<うそごと>はお好き?

管理人・葉山羽魚(ハヤマ ウナ)の人生は読書演劇妄想人形美酒シゴト。

万博覚え書き 3

2005-06-27 | エッセイ
またまた行って来ました。簡単ダイジェストでどうぞ。

+土産物屋のでっかいモリゾーと写真を撮る
家族が小さな子供さんを撮影してるのに乱入してみた。
てざわりサイコーモリゾー。

+インド館にてカレーを食べる。
からいんですけど!!!!
あの、W稲田界隈でいうところの「メーヤウ」でいうところの1☆(辛)。
カレースープとじゃがいものパイ包みのセット。
スープが辛かったからパイを囓ると、
「カレー味」のじゃがいもが入っていた。さすがインド。

+夢見る山(めざめの方舟)にリベンジを誓う
初心者は「スロープ」つまり二階席みたいに
取り巻いているスロープから見ましょう、
と言われたが、大きなお世話だぜ!!
絶対アリーナすべきだよ。もう一回見よう。
観客の安全と芸術表現のジレンマだよなあ・・・。
観客がヘルメットして、吊るとかダメだったのかなあ。

+キッコロゴンドラは片道600円
しかしなぜ、会場内の移動手段なのに金かかるんだろうね。
友人Hと超はしゃぎまくる。
修学旅行の中学生もかくやである。
写メールしちゃった。手ブレしてた(笑)
このゴンドラで東欧ゾーンに行けるんだよ。

+ウクライナ館で異国を味わう
ここで冷たいトマトスープ(“冷たい谷間”というらしい)
をいただく。
ウクライナ風チョコレートマロンドーナツもいただく。
おいしい。そして美人の白系のウエイトレスさん。
私は昔ウクライナの子と文通してたですよ。英語で。
8つくらい下だったのに英語使いこなしてたなあイワン君。

+スイス館はヒュッテヒュッテ
なぜか「山」と漢字で書かれている外壁。
軍隊で使われていた軍隊式懐中電灯を持って進む。
ということはさておき、2階にいたお兄さん!
スイス館はスレンダー&グッドルッキングガイばっかりだが、
メガネのお兄さん!! 素敵な格好いい人でした。好み。

+ロシア館は威信たっぷり
なぜか軍歌?だか国歌が延々流れるロシア館。
入ってすぐに、大統領ウラジミル・プーチン5割増キラキラ写真!!
な、なんなんだあれは(笑)
でも笑ったらKGB(カーゲーベーと読むのだよ)に消される!?
マンモスは意外に小さかった。
とにかくあの国歌だか軍歌だかは閉園まで延々流れてるのだった。
やはり小熊のミーシャなのか同志よ!
(この意味がわからない人は青池保子「エロイカより愛をこめて」を読もう)

帰りはIMTS(運転再開)でとろとろ正面ゲートへ。
リニモ地獄を避けるため帰る方面とは逆に一駅歩き、
ゆるゆる揺られて帰る。

次こそはアメリカ館に行きたいなっ。
それにもっと各国の料理を食さねば!!(笑)

100-71:2人目

2005-06-21 | エッセイ
☆シリアス小説100タイトル★第71話:2人目
(第1話は04年7月1日にあります)


あなたが1人目だとでも思っていたの?

終電1本前に乗って、この駅で一緒に降りるのは2人目。
この夜道を早足で手もつながずに行くのは2人目。
私の住むマンションの狭い階段を彼が先、私が後の一列になって上るのは2人目。
玄関でごめんうちクーラーないの、と宣言しておくのは2人目。
私が手探りで電気を点ける前に、リビングの段差でつまづくのは2人目。
「いってぇ……」と涙ぐむ真似をするのは2人目。
バスを使っている間、私がティーパックでお茶の用意をしてあげるのは2人目。
ヒマワリ柄のお客用バスタオルで体を拭くのは2人目。
扇風機の音の後ろ、濡れて常より黒く長くなった髪に欲望するのは2人目。
「熱いお茶? こんな熱帯夜に飲めないよ」と呆れられるのは2人目。
「冷ましておくからいいの」とよくかきまぜながら答えるのは2人目。

