<うそごと>はお好き?

管理人・葉山羽魚(ハヤマ ウナ)の人生は読書演劇妄想人形美酒シゴト。

万博覚え書き 2

2005-05-28 | エッセイ
私、葉山羽魚は2度目の万博に行って来ました。
地元民の強みの法則「金曜日の夜=空き空き」
中・高校時代の友人3人と、レッツゴー☆
(ちなみにその翌日の今日は、開幕2番目の人手だそうです。読めねえ……)

 ~お手前がた、油断めさるな!~
金属探知ゲートで「ピーッ」
……嘘?! なんで鳴るの?! 銃とか持ってないよ? 
あ、なんだ、髪留めか。せっかくお洒落してきたのにー(泣)
お、友だちがいたよ。ってか笑われてるよ! 見られてたよ!
☆教授総回診も体験(ただし眼科。)、医学部生H。
☆万博は17回目(笑) 院でロボットを研究する「せかんど」。
☆もはや学生ではない、バイト葉山。いざっ!!

 ~おみやげは西ゲートで~
混雑する正門(北ゲート)の土産屋は非常に混んでるので、
IMTS(未来的自動走行ミニバス。遅。)に乗って、
西ゲートまで移動します。
乗りたかったから乗っただけで、フツーに歩ける距離です。
そこで、さらに
☆大学院で“難しい何か”を研究している「ひつじ」
という友人と合流する。
(「せかんど」と「ひつじ」のサイトには、私のHPから飛べますよ)

さて、土産屋でモリゾーポストカードを購入。
モリゾーは目が怖い方です。笑うと可愛い。詐欺だ。
万博始まる前は「モリゾー微妙」と思ってたけど、
なんか可愛く見えてくるからなあ・・・。
名古屋ローカル情報番組では、
この森の精霊のじいちゃんと孫を、合わせて「モリコロ」と呼びます。

この西ゲート付近に、おいしいメロンパン屋もあるのだー。
フードコート(屋台村)の3階「サンライズ」です。
抹茶メロンパンがうまい。四人とも食す。
八丁味噌ソフトクリームは今度にしましょう。

 ~気分はカエサル大帝(大嘘)~
ヨーロッパを制覇したい、という私の身勝手な要望により
グローバルコモン(外国館)6「ヨーロッパ」に再び。
イスラームな、砂漠な、そんな国が多かったです。
それにしてもヨーロッパの人ってどうしてそんなに顔ちっちゃいの!?

+トルコ
とにかくタイルと唐草模様! 繊細で緻密な細工と、トルコブルー。
あれをジグソーパズルにしたら……売れないか……(おい)

+ヨルダン
例の死海に浮いてる人を見る。(循環ろ過なのか?)
死海プールは幻影的な暗い中、青い照明で綺麗。
幻影的にするあまり、足元が暗くてこけそうになる。
そして、サンドアート!
ガラスびんの中に、色のついたきめ細かい砂を入れていき、
その色の層で模様を浮かび上がらせる……んです。
一見必見ですよ。ラクダに見えるから不思議だあ。
色も日本の色とは違って、褪せているのに鮮やか。
使っている道具もてきとーな針金とか(そう見えるんだよ)。
で、あんなに素敵なものが作れるんだ。
おみやげにどうぞ。1500円からありました。

+モロッコ
不思議な香りのする館内。入ったら、そこはもうモロッコ……
ってどこにあるのか。北アフリカの国だそうです。
モロッコは何語なのかもわからないが、彫刻に言葉は要らない。
(↑ここが文学との違いだよなー)
真ちゅう細工(彫金ていうの?)が有名なんだって。
ここでも「これでもか!」という唐草模様。細かいっ!!
手先不器用な上、せっかちな私は、即脱帽です。
彫金師の人がカンカンやってるのを見せてもらったら
綺麗にラクダと繁みが浮き出ていた。
よく見たら、それは風月堂のお菓子缶の蓋であった。
お土産にはフォークロアなじゃじゃらしたアクセサリー、
熱い紅茶もOKなグラスとか、革かばん。
全てセンスがよく、ほんと、欲しいよあれは!! 
「値引き過程が買い物の醍醐味」という国なので、ねぎってみよう今度。

