している。反対派閥の副頭取(中村伸郎)一派はまだ時期尚早と反対するが、多数決で沖野の昇格が決まる。桑山と沖野は大学の同窓、前頭取の子息ということで桑山は早くも常務に昇格している。桑山は女に手が早く、沖野は銀座のホステスとの手切れ問題処理を密かにしていた。

池袋支店長となった沖野は、新任の挨拶廻りの時に料亭「比良野」の女主人前川奈美(新珠三千代)の元を訪れた。未亡人で美人の女将であった。その後、奈美が増築のため一千万円の融資を頼みに来た。自身の決裁範囲を超える多額の融資のため、桑山常務に相談した。お店に一度寄ってみろよといわれ沖野は1人で飲みに行った。店が繁盛しているのを確認して、この大口取引を承諾した。
未亡人の奈美は相談する男性が欲しかったところだった。やがて二人は親密の度を増し、奈美は沖野と体の関係を待った。
結婚を口にする奈美に、病弱の妻(荒木道子)をかかえる沖野の心は動いた。

そんな時、桑山が池袋支店に沖野を訪ねて来た。成績が好調ということで激励に来たのだ。沖野の部屋に遊びに来ていた桑山は奈美を見て一目惚れした。帰り際に料亭まで送っていった。
桑山は週末湯河原へゴルフに行こうと沖野と奈美を誘った。手の早い桑山は早朝に奈美の部屋に忍び込む。
桑山は、都内に進出するための追加融資を種に奈美を口説いたのだ。一方沖野が自宅へ帰ると、妻のところへ医者が往診に来ていた。どうやら睡眠薬を飲んで自殺未遂をしていたのだ。
沖野は自身が興信所で女性関係を調べ上げられていることを知った。わかった以上、奈美との結婚を本気で考えようとしていた。ところが、奈美は急によそよそしくなった。

しばらくして、沖野は宇都宮支店に転勤させられた。異動の送別会で関東の大支店長と沖野を持ち上げたが、桑山は沖野がじゃまになったのだ。
嫉妬心から沖野は、宇都宮支店にあって仕事が手につかなかった。沖野は秘密探偵社を訪れた。そこで探偵の伊牟田(宮口精二)に桑山の素行調査を依頼する。しばらくたち伊牟田が調査報告書を持参してやって来た。奈美は旧大名屋敷を買い取り六千万円はする店内の改装、それに桑山との情事の日取りまでが詳細に記されてあった。
沖野はこの資料を持って上京、総会屋の福光喜太郎(志村喬)に会う。株主総会でスキャンダルと不正貸付をバクロ、桑山を社会的に葬るためだ。総会の前に福光が桑山の常務室を訪れるのであるが。。。。

映画を見ながら「半沢直樹シリーズ」を連想したが、現代とは様相がまったく違う。
総会屋やヤクザなんて人種は、平成金融不況時代から銀行とは縁がない存在になってきているのではないか?(裏ではわからないが。。。)ネット社会となり、わずかなヤバイ関係を発見するだけで大騒ぎとなる。この映画で志村喬丹波哲郎が演じる役柄は現代では抹殺された存在になっているかもしれない。特に丹波哲郎のシーンは異様な雰囲気だ。
「半沢直樹」と「寒流」に1つだけ共通点がある。悪党の常務を演じる俳優が香川も平田も東大出身である。俳優になったというだけで世間でいう東大エリートとは違う立場だけど、ちょっと間違ったらそうなっていたという訳だし、2人とも悪党がうまい。

宇都宮に左遷というストーリーとなる。池袋支店の業績がいいというセリフがあるのに、そんなにすぐ異動させられるものなのかと感じてしまう。映像ではどうやらJR宇都宮駅前の大通りを映しているというのがよくわかる。自分も30代半ばから宇都宮に5年行っているので、立場は同じようなものだが、ホンダ、キャノンが進出して工業団地が充実している現在よりもこの時代の方がもっと衝撃が大きいかもしれない。「半沢直樹」シリーズでもやたらと出向や左遷話が出てくる。地方を楽しむのも悪くないと思うんだけど、世間の若手はあのテレビを機に出向や地方勤務を嫌がる傾向があるという。もったいない。

それにしても平田と池部は大学の同窓で、平田の女関係の清算にも池部が関わっている関係なのになんでこんなにいがみ合うのかなという感じがする。そこが不思議かな?3人でお風呂に行く場面もちょっと不自然だ。映画でゴルフ場に行く場面がある。湯河原に行くと言っているが、海が見える打ちおろしの美しいゴルフ場だ。平田がショットを打った後、新珠の登場でカットだが、湯河原カンツリーみたいだ。

ここでのオチはその後どうなるのかをはっきり言わない。
でもこの時代の映画はどれもこれも大物の方がうまく逃げるという展開だ。その時代背景だったのであろうか?

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