だって喉が渇いたのならわたしを飲めばいいでしょう? 
そう思うのも、なにもかも2人目。

あなたは2人目の男。
なにをしても、なにをされても、1人目が消えない。消せない。
どうしたらこの記憶を削除できる。
汗の味も、皮膚の感触も、声も、身体の重みまでも。 
全然違う人のはずなのに、これも、それも、全部覚えている。
私は、初めてのこの男をすでに知っている。

違う人だと思っていたけど、本当は全部あなただったんだろうか。

あなたがいなくなってから、
このベッドの上に数え切れないほど男を連れて来たけれど、
あなたたちはみんな「2人目」。
3人目、4人目、10人目になることはない。
全て、あなたから「2人目」の男。

さっきの、お茶さ、もう、冷めたか、な。
と私の耳元で途切れとぎれに発音するのは2人目。
お茶でいいのね? と尋ねて確かめるのは2人目。
生ぬるいお茶を口に含んで、飲ませてあげるのは2人目。
喉を鳴らして最後の一滴まで吸い取るのは2人目。
ふう、とため息を吐いた後に、激しく咳き込み、悶え苦しむのは2人目。

あなたは2人目の男。

2つ目の、死体。


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100-70:スローアウェイ

2005-06-17 | エッセイ
☆シリアス小説100タイトル★100-70:スローアウェイ
(第1話は04年7月1日にあります)


<前奏>
throwは投げる。awayで離れる。
ゆえにスローアウェイは、「捨てる」。

<本編、あるいは断想>
(1)
地元の方言で、「捨てる」のことを「ほかる」と言うが、
「放下る」とでも表記するのであろうか、
まさに、ごみ箱に向かって放る、
ピッチャー振りかぶって、投げました。
二次関数の放物線のヤマを描きぐんぐん伸びていきます、
入るか入るかはいるかはいるか、ああ、失速。
コチンと縁に当たってやおら椅子を立ち上がり空しさを拾いに行く、
というイメージの、独り。

(2)
くずかごは本当になんでも飲み込むので、
口紅を染(し)ませたティシュー。
食べかけて落としたバタービスケット。
ちびたエンピツ。
あまり会わない親戚のおじさんが
  いつかのお土産にくれたプラスチックのおもちゃ。
のびきったカセットテープ。
1週間前にもらった名前がわからぬ黄色の花。
こんなに投げ込んでまだまだ空いている、大きな口は。

(3)
捨てて捨てられ捨てた振り。
捨てたつもりが捨てられず。
捨てるつもりで取っておいたら捨てられて。
捨てたことも捨てた。「あ、捨てて下さいこれも一緒に。」
捨てなきゃ捨てたい捨てられる前に。「じゃあ捨てようか。」
捨てっぱなしで捨てたきり。捨てて捨てたが捨ての果て。
切捨て切上げ斬捨て斬上げ。公平・妥協の四捨五入。

<終わりに>
可燃か不燃か分別できぬ妄執あなたもわたしもただの過去の堆積もう不要。


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100-69:ニルバーナ

2005-06-16 | エッセイ
☆シリアス小説100タイトル★100-69:ニルバーナ
(第1話は04年7月1日にあります)