+チュニジア
白亜の館内。
砂漠の中、マネキンたちが民族衣装。
「ちょ、ちょっと! ヤシの木の方を見てよ」
見てください。ちょっとびっくりします。
あんなとこにあんなものが……。
この国は「砂漠のバラ」が有名らしく、
(長年かけて砂の中の成分がバラの花のように固まった石)
いっぱい売ってるんだけども、
あれって、その辺にゴロゴロしてるのか?
地元の人にとっては見慣れたものだったりして。自然の不思議。

+クロアチア
塩の館。ここは面白い! 
新たな「演劇の可能性」を予感させる、映像と演出であった。発想の転換だ。
クロアチア館の人は、背がものすごく高く(みな190cmくらい)
黒スーツをばしっと着ており、全員サッカー選手かSPみたいである。

+ギリシャ
うーん、オリンポスなのにー。
展示が多いハコモノだったー。

+ブルガリア
そうかと思うと、ここはスペースも狭いのに、潔くて印象が良い。
ずばり「ヨーグルト」一本勝負。
歴史の説明とかの展示も一切なし。
ブルガリア国としても、それでいいみたいです(笑)
というわけで、館内は、可愛いピンク色♪
バラのヨーグルトは500円で少し高いけど、休憩にはぴったり?(笑)

 ~必勝鉢巻、誰からもらった?~
さて、フードコートに戻って夕飯。
せっかくなので、2階トルコ屋台でトルコの軽食を。
シシケバブとかパシャケバブとか。パシャってことは「太守」ケバブか?
そういえばよくW大文学部前にも売りに来てたわ、移動式ケバブワゴン。
目を合わせると、トルコな兄ちゃんに「ケバブ~」と言われるのよ……。

そこのトルコのお兄さんたちは、みんな大変愛想がよく、
「ドウゾー、今ホントにマタナイ、オオキニ(←!)」
しかもみんな「必勝」鉢巻をしている。何に勝ちたいのか!?
名物トルコ風アイス「ドンドルマ」(のびるアイス)を
長い棒ぶん回しながらよそうパフォーマンスは
頼んだ日本人の地味なおばさんを驚かしていた。
ドンドルマの歌も流れてるから、みんな覚えてねー。

♪どんどん どんど ドンドルマ~ (繰返し×∞) 

ゆるすぎ……脱力系……。

結構おなかいっぱいになる。万博値段でも1000円以内。お得。

~レアなお土産 「叫ぶモリゾーと飛び出せキッコロ」~
お土産はワゴンでも売っているのだが、
西ゲートからそう遠くないところのワゴンでは、
ワゴン限定モリコロが売っている!

モリゾーのパペット(手にはめられる人形)である。
ただのパペットなら普通の土産ショップにもあるが、
これは「鳴く」! もきゅーん。
手ざわりも抜群。リアルな質感! もじゃもじゃ!
(母に大好評。なんせ今朝、居間から聞こえる「もきゅーん」で起きた私…)

飛び出せキッコロ。キッコロが飛び出すときに、ぼよよよ~ん、と音が出るおもちゃ。
好きな人は出会えたら買おうね! ワゴンだけだよ! 
ちなみに誰とは言わないが、「ひつじ」は私たち3人の囁きに負けて
飛び出せキッコロを買ってしまい、
買った後に何かが壊れたらしく、
道すがらずーっと「ぼよよよ~ん」とやっていた。
私たちは少し遠くに行ってしまった彼女から離れて歩いた……
大丈夫、私たち、何があっても友だちだから……(笑)

8時半になったので、そろそろ帰りましょう。
「せかんど」の車でリニモを尻目に、地下鉄までショートカット。

そこでみなさん、万博に来る人だけがリニモに乗るんじゃないんですよ。
愛知県立大学の生徒は、みな、リニモに乗ります。
通勤・通学がリニモ。
「わ~なんかカッコいい」と言ってる場合ではないのです。
リニモはびっくりするくらい小さくて、1度に人が乗れません。
つまり、朝と夜は万博の客で超超混雑してるのです。
そんな中で、学校に会社に行くしかない……。
ほんとの足元では、そんな悲惨な事態もあるのでした。


