2月上旬。
慶徳義塾大学体育館には、20名以上の男たちが集まっていた。
あるものは、ストレッチをし、
あるものは、コートの感覚を確認し、
あるものは、シュートを練習していた。
その中に、バッシュの紐を絞める藤真健司の姿があった。
藤真は、集まっている男の中では、小柄で細身なほうであった。
そのため、心無いものからは、冷ややかな目で見られていた。
『パン。』
結び終え、立ち上がる藤真の肩に、何者かが触れた。
『クルッ。』
そこには。
「赤木!!」
振り返る藤真の目に映ったのは、紛れもなく、湘北高校の元キャプテン赤木剛憲であった。
その声は、体育館全体に響き渡った。
『チィッ!!』
「あぁっ!!」
「うるせ!」
「空気読め!」
舌打ちをされたり、睨まれたり、藤真には、更に鋭い視線が向けられた。
本日は、慶徳義塾大学バスケ部への一般入部テスト。
そのため、参加した選手たちは、みな緊張し、いきり立ち、敵対心むき出しであった。
「赤木、どうしてここに?」
興奮を抑え、小さな声で話す藤真。
「バスケ部に入部するためだ。」
きっぱりと答えた。
冷静な藤真も、今回ばかりは、頭の中が混乱していた。
「ん!?ん??ということは・・・。」
「一般入試で合格することができた。だから、俺はバスケ部に入って、全国制覇を目指す!」
「ほっ本当か!!」
目の前で起きている現実をいまだ信じられないでいる藤真。
「つまり、俺と赤木は同じチームになるわけか!?」
藤真の声がまた大きくなった。
「あぁ?」
「何が同じチームだ。合格もしてねぇくせに!」
「チビとゴリラが!」
再び、他の選手から睨まれる藤真。
赤木も巻き添えをくらった。
「まぁ、そういうことだ。」
(俺と赤木が同じ・・・、チーム・・・。)
藤真はいつになく興奮していた。
「では、入部テストを受ける方は、身長順に整列してください。」
大学関係者と思われる男が声をかける。
23名の選手が整列する。
藤真より小さい男は、1名、赤木より大きい男は、3名いた。
「私は、慶徳義塾バスケ部の2軍コーチの中田だ。
このテストで合格したものは、バスケ部の2軍に入部できる許可が下りる。
その後、1軍対2軍の対抗戦等により、1軍に昇格することができる。無論、ここは実力の世界だ。
4年間ずっと2軍のものもいる。そのことをよく肝によく銘じておいてくれ。」
2軍入部という話を聞き、文句をいうものもいた。
だが、中田はかまわず続けた。
「2軍だからとバカにしてはいけない。昨年、このテストに合格したのは1人のみだ。一昨年は1人もいなかった。
正直、今の君たちのレベルでは、2軍でさえ、歯が立たないであろう。
そして、今年の入部生は、推薦組から十分に確保できた。つまり、君たちは余剰人員だ。
別に入部させなくてもいい存在。そのことを忘れるな。」
ざわめきだす選手たち。
彼らも高校では全国に出場するほどの強豪校に籍を置き、バスケの腕には自信があった。
それを今日初めて会った人間から、レベルが低いだの、余剰人員だのといわれたのである。
彼らのプライドはだまってはいなかった。
「それなら、2軍と試合をさせてください。勝ったら、全員合格っていうのはどうですか?」
「そうだ!」
「そうしましょう!!」
声を荒げる3名の選手。
選手を指差す中田。
「君と君と、あと君、もう帰っていいよ。」
「なっ!!」
「協調性のないもの、コーチの指示に従がえないものは、慶徳義塾には必要ない。はい、ご苦労様でした。」
3名の選手からの謝罪の言葉など全く聞かない中田。
手で退場を促した。
「・・・。」
無言で体育館を去っていく3名を藤真と赤木が見つめていた。
(中途半端なものはいらないということか。)
(協調性のないやつとバスケをすると、悩みのタネが増える・・・。ふん、上等だ。)
