阪本順治は僕の好きな監督の一人。
デビュー作の「どついたるねん」も、それから「新仁義なき戦い」も「ぼくんち」も「傷だらけの天使」も「顔」も、そのどれもが素晴らしかった。
どちらかというと、無骨だけれど洗練性も加味している。そんな感じ。
そして現在売れっ子の福井晴敏の原作「亡国のイージス」を、今回映画化した。
訓練航海中のイージス船「いそかぜ」が、副艦長以下、幹部を含めたメンバーに乗っ取られる。彼は某国の工作員と共謀して、日本政府に宣戦布告をする。
一度は乗っ取られ、海に放り出された船員たちの中にあって、たった独り、先任伍長だけが再び艦内に潜入して、乗っ取り阻止に向けて奔走する。
ここからは「ダイハード」よろしく、真田広之が様々な困難を乗り切りながら暴走阻止に立ち向かう。
近年の日本映画で言えば、織田裕二の「ホワイト・アウト」辺りか。
キャスト陣も豪華。
真田広之、寺尾聡、佐藤浩市、中井貴一、吉田栄作。これまで、阪本順治の映画に出演してきたメンバーたちが勢揃い。
ポリティカル・サスペンス映画は、これまでもたくさん作られてきた。そして今回、それらの範疇を超えるような素晴らしい出来になっているのか。
阪本順治である。期待は大きく膨らんだ。
うーん。
日本を憂うような台詞が重く響く。「平和ボケ」、「守るべき国なのか?」。
しかし、それとは裏腹に、人物たちの個性が上手く浮かんでこないから、映画が流されてしまう。
悪役とて感情移入出来さえすれば、映画そのものの面白さは倍増するのである。
それにもうひとつ。
イージス艦に立て籠もり、たった独り(仲間がもう一人いるのだが)暴走阻止に立ち向かう真田広之。しかし、いくら広い艦内かもしれないけれど、敵があそこまで自由に泳がせるだろうか? 立て籠もった場所を特定しているのに、向かおうともしない。
勿論、バッタリ敵味方が遭遇して銃撃戦も何回か起こるのだが・・・。
確かに現在の平和慣れした日本に警鐘を鳴らしてはいる。
男臭さも漂っている。
まあこの手の映画、過去に素晴らしい名作がいっぱいあるからなあ。
それを超えるのは中々難しい。