また行ったら報告しますよ!
H、せかんど、ひつじ、ありがとう!!
目指すは世界=外国館全制覇
(気分はアレキサンダー大王)。

映画感想「コンスタンティン」

2005-05-26 | エッセイ
映画感想「コンスタンティン」

※私、葉山羽魚は「マトリックス」とネオ役のキアヌ・リーブスが大好きです。
(他の彼の映画は「スピード」くらいしか見たことない)
 でも愛ゆえにこの映画には意地悪くツッコミます。
 が、もちろん、映画マニアではないですし、ましてや評論家でもありません。
 素人が好き勝手に、でも責任もって語ってるだけです。
 そういう人間が書いたものであることを予めご承知下さい。
 基本的には私はこの映画が好きですよ!!
(ネタバレありです)


さて。
コンスタンティンのテーマはズバリ「禁煙」です(笑)
15のときから悪ガキで(嘘)
1日30本のニコチン中毒(これは本当)コンスタンティンが
いかにして煙草を止められたかというお話です。
悪魔退治とかは全部、おまけです。

映画には、その監督の「フェチ」がしばしば表れます。
マトリックス。これはみなさん、ご承知の通り、
「グラサン・フェチ」です。
あれはサングラスのプレゼン映画だと思うと
さらに素敵な映画になります。

この映画のフェチは「煙草」です。
私は最初、コンスタンティン君が煙草を吸ってるのを見て
「も、もしや?」
と思っていましたら、
悪魔退治をする前に火の点いたままタンスの上に置いといて、
退治した後、またそれを吸ってるではありませんか。
ぞくぞくしました。
煙草の映画です!

それからも、コンスタンティン君は、
悪魔にやられながら、肺ガンで血を吐きながら、
自殺を試みながら、煙草を吸い続けます。

結局、死ぬまで煙草吸ってたわけですが、
なんと彼は悪魔によって拷問のような苦しみの後
無理矢理生き返らされます!
その後で、彼はエンディングで
常であれば煙草を取り出し、
ジッポーで火を点けるであろうシーンで
おもむろにガムらしいものを口に入れるのです!!!!
あれはやっぱりニコレットなのか?!(笑)
「止めたんだ煙草!!!」
なんか、ある意味でのエンディングです。
ガブリエル(天使みたいな顔だったマジ)の言うとおり
「あなた変わったわね! いい感じよ!」です。
ってゆうか止めるなよ煙草!

さて問題はここです。 

コンスタンティン君は
悪魔に腹の中に手を突っ込まれ、
激痛に身をよじって生き返らされて
(しかも、もうすぐ天国行けそうだったのに・笑)
そのときから煙草を止めたわけです。
つまり、そのよーに、
恐ろしいというか気持ち悪い硫黄臭の魔物と戦い、
派手に傷を負い、悪魔に生き返らされるくらい
すごい衝撃を受けないと、
禁煙する気なんか起こらないってことです
よ。
ってゆうか、普通の人には無理、っていうメッセージですね。

筒井康隆の「最後の喫煙者」は
喫煙レジスタンスとして、地下に潜ってましたが、
時代はそっちに近づいてるような。
マナーは守り、子供の誤飲に気をつけ、副流煙を出さないように。
ってことは、一生1人で生きていくか、
喫煙コミュニティで生きるしかないわけだよな。

そういえば、私は自分はノンスモーカーの癖して、
煙草の風景を偏愛しているのです。
こんなに、主人公がやさぐれながら煙草を吸いまくるのは
「不夜城」の金城武以来です。至福。

コンスタンティン君のスモーキングスタンスは
「人生なんて煙草でも吸わなきゃやってらんないぜ」です。

そう、「マトリックス」主人公ネオとは違い、
このジョン・コンスタンティンは、
めちゃめちゃ人生やさぐれ屋なのです。
その癖に、ちゃんとお仕事はするのが
いいところです。
天国に行きたいからだけど。(なんかこう書くとすごい理由)

ちなみにこの映画の良さは
「コンスタンティン」という名前の選択が全てだと思います。
すごい響きでしょう? 
コンスタンティン。東ローマ帝国か。

これはよく出来た映画ではないと思います。
ユーモアは空回りしてるし、
悪魔退治にしてはちょっと軽すぎだし、
コンスタンティンが銃で悪魔を倒すCGも
「もうそれだけじゃ驚かないよ!」という感じだし、
ホラーにしては気味悪さはハンパだし。
「ブレイド」(意図してないのにギャグ映画)もだが、
「インタビュー・ウィズ・バンパイア」くらい
ちゃんとがっつりやってくれよ。
後、びみょーに続編がありそーな感じで終わるの止めて(笑)