赤木らは桜木らを思い出しながら、苦笑いをした。
「君たちには今の実力と今後の可能性をみせてもらう。テストと思わず、バスケットを楽しんでくれ。では、これを着て、準備をしてくれ。」
中田が4種類のビブスを配る。
チームは身長で4チームに別れ、藤真と赤木は、奇跡的に同じチームになった。
「20分後、10分流し、総当り戦のテストを行う。
作戦やポジションは、君たち自身で決めてくれ。」
「はい!」
中田2軍コーチのほか、2名のアシスタントコーチと2軍キャプテン、副キャプテンが採点し、
その中から、合格者を決めるというものだった。
各チームでは簡単に自己紹介や作戦会議が行われていた。
黄色のビブスチームから、歓声が上がる。
「堀のスタメンガードだってよ!」
「堀ってあの福井のか?」
「綿貫なら、推薦もらってもおかしくなかったんじゃないか?」
言わずと知れた福井県代表堀高校、北陸の古豪と呼ばれるチームである。
更に、黒のビブスチームからも、大きな声が起こった。
「星川実業のセンター、大村だ。」
「あんた、石川の壁だろう?」
「いかにも。俺は、慶徳でバスケをするべく、北陸商大の推薦を断ってきたんだ。」
石川県代表の星川実業 選抜では、2回戦で山王工業と対戦し、大敗をしているが、
大村は、200cmを超える将来有望な大型センターであった。
「赤木!ライバルになりそうなやつがいるな?」
「ふん!俺のライバルは、もっと先にいる。藤真も気合をいれろよ。」
「あぁ。牧と戦うまでは、誰にも負けるつもりはないさ。」
まもなくして、黒チームと赤チームの試合が行われた。
続く。
慶徳義塾大学体育館には、20名以上の男たちが集まっていた。
あるものは、ストレッチをし、
あるものは、コートの感覚を確認し、
あるものは、シュートを練習していた。
その中に、バッシュの紐を絞める藤真健司の姿があった。
藤真は、集まっている男の中では、小柄で細身なほうであった。
そのため、心無いものからは、冷ややかな目で見られていた。
『パン。』
結び終え、立ち上がる藤真の肩に、何者かが触れた。
『クルッ。』
そこには。
「赤木!!」
振り返る藤真の目に映ったのは、紛れもなく、湘北高校の元キャプテン赤木剛憲であった。
その声は、体育館全体に響き渡った。
『チィッ!!』
「あぁっ!!」
「うるせ!」
「空気読め!」
舌打ちをされたり、睨まれたり、藤真には、更に鋭い視線が向けられた。
本日は、慶徳義塾大学バスケ部への一般入部テスト。
そのため、参加した選手たちは、みな緊張し、いきり立ち、敵対心むき出しであった。
「赤木、どうしてここに?」
興奮を抑え、小さな声で話す藤真。
「バスケ部に入部するためだ。」
きっぱりと答えた。
冷静な藤真も、今回ばかりは、頭の中が混乱していた。
「ん!?ん??ということは・・・。」
「一般入試で合格することができた。だから、俺はバスケ部に入って、全国制覇を目指す!」
「ほっ本当か!!」
目の前で起きている現実をいまだ信じられないでいる藤真。
「つまり、俺と赤木は同じチームになるわけか!?」
藤真の声がまた大きくなった。
「あぁ?」
「何が同じチームだ。合格もしてねぇくせに!」
「チビとゴリラが!」
再び、他の選手から睨まれる藤真。
赤木も巻き添えをくらった。
「まぁ、そういうことだ。」
(俺と赤木が同じ・・・、チーム・・・。)
藤真はいつになく興奮していた。
「では、入部テストを受ける方は、身長順に整列してください。」
大学関係者と思われる男が声をかける。
23名の選手が整列する。
藤真より小さい男は、1名、赤木より大きい男は、3名いた。
「私は、慶徳義塾バスケ部の2軍コーチの中田だ。