「ああ、ぼくもアンドロイドだったら良かったんだろう、LZ10591」
『それはなぜでしょうか、ご主人さま』
「君は、ブディストの言うところの、サトリを開いているからさ」
『サトリの概念を検索しましたが、見つかりませんでした。
 類似の言葉で言い換えて下さい』
「そうだね。君は、高次言語学習機能もついていない、
 廉価で大量生産された家事ロボットだから」
『はい、わたくしLZ10591は、掃除、洗濯、料理のできる、
 第2レベルの自立支援思考をもったプロトタイプです。
 オプションで肢体と音声は変更可能です』
「LZ10591、CMはいいんだ。
 僕は、このごくごくノーマルな、レトロともいえる君の姿が気に入ってるよ。
 サトリっていうのはね、この世の悩みが全部消えて、
 永遠に何にもわずらわされぬ、穏やかな境地になることだよ」
『類似の言葉が見つかりました。
 チリトリ……ホウキで集めたゴミをすくい取る掃除道具ですね』
「ああ、またそんな古い言葉を……いいからちょっと黙ってくれ。
 君には、悩みはないだろう。
 問題が発生したら、できる限り解決しようとするが、
 それが自分の能力を超えたものなら、考えること自体しないしね。
 外部の刺激に対してリアクションとしての感情を持つこともない。
 もともとインプットされていないのだから」
『……』
「痛覚もないし、あらゆる意味で苦痛を感じない。
 何も感じていない。それでいて、頭脳はクリアーだ。
 自分が何ができて、何ができないか。
 自分が何を知っていて、何を知らないか。
 自分が何なのか、君は明快にわかっている。
 それは、まさにサトリの定義と同じだろう?
 僕は疲れた……いろいろ感じすぎるんだよ、僕の体と心は。
 君のように、ロボットになりたいんだ。
 どう思う、LZ10591?」
『ご主人さまは、サトリが欲しいのですね』
「ああ、そうなんだよ」
『では、わたくしが、ご主人さまをサトリに連れて行って差し上げます』
「まるで、この前購入した最新のセクサロイドみたいなことを言うんだね。
 そうか、それでどうするんだい? 
 信仰を究めた高僧にも難しいことを、家事ロボットができるのかい?」
『はい、こうするのです』

LZ10591は、その愛らしく固定された笑顔で、
主人の手を、自分の両手で包み込んだ。

バチチチ……ッ!!!!
すさまじい音が一瞬。

ロボットの所有者の男は、一言も発さず、
身体を人間の可動領域最大につっぱらせ
たんぱく質の焼ける臭いを振り撒きながら、その場にくずおれた。

『ご主人さま、サトリの具合はいかがでございますか?
 では、わたくしは夕飯の支度がございますので、失礼いたします。
 本日の献立は、ホウレンソウのサラダ、サケときのこのクリーム煮、パン、
 デザートはフルーツパンチでございます』

LZ10591はいつもと全く同じ角度でお辞儀をすると、
くるりと後ろ向きになり、右足から歩き出した。

かつて子供にも扱えるとして、一般家庭に広く普及したが
<人体攻撃禁止命令がランダムに発動しなくなる>という、
基本プログラムの重篤な欠陥を持った家事ロボットだと断定され、
とうの昔に製造停止・全回収になった
LZシリーズの最後の1体は、
今、永遠に手のつけられることのない食事を作るため、
すべるような足取りで、キッチンへ向かっているところである。



nirvana:涅槃(ねはん)。煩悩のない、永遠の悟りの境地。
     苦痛からの脱却、至福。


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100-68:変換

2005-06-14 | エッセイ
☆シリアス小説100タイトル★100-68:変換
(第1話は04年7月1日にあります)


「本当かうそか、たしかめられないものごとは、ぜんぶ本当なんだ。
 誰にも決められないことが、誰かが『こうだ』と言った瞬間に、
 本当になっちゃうんだよ。本当にできるんだよ。
 僕でも、もちろん君でも」



昔、といったって、2時間前か、2日前か、あるいは200年前か。
そのくらいの昔に、彼が言っていた。
彼は、口先だけで生きている人で、
でもその口だけでなんでも手に入れることができた。
生活に必要なもの。
たとえば、お金とか、食べ物とか、家。
さらに生活にうるおいを与えるもの。
友だち。女の子。なにかと便利な伝手(ツテ)。
一瞬のスリル、かすかな感情のもつれ、
一緒にいて体温を同じにしていくという幻想も。

怪しげな賭け事で確実にこの世を渡っていく人がいるように、
彼は、怪しげな「話」を語ることで、この世に確かに存在していた。
「僕は生まれながらのぺてん師なんだ」と彼はよく言っていた。
「でも、信じる人がいたら、ぺてんは本当になるんだ」とも。
そういうときの彼の顔は、決まって幼児のように何の思惑もない笑顔なのだ。

そのころの私の世界は、とてもシンプルだった。
自分と彼。
楽しいこと(デートとか)と、大変だけどしなくてはならないこと(家事とか)。
ホントもウソも何もない。
世界は、ただそれだけのわかりやすい球体じゃないのか?