とはいえ、ファンですので
キアヌ君のやさぐれにはほれぼれしましたし、
「女のためではない」という距離感も非常によろしいです。
ただ、彼は以後もこの路線で行ってしまうのか気になります。
ぜひ癖のある悪役をやっていただきたいものです。
美しいんだから。40歳なんて詐欺だぜ。
彼の隣家はディカプリオの家(トリビア)。


100-66:AST

2005-05-23 | エッセイ
☆シリアス小説100タイトル★100-66:AST
(第1話は04年7月1日にあります)

●15月11日(空曜日) AST(大陸標準時)35:82
時空が混乱しきって多大な被害が出ていたけど、
ようやくASTは復活したみたいですね。
やっぱりこの時間表記は落ち着くなあ。
24時間制は本当に不評で、1年で終わったけど
わたしは正解だと思うよ。
ありえないもん。人体構造とか生理学を全部無視してたな。
次の更新は、いつになるでしょう。。。
とりあえず早朝だし(なぜまだ起きてる?)、ねむいよー(笑)

■15月24日(花曜日) AST 06:39
怖かった! 電離嵐に初めて遭遇in新宿。
いや、私のメランジェは無事だったんだけど、
友だちのV子のダマンドは、完全に壊れてた。悲惨。
メランジェはところどころ縫い付けたりしてるけど、まだ元気。
液晶もきれいに映るよ。やっぱパウダーはこまめに変えるべしっ。
でもエンゲル指数落ちてるから1度見てもらおう、ドトールで。
うわ、今見たらローレル評値もやばい……修理かな。
これが無いと、女の子は困るんだ。
ま、最新の機種みたいに、キラキラアタックとか出なくてもいいけど。
あれ、危なくないの? SPD500ってギリギリじゃん? 死ぬよ、男が。

▼15月3√日(空曜日) AST 07:138
うう、仕事が片付かない。なのにどうしてここにいる? えへ。
今日って国家試験だね。がんばれ、みんないい飴売りになれよ。
わー、7じ120ぷん! もうゼロ時間突破してる!
やだなあ。また蜜豆だわー、カライの嫌いー。
そうそう、さっきクローゼットが時空混乱してさ(笑)
クマが一瞬音階になって、結局アンドロイドで終わった。
……なんならスプーンがよかったな。
でもなかなか見られないんだよね。ま、いいわ。
そうそう、明日は薔薇の葉を食べるといいんだよ。
絶対古本屋の陰謀だね。百合だろう、普通。
よし、この辺にしとこう。でもすぐ逃避しにくるかも(笑) しないしない。

◆15月∞日(鳥曜日) AST 29:55
今日はデートデート。逢引。もちろん首に綱つけて。
最近の綱って可愛いよね。とくにRタイプ。
出始めはほんとダサかったんだ。むしろ縄だったよ……
って歳バレるからやめておきますが!!
時間て刻々と殖えるね。もう13:17だって。利息いらんー。
で、テーマパークに行ったんだけど、
そこがまた「いかにも」なところで、彼の方が泡食ってたな。
まあそこが可愛いということで。140歳だし。年下だし。はは。
回転木馬でやってみたんだけど、あれはさすがに……早過ぎ。
計器みたら音速超えてたよ。
実際、羽がちらほら舞ってた……誰のだろう。気の毒~。
観覧車おすすめ。結構サクサクしてたよ。ごちそうさまです。


じゃあまた。


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++++++++++++++++++++
AST(Atlantic Standard Time)は本当。(作者)

100-65:午前8時

2005-05-19 | エッセイ
☆シリアス小説100タイトル★100-65:午前8時
(第1話は04年7月1日にあります)


朝、7時45分。
自転車が見えてくる。
青い自転車を必死に立ちこぎするセーラー服が見える。
自転車は家の門の前で急ブレーキ、乗り手の女の子は肩で息をしている。
息子はそれまでもじもじしていたのが一転、
過度に落ち着いた表情で、ゆっくり門を開けて女の子の方へ向かう。
「先輩、おはようございます」
「おはよう」
「今日もお弁当作りましたよ」
「いつもありがとう。お昼が楽しみだね。さ、行こう!」
と言って、「先輩」と呼ばれた女の子は伸びてきた髪を長い耳に掛け、
手提げに2人分の弁当を入れた息子を乗せて、軽々と坂道を駆け上る。
ピンと斜め上に立った女の子の桃白の耳がなびいている、風に。

