桐野夏生の書く小説って、読んでハズれたことなんてこれまで一度だってなかった。とにかく、出す小説出す小説、全部面白かった。
もちろん、彼女が書いたこれまですべての小説を読んできたわけじゃなく、まだ読んでいない小説もあるけれど、映画化された幾つかの作品も全部それなりに面白かったと思う。今思い出してみても、「OUT」、「魂萌え!」なんかは、その年の個人的な邦画ベストテンに迷わず入れていた。
そして本家の小説。これがまた凄い。
デビュー作の江戸川乱歩賞を受賞した「顔に降りかかる雨」。それから名作「OUT」、直木賞を受賞した「柔らかな頬」も良かったし、泉鏡花文学賞を獲った「グロテスク」も凄かった。
そしてそして、柴田錬三郎賞の「残虐記」に、映画化された作品も素晴らしかった「魂萌え!」、谷崎潤一郎賞「東京島」(この小説なんて夜通しかけて一気に読んでしまった)などなど・・・。
そんな大好きな女流作家である桐野夏生の最新小説「燕は戻ってこない」が、テレビドラマ化されて先週からNHKで放送されている。
まだ原作小説のほうは読んでいないけれど、テレビ化されたドラマは早速「第1話」と「第2話」を続けて観た。
主人公は貧困に喘ぐ29歳のリキという独身女性だ。
北海道から夢を抱いて東京へと出て来た彼女は、男に棄てられ子どもまで堕胎し、今は派遣社員として病院の受付係で働いている。それでも10数万円の給与を貰いながら、絶えずギリギリの生活を強いられていた。
そんなある日、彼女は、職場の同僚から「卵子提供」をして金を稼ごうと誘われ、アメリカの生殖医療エージェントに出向いて面談を受けることに。金を稼ぎたい、その一心からだ。
ところがそこで持ち掛けられたのは、「卵子提供」ではなく、日本ではまだ認められていない「代理出産」だった。
一方、元有名バレエダンサーである夫(稲垣吾郎)とその妻(内田有紀)は、義母に「早く孫の顔が見たい」とせがまれ続け、高額の謝礼と引き換えに二人の子を産んでくれる「代理母」を必死で探していた・・・。
ここから一気に物語は動いてゆくのだけれど、さすが、吉川英治文学賞と毎日芸術賞をW受賞した原作のテレビドラマ化作品だけのことはある。
密度が濃い、濃過ぎるくらいだ。
サクサクと主人公の過去や現在の貧困生活を描写しながら、本題である「家族」や「出産」や「女性」に関する様々な問題を、丁寧に丁寧に焙り出してゆくのである。
このドラマ、面白いです!