だから私はわざわざ複雑な思考をする彼に言ったことがある。
「そういうのって、ただのヘリクツなんじゃないの?」
彼は、そりゃそうだ、といった顔で私を見た。
「でも、そういう無駄な理屈のない世の中になったら、
 多分僕は生きられないから、死ぬかもね」

彼はあまりにねじれてよれてしまっているために、
遠くからはまるでまっすぐに見えた。
私は彼の言葉が本当かどうかなんてどうでもよかった。
彼のつむぐ言葉が一銭の価値もない「くず糸」でも、
それで彼が世界につながれるならばそれでいい……。
悪徳商人の売るくず糸を、私は喜んで何千メートルでも買おう。そう思っていた。


眠れなくて、月は満ち、冴え切っていた。
少しでも布にこもる熱とうっとうしさから離れていたい、生ぬるい夜だった。
「ねえ、なにか人をケムに巻くような、眉唾な話をしてよ」
「ひどいなあ、それ」
彼は全然傷ついていない口調で、つるりとしたフローリングの床で座りなおす。

「君にあの満月をあげよう」

なにそれ・・・・・・。

「まあ聞きなよ。
 きっと世界で何十万人もの男が女にこの文句を言ってるんだろうよ。
 これが<素敵な科白>として機能する時代もあったわけだしね。
 でも、それって、よく考えたらサギだろ?」

え? 急に何を?

「だって、月は元から誰のものでもないんだ
 それをジェームズ君が勝手に
 “月は僕の物だが、これからはサラちゃんに所有権を譲る”と言ったって、
 そんなの出来ないんだよ」

彼の声はとうとうと泉のように湧いている。

「でも、それは有効な契約なんだ。
 100人が、1つしかない同じ月をそれぞれの恋人に贈っても、
 それは100個の月が100人に同時に贈られたことになるからだ。
 ジェームズ君の指す月は、あの夜空に浮かぶ本当の月でありながら、
 チャールズやヘンリーの見ている月とは違う、ただ1つの月なんだよ」

うーーーん? なんかおかしいぞ。ぜったい。
でも私の頭はそれを指弾する言葉を持たない。
それに彼を論破して得意になるよりも、
彼の限りなくうそっぽい言葉の渦に巻き込まれて、
ぐるぐる酔ったような気分になって、だまされていたいのだ。

「だから、あの月を君にあげるよ」
「そう? まあ、せっかくだし、くれるんならありがたく受け取っておくよ」
「でも、ごめん。あの月、チーズケーキなんだ
「は?」
「だから、小さくてまるいチーズケーキなんだよ」

私は床をずるずると這っていって、開け放たれた窓から、月を眺めた。
後ろの彼の声が遠い。
「言ったろ、僕が言えば、月はチーズケーキになるんだよ。
 誰も手に取って食べられないんだからね」

黄色みがかったおいしそうなお月さま。そうか……。

「月くれるって言ったのに。ほら吹き野郎」
「ぺてん師と言ってくれ」
「だってチーズケーキでもない、あれ、おまんじゅうだもん。
 私がアズキ嫌いなの知ってるくせに」

笑みを押さえきれない。だめだやっぱり。
私は、いつもポーカーフェイスのサギ師には向いていないのだ。

「あぁ……、バレたか。でも惜しい、あれ、アイスクリームバニラの
「ありがと、なんて大きな真珠でしょう」
「へえ、ただのピンポン玉なんだけど」

その夜、月は、ずっと月じゃなくなった。


もうずっと、2ヶ月、2年。あるいは、20万年。
ぺてん師は、ふらりと出て行ったまま帰ってこない。
私は今日も月を別の物に変えている。
チーズケーキ、おまんじゅう、バニラアイス、真珠、ピンポン玉、……
彼の不在は、何かに変えられるだろうか。
ドクロ、聖体拝受、ろ紙、アーモンドスライス、チーズケーキ、……

彼の言葉のない静寂の真空は、変えられるにはあまりに明確すぎて。



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これぞザ・乙女小説!! (←違)