朝、7時51分。
地下鉄の中は非常に混みあっている。
もう絶対に人は乗せまいという雰囲気が濃厚、
出口付近までぎりぎりの人びと。
娘はこの電車が学校に間に合う最後の電車だと知っている。
だから、むりやりに乗り込む。人の壁に身を押し込む。
ドアが閉まる。無言で運ばれる乗客たち。
娘の隣には背の高いオオツゴモリがいる。同じ電車の同じ位置。
平日の朝、3駅間だけ一緒に輸送される1人とひとり。
オオツゴモリは目を閉じて音漏れしないイヤホンで何かを聴いている。
娘はオオツゴモリの方を見ずに彼の手を握りしめる。強く強く。
オオツゴモリは顔色一つ変えずに、ひんやりして濡れた手。

朝、7時58分。
車の中はもやもやとしたハッカ水でいっぱいで、
どうせ道には灯っていない信号がぼんやりと突っ立っているだけだから、
父親は息の泡をボゴボゴと吐き出しながら
大声で歌え、フォルティッシモ。

朝、8時。
家族の布団と洗濯物を干し、朝食の片付け、ゴミ出し。
主婦の仕事はまだまだ続く。次は何? 
次は不倫の時間。
朝のワイドショウが13和音のテーマ曲と共に始まったら、
テレビの液晶に腕を突っ込み、キャスターを引きずり出し、
彼が食卓の上で正座して喋り散らす言葉の包帯は、
安い香水の匂いがする。つつまれて。
のがれられない。のがれたくない。
長く生ぬるいエクスタシー。


平和な家族の平和な朝。
いつもの1日が始まって、誰にもそれを止められない。


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100-64:涙なんて……

2005-05-13 | エッセイ
☆シリアス小説100タイトル★100-64:涙なんて忘れてしまった
(第1話は04年7月1日にあります)

かわいそうに、どうしてこんな風になってしまったのかしら。
いつものようにバタバタともしないし。
だいじょうぶ? どこか悪いの? 
お水も飲んでいないのね。
新しい餌をあげるわね。
ほうら、お前の好きな葉っぱとお前の好きなパンのかけらよ、
いつも喜んで食べるじゃない、私の手から。
ね、お食べなさい。

ああ、声もこのところ弱々しくて、心配はしていたの。
やっぱり狭いところに閉じ込めては置けないのね。
野の鳥を籠に入れたら元気をなくすと言うもの、お前だって同じよね。
鳴き声もこのところ弱々しくて、心配はしていたの。
ねえ、聞いてるの?  
ちょっと私に声を聞かせて、私を安心させて。
……仕方ないわね、やっぱり私の言葉はわからないかしら。

お医者に連れて行こうか。
それにしては、ぐったりしていない。
私の手に爪を立てる、常になく強い力で。
閉じていることが多い目が、今日はらんらんと光っている。
もしかして、もしかして、お前……。

鳴いてみて。いいから鳴いて。今すぐに。
鳴きなさいよ。鳴きなさいったら。
いつものように、聞き苦しく鳴いたらどう。
無駄よ、そんな抵抗はお止めなさい。
お前がどうなろうとどうしようと、絶対にここからは出さない。
諦めなさい、もう自由に空を飛び回ることは許されない。
だってお前は私のものだもの。
私の言葉が聞こえないの、さあ。
そんな目をしたって無駄よ。無意味よ。
鳴きなさい。
啼きなさい。
泣きなさい。
痛いでしょう、苦しいでしょう、屈辱を感じないはずがない。
泣き方を忘れたなんて、絶対に言わせないわ。
……ほら……!

ああ、やっと溢れてきた流れてきた。
私が、ずい分昔にどこかでなくしてしまったもの。
とても綺麗で熱くて塩辛いあなたの涙。
最後の最期の一滴まで、私のものよ。


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「……ほら……!」の間に何をしたのか非常に気になる所です。ではまた。