このテストで合格したものは、バスケ部の2軍に入部できる許可が下りる。
その後、1軍対2軍の対抗戦等により、1軍に昇格することができる。無論、ここは実力の世界だ。
4年間ずっと2軍のものもいる。そのことをよく肝によく銘じておいてくれ。」
2軍入部という話を聞き、文句をいうものもいた。
だが、中田はかまわず続けた。
「2軍だからとバカにしてはいけない。昨年、このテストに合格したのは1人のみだ。一昨年は1人もいなかった。
正直、今の君たちのレベルでは、2軍でさえ、歯が立たないであろう。
そして、今年の入部生は、推薦組から十分に確保できた。つまり、君たちは余剰人員だ。
別に入部させなくてもいい存在。そのことを忘れるな。」
ざわめきだす選手たち。
彼らも高校では全国に出場するほどの強豪校に籍を置き、バスケの腕には自信があった。
それを今日初めて会った人間から、レベルが低いだの、余剰人員だのといわれたのである。
彼らのプライドはだまってはいなかった。
「それなら、2軍と試合をさせてください。勝ったら、全員合格っていうのはどうですか?」
「そうだ!」
「そうしましょう!!」
声を荒げる3名の選手。
選手を指差す中田。
「君と君と、あと君、もう帰っていいよ。」
「なっ!!」
「協調性のないもの、コーチの指示に従がえないものは、慶徳義塾には必要ない。はい、ご苦労様でした。」
3名の選手からの謝罪の言葉など全く聞かない中田。
手で退場を促した。
「・・・。」
無言で体育館を去っていく3名を藤真と赤木が見つめていた。
(中途半端なものはいらないということか。)
(協調性のないやつとバスケをすると、悩みのタネが増える・・・。ふん、上等だ。)
赤木らは桜木らを思い出しながら、苦笑いをした。
「君たちには今の実力と今後の可能性をみせてもらう。テストと思わず、バスケットを楽しんでくれ。では、これを着て、準備をしてくれ。」
中田が4種類のビブスを配る。
チームは身長で4チームに別れ、藤真と赤木は、奇跡的に同じチームになった。
「20分後、10分流し、総当り戦のテストを行う。
作戦やポジションは、君たち自身で決めてくれ。」
「はい!」
中田2軍コーチのほか、2名のアシスタントコーチと2軍キャプテン、副キャプテンが採点し、
その中から、合格者を決めるというものだった。
各チームでは簡単に自己紹介や作戦会議が行われていた。
黄色のビブスチームから、歓声が上がる。
「堀のスタメンガードだってよ!」
「堀ってあの福井のか?」
「綿貫なら、推薦もらってもおかしくなかったんじゃないか?」
言わずと知れた福井県代表堀高校、北陸の古豪と呼ばれるチームである。
更に、黒のビブスチームからも、大きな声が起こった。
「星川実業のセンター、大村だ。」
「あんた、石川の壁だろう?」
「いかにも。俺は、慶徳でバスケをするべく、北陸商大の推薦を断ってきたんだ。」
石川県代表の星川実業 選抜では、2回戦で山王工業と対戦し、大敗をしているが、
大村は、200cmを超える将来有望な大型センターであった。
「赤木!ライバルになりそうなやつがいるな?」
「ふん!俺のライバルは、もっと先にいる。藤真も気合をいれろよ。」
「あぁ。牧と戦うまでは、誰にも負けるつもりはないさ。」
まもなくして、黒チームと赤チームの試合が行われた。
続く。
おもしろすぎ!!!
早く続きをお願いします。
藤真さん大丈夫かなー
頑張れ!!
絶賛していただきありがとうございます。
今回の慶徳義塾大学編は番外編で、大学編本編は、だいぶ先になっちゃいます。
次章は、いよいよ桜木登場の予定です。
ちなさん
悩みに悩んだ挙句、ゴリは藤真さんのもとへ・・・。これで、牧さんに勝てるかな??
でも、ちゃんと入部できるかな?
乞うご期待!!